コパアメリカ2015、ブラジル代表、4年前の雪辱を果たせず8強で散る
2015年 06月 29日2014年のW杯自国開催の惨敗からちょうど1年。
再建を託されたドゥンガ率いる新生セレソンはW杯の惨敗後、コパアメリカに入る前までは、すべて親善試合とはいえ無敗を誇ってきており、復活を遂げつつあるかと思われていた。
国民の信任を得るためには、このコパアメリカは、何としても優勝したかったはずだ。そしてブラジル国民もそれを期待していただろう。
しかし、期待は見事に裏切られた。無残な結果で、前回の2011年大会と同様に8強で散ることになってしまった。
今回のコパアメリカを振り返ってみると、まずは、予選リーグ2戦目の対コロンビア戦で、ドゥンガ率いる新生セレソンは初めて黒星を喫してしまった。
試合内容も散々だった。そんな試合の終了後に、キャプテンを託された絶対的エースのネイマールは愚行を犯してしまったのだ。試合内容・結果に相当にいらついていたのだろう。個人的ないざこざもあったのかもしれないが、特にキャプテンを任されており新生セレソンの象徴でもあるので、特に冷静さは保ってほしかった。
この愚行を目の当たりにして、ネイマールは5年前のサントスで駆け出しの頃に逆戻りしてしまった、という印象を受けた。非常に残念に思う。
このため、ネイマールは4試合の出場停止処分に。仮にブラジルが決勝まで進んでも、その試合まで出場できないことになってしまったのである。この大会、もっとも期待された選手の一人であるネイマールが早くも消えてしまったのだ。私も含めた世界中のサッカーファンが残念に思っただろうが、それ以上にブラジル国民は失望したことだろう。
ネイマールが出場できなくなるきっかけをつくった試合が、コロンビア戦ということにも因縁を感じるが、またあまりにも早い敗退劇に、昨年のW杯での悔しさを思い起こさずにはいられなかった。
ところで、前回の2011年のコパアメリカでもブラジルは、今回同様に決勝トーナメント1回戦でパラグアイと対戦している。
ブラジルに住んでいた4年前のあの日を忘れることはできない。なでしこジャパンがアメリカ合衆国を破って優勝したまさにその日その時間に、コパアメリカ準々決勝のブラジル対パラグアイ戦をやっていたのだ。
2011年の試合ではブラジルはパラグアイを圧倒的に攻めていたが、ゴールだけが奪えずスコアレスドローのままPK戦に突入した。ところが、ブラジルは驚くことに4人全員が外し、あまりにも早い幕切れを迎えてしまったのだ。特に、当時サントスにいたエラーノ(現在もサントス在籍)が天高くボールを外してしまったのが印象的だった。
今大会の決勝トーナメント初戦で2011年と同じくパラグアイが対戦相手に決まったときは、4年前の雪辱を晴らす絶好のチャンスだと思ったが、くしくも同じPK戦で散ってしまうとは・・・。
あの4年前から何が変わったのだろうか?
PK献上という不運もあったが、それ以前にピンチを迎える場面はいくつもあった。ホビーニョやコウチーニョ、それにダニエウ・アウヴェスなどはよかったと思うが、以前なら完全な格下であるパラグアイ相手に対し、まったく横綱相撲ができないのだ。
4年前のチームは、当時サントスに在籍していた二人の若者、ネイマールとガンソ(現サンパウロ)を中心に作られていた。
ガンソについては、賛否両論あるが、決して悪い選手ではないと思う。ほかにもサントスからはエラーノが主力選手として選ばれていて、ブラジルリーグで当時フッチボールアルチの代名詞でもあったサントスのチームをベースに作られていた。
今大会のブラジルの試合を見て、昨年のW杯の戦いぶりと同様に、あまりにもネイマールに依存しすぎている感じを受けてしまう。
そして、クラッキといえる選手があまりにも少なく感じてしまう。残念ながら、多くの選手に個性がほとんど見えてこないのだ。
ここ数年、というか、もうここ10年、15年ぐらいにはなるのだろうが、世界のサッカーはヨーロッパが主流になっており、ブラジル人でも一流選手のほとんどがヨーロッパでプレーするようになってきている。そうなると、ヨーロッパのクラブで通用するためには、個性を出すのではなく、その組織サッカーに合うようにこじんまりとまとめようとしているのではないだろうか?
ブラジルサッカーは、何といっても自由奔放な、見ている人を楽しませるような個人技中心のサッカーだと思う。世界の主流がヨーロッパに移ってしまった今、非常に難しい立場に立たされているのはわかるが、真剣にブラジルサッカーの向かう道を探っていかなければならないと思う。
(文/コウトク、写真/Rafael Ribeiro/CBF)
写真は6月27日、チリ。コパアメリカでのブラジル対パラグアイ戦