ブラジル総選挙、宗教と政治の“距離”が鮮明に

2026年 10月 1日

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ブラジルでは2010年に、11月30日が「福音派の日」に制定された。写真は2024年にブラジリアで行われた「福音派の日」記念行事(写真:Joédson Alves/Agência Brasil)

「投票は宗教ではなく、市民が行うべきものだ」。

リオデジャネイロ州バイシャーダ・フルミネンシ地域のノヴァ・イグアスーにあるバプテスト教会で活動するルーカス・オリヴェイラ牧師(30)は「アジェンシア・ブラジル」の取材にこう語った。

この言葉は、先週公表された宗教研究所(Iser)と世論調査会社Quaestによる 全国調査「ブラジルにおける宗教と公共生活」が明らかにした、この国が抱える矛盾の一つを端的に示している。

福音派やカトリックを含むキリスト教徒は、2026年選挙でも候補者による“票の争奪戦”の中心にあるが、キリスト教徒の大多数は、教会が選挙キャンペーンの場となることや、宗教指導者が投票先を指示することを拒否している。

調査によると、回答者の83%が牧師や司祭による投票指示に反対し、82%が礼拝やミサでの政治議論を拒否、90%が宗教施設内での選挙キャンペーンに反対している。

しかし、この調査結果は、宗教が政治から離れていることを意味しない。

Iser の研究者リヴィア・ヘイスは、現在における宗教の選挙への影響は、「直接的な指示を受けて票が動く」のではなく、信者の価値観やアイデンティティ、帰属意識を形づくることで、結果として投票行動に影響を与えているという。

「票に対する“宗教的媒介”と呼ぶ方が正確で、票の“直接的な投票誘導”ではないのです」(リヴィア・ヘイス氏)

ヘイス氏によると、1990年代以降の議会選挙で広く見られるようになり、2018年以降の大統領選でさらに強まった「宗教空間の政治利用」は、コミュニティ内部に深刻な分断を生んだ結果、信者は宗教指導者の政治的指示に従うことが難しくなり、自分で政治的な意見を持つしかないと受け止めるようになった」という。

「選挙戦で宗教指導者が強く存在感を示すことは、このデータと矛盾しません。指導者たちは、礼拝堂の外――メディア、SNS、議会――で活動しているからです。また、投票指示が行われているのは一部の教派に集中している現象です。ユニバーサル、クアドラングラル、アセンブレイア・ジ・デウスなどです。調査が示すのは、特定指導者の公的な影響力と、信者が宗教空間で正当と考える行為との“距離”なのです」と分析する。

近年のこうした現象を観察してきたというルーカス牧師は、選挙言説が宗教コミュニティに与えた「傷」と内部の分断について言及した。

「2018年に、熱心にある候補者を支持して政治キャンペーンを行っていた牧師を私は知っている。その牧師は今ではその話題に触れたくもなく、当時政治キャンペーンをしたことを忘れたいと思っている。なぜなら、その結果、彼の教会は多くの信者を失い、その数は戻らなかったからだ。私は、そんなふうに、政治によって傷ついた人々を多く受け入れ、対話してきた。だから今、政治の話題が出ると、教会では政治によって傷ついた信者の痛みが表面化し、
“傷ついた人々の場”のようになってしまう」

<宗教空間の政治化への反発>

ナタウ(リオグランジドノルチ州)にあるバプチスト・ペレグリーナ教会のモイゼス・ブランコ牧師(46)は、宗教空間の政治化に対する福音派内部の反応を指摘する。彼は全国の宗教者が参加する「法治国家のための福音派の会」に所属し、宗教施設の政治利用に懸念を示す立場だ。

「この意識(政治的自立性の意識)は、多くのプロテスタント、福音派の起源に根ざしている」と述べる。ブランコは、プロテスタントの伝統的な「良心の自由」の理念、そして後に明確に発展した「政教分離」の思想に結びつけて説明する。

「それは絶対主義との闘いだった。国家と王権、そして国家の反映としての宗教が一体化することへの抵抗だった」と語り、現在一部の福音派が公共空間に宗教的アジェンダを押し付けようとしている状況は、この歴史的遺産に反すると指摘した。

宗教研究所(Iser)と世論調査会社Quaestの調査は、今年1月と2月にブラジル412市で実施された1万5,000件の対面インタビューに基づくもので、27の州都すべてを含む。誤差は1%で、現代ブラジル社会において、信仰と宗教的帰属の変化が道徳的価値観や政治とどのように絡み合っているかを示す、最も包括的で詳細な調査となっている。

主な大規模調査によると、福音派は多様な集団であり、現在ブラジル人口の29%を占める。この大きな社会集団の内部では、10人中7人(70%)がペンテコステ派で、プロテスタント(17%)や「教会に属さない福音派」(10%)も一定の割合を占める。

アセンブレイア・ジ・デウス(ペンテコステ派)は依然として国内最大の教派で、福音派信者の32%を占める。続いて、数千に及ぶ小規模・中規模教派に属すると答えた信者が28%。教会に属さない福音派とバプテスト(プロテスタント)はそれぞれ10%。コングレガソン・クリスタ(ペンテコステ派)7%、ユニバーサル(ネオペンテコステ派)5%、クアドラングラル(ペンテコステ派)4%が続く。

一方、カトリックは人口の50%を占めるが、調査では「実践者」(31%)と「非実践者」(19%)を区別している。カトリック実践者は、週次の宗教参加や祈りの習慣が福音派と同程度である。また、カトリックの宗教実践が宗教系エンターテインメントや新しい技術の消費に適応していることも示されている。

<信仰のデジタル空間>

調査では、信者が宗教施設の政治化を拒否する一方で、宗教とその価値観は教会外のSNSやグループ、信頼関係のネットワークにおいて存在感を保ち、デジタル空間でキリスト教徒の政治行動に影響を与えていることが示された。

例えば、回答者の66%が WhatsApp を宗教コミュニティやオンライン宗教グループの場として利用していると答えた。

「SNSや WhatsApp によって、宗教は説教壇を通らずに政治に入り込みます。政治的メッセージは、教会グループ、宗教系インフルエンサー、家族が共有する動画を通じて届く。礼拝での正式な投票指示ではなく、信頼関係に基づくデジタル空間で宗教的媒介が行われているのです」(リヴィア・ヘイス氏)

調査によると、カトリックではジウソン修道士など、メディアで活動する聖職者の影響力が強い。一方、福音派ではデジタル上の指導者が多数に分散しており、デイヴィ・レオナルド監督が先頭に立ち、宗教的影響力を持つ政治家やインフルエンサーも含まれる。政治情報の入手手段として、福音派は WhatsApp を、カトリックはテレビを多く利用している。

宗教は文化消費にも広がっている。73%が聖書や聖句を人生の教えの源とし、67%がゴスペル音楽を聴き、59%が宗教映画やシリーズを視聴すると答えた。こうしたコンテンツは、非キリスト教徒や無宗教の人々にも届いている。

宗教が自動的に投票を決定するわけではないが、価値観・アイデンティティ・帰属ネットワークを通じて投票形成に関与していると調査は示す。信者は宗教指導者の選挙指示を避ける、あるいは拒否する傾向があるが、階級・人種・性別・地域・学歴などと組み合わさった宗教的レパートリーをもとに政治的立場を形成している。

例えば、白人カトリックでは支持が拮抗する一方、黒人カトリック(黒人・褐色人種)では左派候補の優位がより顕著だという。福音派で初等教育未修了の層では、左派候補への支持が右派候補に近づく。

「宗教が意見に影響するのは、性的多様性の受容、国家がキリスト教的価値を守るべきだという考え、公立校でのキリスト教的宗教教育など、道徳的テーマにおいてです。しかし公共政策への影響は大きくありません。ワクチン接種、性的虐待防止のための性教育、ホームスクーリングの拒否、社会政策への支持は、宗教を問わず高い一致があります」(リヴィア・ヘイス氏)

保守派を自認する54%のうち、75%がボウサ・ファミリア政策を支持し、66%が富裕層への課税に賛成している。調査は投票の決定要因を直接測定していないため、道徳的争点が優先されていると断定することはできない。

調査はまた、福音派のアイデンティティと保守的立場の自動的結びつきを揺るがすデータも示す。福音派の79%が学校での性教育を支持し、80%が避妊方法に賛成、約90%がホームスクーリングに反対。中絶では、賛成47%、反対45%と分かれ、宗教だけでなく所得や学歴によっても差が出る。

「私は保守的だと言われることも、進歩的だと言われることもある。でも今の私は“クリスチャン”として自分を認識している。保守と進歩は同じコインの両面にすぎない」(ルーカス牧師)

ヘイスは、道徳的争点はアイデンティティや帰属意識の指標として機能し、公共の議論を動員するが、社会生活の具体的テーマではより非極端的な立場が共存していると指摘する。

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)