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ワグネル・モーラ(ワギネル・モウラ)、アリス(アリシ)・ブラガも出演。近未来社会派SF「エリジウム」

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物語の舞台は2159年。地球は汚染され、犯罪や疫病がはびこっている。人類の中の富裕層はスペース・コロニー「エリジウム」に移住して、平穏で快適な生活を送っている。一方、貧困層は荒廃し果てた地球上に暮らし、エレジウムを見上げながら、富裕層の生活を支えるための肉体労働に従事している。映画「エリジウム」は、この格差社会を巡る、近未来社会派SFだ。

スラム化した地球の姿は、まるで「銀河鉄道999」のダウンタウン(ただし「エリジウム」にはメガロポリスは存在しない)。スペースコロニーは「機動戦士ガンダム」のコロニーを想わせる(ただし「エリジウム」ではコロニーは複数ではなく「エリジウム」ひとつだけ)。

監督・脚本(オリジナルストーリー)は、故郷、南アフリカのヨハネスブルクを舞台に人間とエイリアンの関わりをドキュメンタリータッチで描いたSFアクション「第9地区」でデビューしたニール・ブロムカンプ。「エリジウム」が長編2作目となる。

断絶された格差社会と差別といった問題はデビュー作「第9地区」でも描かれていたが、ニール監督は今回、同じ人間同士による富裕層と貧困層との格差社会を物語の軸に置いている。南アフリカ共和国最大の都市でありながら、アパルトヘイト時代に根を持つ旧黒人居住区ソウェト地区とを抱えるヨハネスブルグと、よりストレートに重なりあう設定となっている。

映画は、スラム化した地球からエリジウムへの密航を企てる者たち(主人公マックス・ダ・コスタ(マット・デイモン)もその一人)と、非公式手段を講じてまでもエリジウムを脅かす危険を容赦なく殲滅させる政府防衛省デコラート長官(ジョディ・フォスター)との抗争を軸に進んでいく。

この物語の中でニール監督は、象徴的なキャラクターとしてブラジル人俳優を起用しているのだ。

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地球からエリジウムへの密航斡旋組織(「蛇頭(スネークヘッド)」のような組織!?)の頭領スパイダーを演じているのはWagner Moura ワグネル・モーラ(ワギネル・モウラ、ヴァギネル・モーラ、写真左)だ。お調子者の憎めないキャラ(「ウーマン・イン・トップ」、「神様はブラジル人」)から、根深い社会不正を目の当たりにして自身のこれまでの行動に苦悩する軍関係者(「エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE」)まで、幅広いキャラクターを演じてきた。

今回ワギネルが扮したスパイダーは、これまで彼が演じてきた様々な顔を併せ持つ魅力的なキャラクターだ。スパイダーとマックスとは共に地上で育った古い仲のようで互いに友情も持ち合わせてはいるが、基本的には、今のスパイダーにとってマックスは客でしかない。

ところが、マックスの密航が個人的な理由を超えて地球上のすべての人々の運命を変えるかもしれない“革命”という名の大博打に巻き込まれることになると、スパイダーの意識も変化。頼もしい革命ゲリラ軍の指揮官の様相も、見せる。とはいえ、クールにはなりきれない人間味あふれるキャラ、という辺りがワギネルらしい。

もう一人、映画に登場する重要なキャラが、マックスとは共に孤児院で育った女性フレイだ。「いつか僕がエリジウムに連れて行ってあげる」という子供のころのフレイへの約束を、マックスは意図せず結果的に果たすことになる。

デラコート長官により、非合法にマックス暗殺を指示された傭兵に捕えられたフレイは、地上では不治の病におかされている幼い娘と共に拉致され、傭兵の手でエリジウムに連れられていくのだ。しかし彼女は、エリジウムの医療技術なら娘の命が助かることも知っている。

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体を張って娘を守る母親フレイを演じるのは、現在公開中の「オン・ザ・ロード」でも、生命力漲る逞しい女性を演じているAlice Braga アリス・ブラガ(アリシ・ブラガ、写真左)だ。「シティ・オブ・ゴッド」でもスラムの住人で主人公にとってヒロイン的な存在を演じていたが、「ブラインドネス」でも差別・隔離される側にいながら逞しく生きる女性を演じていた。

監督の故郷ヨハネスブルグとまったく同じではないにせよ、貧困などの社会問題をはらんだ格差社会を抱えたブラジルの出身で、共通するテーマの作品に関わってきた二人を起用しているのは興味深い。

個人的にはマックスの運命の最終的な描き方に関しては納得はしないが、現実の社会に厳然とよこたわる格差や差別を壮大なフィクションの中で描き続けるニール・ブロムカンプ監督は、ブラジル映画ファンにとっても注目すべき、気鋭の映像作家だ。

「エリジウム」
9月20日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
2013年アメリカ映画/スコープサイズ/本篇上映時間:1時間49分/字幕翻訳:松浦美奈
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式HP http://www.elysium-movie.jp/

(文/麻生雅人、写真提供/ソニーピクチャーズ)

公式サイト
http://www.elysium-movie.jp/site/

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