パラリンピック、ブラインドサッカーの選手たちがみせた凄さ

2016年 09月 25日

パラリンピック

リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピックが閉会してから早いもので1週間がたとうとしているが、各競技について改めて触れていきたい。

パラリンピックの大会11日目、9月17日(土)(日本時間18日(日))には、ブラインドサッカー(5人制サッカー)の決勝が行われた。パラリンピックでのブラインドサッカーは2004年のアテネ大会から正式種目として採用されており、ブラジルは、前ロンドン大会まで3連覇を飾っている。

視覚障害者用のスポーツであるブラインドサッカーは、フィールドプレーヤー4名とゴールキーパー(GK)1名の合計5名で行われ、五人制サッカーとも呼ばれる。

フィールドプレーヤーは視覚障害者のみ参加でき、皆同じ条件にするために、目にはアイマスクを着用する。GKだけは視覚障害者でなくても務めることができる。

フィールドはフットサルと同じ大きさのコートで、両サイドライン上には高さ1mほどのフェンスが設置されボールがコート外に出ることはない。ブラジルでも人気のショーボールやアイスホッケーのような感じだ。また、ボールは転がるとシャカシャカと音が鳴るようなつくりになっている。そして、敵陣のゴール裏では、ガイド(コラー)と呼ばれる人が立ち、指図をすることができる。試合時間は、前後半25分ずつで、フットサルやバスケットボールのように、プレーが途切れるたびに時計を止める形式で行われる。

残念ながら、日本は出場権を得ることができなかったこともあり、ブラインドサッカーは日本では大きな注目を集めなかったようだが、サッカー好きなら絶対に楽しめる競技だと思う。

今回、地元開催ということもあり、絶対王者のブラジルとはいえ、プレッシャーも相当なものだったと思う。しかし、そんなプレッシャーをものともせず、ブラジル代表は順当に決勝戦まで駒を進めていた。

決勝戦の相手は、イランだった。

ブラインドサッカー

試合は、終始ブラジルペースなのだが、なかなかゴールが決まらない。これは、ゴールが狭い上にGKは目が見える状態でプレーしていることによるだろう。

しかしそんな中、前半11分に、ブラジルのエース、10番のヒカルジーニョが鋭く蹴った角度のないシュートが見事にゴールに入った。ブラジルにゴールが決まり、会場はドッと沸いた。

その後も、終始完全にブラジルペースだった。追加点は奪えなかったが、ほとんど危ない局面もなく、そのまま1-0でブラジルが優勝した。完勝だった。

それにしても、同じサッカーでもオリンピックとパラリンピックでは、興奮させられるポイントが全然違って、新鮮な気持ちで応援していることに気づかされた。

目が見えない状態の選手たちは、ドリブルも両足でうまく行う。ドリブルは自分ひとりで行えるのでまだ理解できるが、パスも多彩に行っているのには正直驚かされる。選手同士の声などで選手の位置を予測しているのだろう。目が見えない状態で行うことで、非常に神経が研ぎ澄まされており、そのおかげで、素晴らしいプレーができるのだと思う。

リオ パラリンピック ブラインドサッカー

先日、リオパラリンピックの開催を祝して、メッシをはじめとしたFCバルセロナの選手たちが、ブラインドサッカーのスペイン代表チームとプレーしたようだが、健常者もアイマスクを着用すればプレーできるので、練習の一環として取り入れてもいいのではないかと思う。

神経が研ぎ澄まさ、集中力が高まると思うので、目が見える状態で行うサッカーをする上でも大きなヒントを得られるのではないだろうか。ブラインドサッカーの試合を見て、そんなことを思わされた。

(文/コウトク、写真上/Danilo Borges/Brasil2016、写真下/Tomaz Silva/Agência Brasil)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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