トランプ政権によるブラジルへの50%関税の声明、クーデター未遂容疑で起訴されているボウソナーロ前大統領を擁護

2025年 07月 31日

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写真は7月25日、サンパウロ市。ジャイール・ボウソナーロ氏とドナルド・トランプ氏に扮した人物が、サンパウロ大学ロースクールで、ブラジルの主権を守ることを訴えるデモに参加した(写真/Paulo Pinto/Agência Brasil)

アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領は、今週水曜日(7月30日)に大統領令に署名し、ブラジルを米国の国家安全保障に対する「異例かつ重大な脅威」と位置づけた。

この分類は、キューバ、ベネズエラ、イランなど、ワシントンに敵対的と見なされている国々に対して採用されてきたものと類似している。

「ドナルド・J・トランプ大統領は、ブラジルに対して追加関税40%を課す大統領令に署名し、合計関税率を50%に引き上げた。これは、ブラジル政府の最近の政策、慣行、行動が、米国の国家安全保障、外交政策、経済に対して異例かつ重大な脅威を構成していることへの対応である」とホワイトハウスの声明は述べている。

大統領令では、「ブラジル政府によるジャイール・ボウソナーロ元大統領および数千人の支持者に対する迫害、脅迫、嫌がらせ、検閲、そして政治的動機による訴追は、深刻な人権侵害であり、ブラジルにおける法の支配を損なうものである」としている。

アメリカ合衆国政府は、「ブラジルでクーデター未遂を主導した」として起訴されているジャイール・ボウソナーロ前大統領が主張する「政治的迫害を受けている」という立場に立った見解を繰り返している。

(連邦最高裁判所の)起訴内容によると、ボウソナーロ氏は2022年10月の大統領選挙でルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領に敗れた際、この選挙結果の無効化を図るため、軍の司令官たちに圧力をかけたとされている。

「国家的緊急事態への対応」という題名のもと、ホワイトハウスの声明は、1977年の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき、ブラジル政府を米国に対する脅威と公式に認定した。

ホワイトハウスは、ブラジル政府の政策と行動が、米国企業、市民の表現の自由、外交政策、そして米国経済に悪影響を及ぼしていると主張している。

トランプ氏は、ブラジルに課された関税は、ブラジル政府による「軽率な行動」に対するためのものであるとしている。

「トランプ大統領は、外国からの脅威に対して、米国の国家安全保障、外交政策、経済を守っている。また、自身の選挙公約に沿って、力による平和の達成を目指し、米国の外交政策がその価値観、主権、安全保障を反映するようにするための措置も講じている」と、同声明は締めくくっている。

ホワイトハウスの声明では、トランプ政権は改めて「ブラジル政府がデジタルプラットフォームでの活動を制限している」と非難している。

「最近、ブラジル政府の関係者らは、アメリカ企業に対して、政治的言論の検閲、プラットフォームからのユーザー排除、アメリカ人ユーザーの機微なデータの提供、そしてコンテンツのモデレーション方針の変更を強要するために、専制的かつ恣意的な前例のない措置を講じた」と声明は述べている。

<SNSを巡る問題>

ブラジル連邦最高裁判所(STF)はこれまでに、トランプ氏に関連する複数のソーシャルメディアを停止している。

2025年2月、STFのアレシャンドリ・ジ・モラエス判事は、トランプ・メディア&テクノロジー・グループ(TMTG)が運営するSNS「ランブル」を停止するよう命じた。この企業は「トゥルース・ソーシャル」も所有している。

この停止措置は、同社がブラジル国内に法的代理人を置いていなかったことが、国内法の要件に違反していたために実施された。

さらに、2024年8月には、モラエス判事は米国に拠点を置くSNS「X(旧Twitter)」を停止。その理由は、裁判所の命令に従わず、かつブラジル国内に法的代理人を設置していなかったことによる。

<民主主義とクーデター>

「アジェンシア・ブラジル」の取材に対し専門家たちは、ブラジルおよび米国の極右勢力が、ブラジルにおける司法手続きの実態を歪めて伝え、同国が『検閲と迫害の空気に包まれている』と主張することで、クーデター未遂の容疑者らを擁護しようとしていると警鐘を鳴らしている。

(米国ワシントンD.C.を拠点に、ブラジルに関する研究と、民主主義、人権、自由、そしてブラジルの持続可能な社会経済的・環境的発展を促進し、擁護することに尽力する市民社会や機関の役割を強化する活動を支援することを専門とするネットワークである)ワシントン・ブラジル・オフィス(WBO)の民主主義プログラムに所属するペドロ・ケルソン氏は以下のように述べた。

「この戦略は、ブラジルの民主法治国家に対する攻撃に関する責任追及の調査を貶めることを目的としており、ブラジルの現実について、不完全かつ表面的な情報を用いている」(ペドロ・ケルソン氏)

ペルナンブッコ州立大学(UPE)のフラヴィア・サンチアーゴ憲法学教授は、ブラジルとプラットフォームXとの対立が深まっていた当時、「世界のいかなる民主主義国家においても、無制限の表現の自由など存在しない」と強調した。

「ブラジル国内で運営している以上、そのプラットフォームは同国の法律および司法判断に従う義務があります。すべての民主主義国家は、それぞれに固有の制約を定めています。ブラジルの民主主義にも制約があり、そのひとつは、民主的制度そのものを疑問視しないことです。これは、1988年憲法に基づく私たちの民主主義の理念の一部です」と彼女は説明した。

モラエス判事によって停止された多数のアカウントは、法の支配に基づく民主国家を暴力的に機能させないようにする犯罪を調査するための捜査に関係している。この犯罪は、2021年制定の法律第14.197号に明記されている。

「ブラジルにおいて『表現の自由』は、個人の名誉を守るための法的利益や、公共の安全、選挙の公正といった集団的利益を保護するために、制限を受けることがあります。さらに、ブラジルの司法機関は、SNS上のアカウントや投稿のブロックを命じる法的根拠と司法の独立性を有しています」とワシントン・ブラジル・オフィス(WBO)のファビオ・ジ・サー・イ・シウヴァ准研究員は述べた。

専門家によると、クーデターや小児性愛、児童の性的搾取を奨励するなど、犯罪を犯すために使用されるプロフィールや投稿は、ブラジルの法律に基づいて削除される可能性があるという。

例えば、アメリカ合衆国では、民族的優越性を主張するナチ党を設立することも可能となっている。対してブラジルでは、人種差別もナチズムのイデオロギーを擁護することも、いずれも犯罪とされている。

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)