マステール銀行元オーナーの“実行部隊”、インターポールやFBIの情報にまでアクセスか
2026年 09月 13日
【リオデジャネイロ 9月11日】 旧マステール銀行の元オーナーである銀行家ダニエウ・ヴォルカーロに連なるグループは、ブラジル連邦検察庁(MPF)による同氏への捜査情報、連邦警察(PF)職員専用の内部アクセスシステムのみならず、196か国が加盟する国際刑事警察機構(インターポール)の情報にまでアクセスしていたことが判明した。
この事実は、ブラジル連邦警察(PF)が作成し、今年2月27日付で連邦最高裁判所(STF)のアンドレ・メンドンサ判事に送付した報告書に記されている。同判事は、マステール銀行とヴォルカーロをめぐる巨額詐欺を捜査する「コンプライアンス・ゼロ作戦」の担当判事である。
捜査の非公開は、STFのエドソン・ファキン長官の要請を受けて解除された。
連邦警察は、ヴォルカーロが維持していたとされる「ア・トゥルマ」と呼ばれるグループを指摘している。これは、監視・威圧・私的強制を行うための非公式な私兵組織であったとされる。その構成員の一人が、文書内で「フェリッピ・モウロン」「シカーリオ(殺し屋)」と記されているルイス・フィリッピ・マシャード・ジ・モラエス・モウロンである。
<不正アクセス>
メンドンサ判事に提出された文書によると、ヴォルカーロは「ア・トゥルマ」を維持するために月額100万レアルを支払っていた。
捜査当局は、シカーリオが「連邦検察庁、連邦警察、文民警察、中央銀行で進行中の秘密手続きに対し、反復的かつ不正なアクセス」を行うために雇われていたと指摘する。
164ページに及ぶ文書には、関係者や公務員らのWhatsAppでの会話のスクリーンショットが多数含まれており、連邦警察は「第三者の職務用ログインを使用することで」不正アクセスが「行われていた」と説明している。
この非公式組織は、内部文書の不正抽出や、各機関の内部システムへの無許可の照会にも関与していた。
連邦警察は「文書の内容は、秘密保護された情報が不正に取得され、犯罪組織の防御のために利用されていたことを明確に示している」と強調している。
報告書には、例えば2024年2月15日、ヴォルカーロがシカーリオに対し、連邦警察内部の特定の捜査について問い合わせるメッセージを転送した事例が記録されている。
<ヴォルカーロへの「特別な配慮」の証拠>
40分後、フェリッピ・モウロンは、連邦警察の退職警察官マリルソン・ホゼーノ・ダ・シウヴァによる音声メッセージを返信した。録音の中でマリルソンは、「すでに“部隊”と連絡を取り、ダニエウ・ヴォルカーロの要請には特別な注意を払う」と述べていた。
報告書はさらに、マリルソンが「連邦検察庁のシステムに不正アクセスしていた」と付記している。マステール銀行の捜査「コンプライアンス・ゼロ作戦」は、同検察庁の要請により2024年初頭に開始された。
マリルソンは2026年3月4日、作戦第3段階においてベロオリゾンチ市(ミナスジェライス州)で逮捕された。
メンドンサ判事に送付された連邦警察の文書によると、「このような重大な不正アクセス」を受け、連邦警察は内部監査を実施し、不正アクセスがミナスジェライス州ジュイス・ジ・フォーラ市の警察署から行われていたことを突き止めた。
<「BRB AND MASTER」の検索>
捜査官らは、シカーリオがメッセージアプリを通じて、連邦検察庁のシステムで行った照会の証拠を送信していたと記録している。照会はヴォルカーロのCPF(個人納税者番号)を対象に行われ、銀行家に関連する15件の手続きが確認された。そのうち11件は非公開扱いだった。
検索は「BRB AND MASTER」という語句でも行われていた。両語が含まれるすべての手続きを特定するためである。
BRBはブラジリア銀行で、マステール銀行の不正な金融証券購入に関する捜査対象となっている。
シカーリオとやり取りしていた人物は、内部での照会作業を目立たせないよう配慮していた。
「BRB+Master に関するすべての手続きに入るべきか、彼に確認して。件数が多い。私は最初の一件だけ入ったが、多すぎて注意を引く可能性がある」とメッセージのスクリーンショットには記されている。
これに対し銀行家ヴォルカーロは「全ての情報を寄越せ。最大限の注意を払ってくれ」と返信した。シカーリオは「では関連情報を総ざらいで引き出させます」と応じた。
連邦警察は、照会を行った職員が自身の名前と所属部署をハッチング(塗りつぶし)して隠そうとしたことを指摘している。
「この状況は、職員が自身の身元を隠そうとした意図を示しており、秘密文書の共有に関わる不正行為を認識していた可能性がある」と連邦警察はメンドンサ判事宛てに記している。
翌日、シカーリオはヴォルカーロに対し、連邦検察庁の「事実通知」(犯罪の疑いがある事実を検察が予備的に記録し、調査開始の可否を判断するための内部文書)を送信した。そこには、BRBによるマステール銀行買収の試みが国家金融システムに対する犯罪に該当するかどうかを調査するよう指示が記されていた。
連邦警察は報告書で、この文書が「機密扱い」であり、モウロンによる「不正取得の可能性を示す証拠」であると強調している。
「ダニエウ・ヴォルカーロは、自身に向けられた捜査に関する秘密情報を得るため、不正アクセスを利用していた」と、報告書に署名した4人の連邦警察官は記している。
「このように、連邦検察庁のデータベースに対する秘密裏の検索を行った後、検索は連邦警察のデータベースに集中するようになった」と連邦警察は説明する。
捜査官らは、2025年9月15日のスクリーンショットを示し、“部隊”が連邦警察の公式司法警察システムであり、連邦警察官専用の内部データベース「ePol」にアクセスしていたことを裏付けている。
この文書は、マリルソン・ホゼーノ・ダ・シウヴァからシカーリオに送られたもので、メッセージの中で彼は、グループへの月額支払いの継続を改めて求めている。
<インターポールやFBIへのアクセス疑惑も>
連邦警察は、ヴォルカーロの“部隊”が警察機関への侵入で達した高度なレベルについて、「内部で共有されていたスクリーンショットやメッセージなどの証拠は、FBIやインターポールといった国際機関へのアクセスにまで及んでいることを示している」と報告している。
FBI(米連邦捜査局)は、米国における連邦警察機関に相当する捜査機関。
連邦警察は、2025年10月24日、フェリッピ・モウロンがインターポールのロゴが表示された画面のスクリーンショットと、以下の文言を含むメッセージを転送したと記録している。
「白抜きになっている部分は、検索を行った人物の名前を隠すためのもの」
「FBIの主要報告書を待っている」
「インターポールはクリーンだ」
連邦警察は連邦最高裁判所への報告書で、インターポール・ブラジル支部に照会したところ、メッセージに添付された画面の視覚的構成は、インターポールが提供する検索システムのものではないとの回答を得たと説明している。
ただしインターポール側は、「他国の検索システムである可能性」を指摘した。
連邦警察は、照会がインターポールのデータをダウンロードしたうえで、別の国のシステムを通じて行われた可能性を示し、「いずれにせよ、ブラジルのユーザーによるものではないと推測できる」と記している。
捜査官らは、ヴォルカーロが法的手段を用いれば、自身に対する捜査資料に正規の方法でアクセスすることも可能だったと指摘する。
「しかし彼は不正な手段を選択した。彼には、フェリッピ・モウロン=『シカーリオ』が率いる一種の私兵組織があり、そこでは退職した連邦警察官マリルソン・ホゼーノが中心的に関与していた」と連邦警察は指摘している。
<マステール銀行事件>
マステール銀行は2025年11月18日、ブラジル中央銀行(BC)によって清算された。BCは、同銀行が「深刻な流動性危機と著しい財務状況の悪化」に陥り、さらに「重大な規制違反」を犯していたと説明している。
マステール銀行の救済をめぐる過程では、連邦区政府が支配するBRB(ブラジリア銀行)が関与した。BRBがマステール銀行と行った取引による損失は深刻で、BRBは88億レアルの資金を必要とする事態に陥った。
中央銀行は、BRBによるマステール銀行の買収を阻止した。しかし連邦警察の報告書は、ヴォルカーロと中央銀行の2人の幹部との間に「不正な関係」があったと指摘している。
ダニエウ・ヴォルカーロは2025年11月と2026年3月に連邦最高裁判所の命令で逮捕され、現在も拘束が続いている。
シカーリオも逮捕されたが、拘置中に自殺を図り、2日後に死亡した。
連邦警察によると、ヴォルカーロはシカーリオを「サービス」目的でも利用していた。そこには暴力行為、威圧、脅迫の実行が含まれ、「身体的攻撃の計画や実行の可能性」も示されていた。武装した人物の動員も行われていたとされ、目的は「特定の人物を圧力で黙らせること」だったと連邦警察は記している。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




