ブラジル研究チーム、極地の急速な氷融解に警鐘
2026年 03月 4日

南極観測計画「プロアンタール(Proantar)」の未公開データを基に作成されたブラジルの研究「融解する惑星」の報告書は、極地の氷河と氷床の融解が加速していると警告している。
1976年以降の融解量は9,179ギガトン(Gt)に達し、その98%が1990年以降に液体の状態で海洋へ流入した。さらに41%は2015〜2024年のわずか10年弱で発生しており、沿岸都市への影響が深刻化する恐れがある。
サンパウロ連邦大学(Unifesp)の生物学者で、「プロアンタール」の科学コミュニケーションプロジェクト「コンアンタール(ComAntar)」に参加するホナウド・クリストフォレッティ教授は、3月2日(月)に「アジェンシア・ブラジル」の取材に応じ、極端な豪雨、猛暑、森林火災の増加、そして急速な氷融解は、いずれも地球温暖化の“症状”だと指摘した。
クリストフォレッティ教授は、南極から電話で取材に応じ、社会全体がこれらの現象のつながりを理解する必要があると強調した。
1ギガトンは1兆キログラムに相当し、教授によると、これまでに融解した総量は、現在の世界人口の質量の約1万8千倍に匹敵する。
2月26日に公表された研究は、1976年以降の氷河の累積損失が約9,000立方キロメートル(km³)に達すると説明している。これは、アマゾン川が大西洋に流し込む水量の約470日分に相当する。
融解した氷の大部分は南極とグリーンランドから失われており、2002年以降の損失量は8,000ギガトンに達する。
これは、わずか20年余りで極地の氷床が失った量が、世界中の氷河が過去50年近くで失った量に匹敵することを意味し、融解のペースがさらに加速していることを示している。
「氷河は水へと姿を変えています。そしてその水は海面を上昇させる。結果として海は陸地の一部を“取り戻そう”とすることになる。これは連続したプロセスです」(クリストフォレッティ教授)
「融解する惑星」は、世界氷河監視サービス(WGMS)の統合データと、「プロアンタール」の研究プロジェクト「Carbmet」の記録を基に作成されている。
クリストフォレッティ教授は、氷河融解の加速は近年の記録的な高温と密接に関係していると指摘する。2023年、2024年、2025年は観測史上最も暑い年の一つとして並んでおり、極地の氷の損失をさらに押し上げている。
「これが現実に起きていることを認識し、私たちの都市を適応させる必要があります。海岸線を守り、沿岸侵食に備え、陸地の一部が海面下に沈むことを理解しなければなりません」(クリストフォレッティ教授)
氷河の融解は海面上昇だけでなく、海水の塩分濃度を下げるという別の問題も引き起こす。氷河の水は真水であるため海水をさらに希釈し、結果として海流を弱めることになる。
同氏は、南極から熱帯へ冷たい海水を運ぶ海流が弱まることで、地球規模の気候パターンに影響が及び、気温、降水、極端現象の発生頻度にも波及すると説明する。
地理的には遠く離れていても、極地は地球の気候調整において中心的な役割を果たしている。南極の海洋循環が変化すると、深層水の形成が変わり、地球全体の熱輸送に影響が出る。
「これらの変化は南大西洋にも波及し、ブラジルの降雨パターン、寒冷前線、極端気象に影響を与える可能性があります」(クリストフォレッティ教授)
教授は、この深刻な状況を緩和するためには教育が不可欠だと強調する。連邦政府が進める「カリキュラム・アズウ」構想を例に挙げ、海洋教育を学校教育に組み込む取り組みが重要だと指摘した。
「私たちは“海洋文化”と呼んでいますが、これは海そのものの話ではなく、70%が海で構成される地球という惑星を理解することに関わるものです」(クリストフォレッティ教授)
教授は、教育を通じて人々の行動が変わるとも指摘した。
「何が起きているのかを知り、このプロセスを理解し、それが自分たちの生活とどう関わっているのかを認識することが必要です」(クリストフォレッティ教授)
同氏はまた、2025年にベレン(パラー州)で開催された第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)で合意された取り組みを確実に履行し、温室効果ガスを排出する燃料を代替するためのエネルギー転換を進めることが不可欠だと強調した。
これは地球温暖化の進行を抑えるために欠かせない。ただし、エネルギー転換が進むまでの間にも、より即時的な対策として沿岸都市の適応策を講じる必要があると指摘する。COP30の期間中、科学コミュニケーションプロジェクト「コンアンタール」は、災害の増加が寒冷前線やサイクロンと関連していることを示す文書を発表した。研究チームによると、過去30年間で、寒冷前線やサイクロンに起因する沿岸部の災害発生頻度は19倍に増加している。
ブラジル南極観測計画「プロアンタール」は、ブラジル海軍、科学技術・イノベーション省(MCTI)、外務省(MRE)が主導する国家プロジェクトで、44年間途切れることなく継続しているブラジルでも最も長寿の科学計画の一つである。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




