安全よりも、恋愛第一。
2013年 07月 30日当コラム「ブラジル男の口説き方」は、「ブラジル人男性が女性を口説く方法」という意味にも、「女性がブラジル人男性を口説く方法」という意味にも取ってもらえるのでは? と思って付けたタイトル。
ここサンパウロから、ノベラ(ソープオペラ)を地で行くブラジル男女の生態を、実際のエピソードと、著者の多分な偏見と共にご紹介して行きたいと思います。
早速ですが、先週の金曜日に利用したタクシーの運転手ファビオ君(仮)(推定年齢25歳)のお話を。
ブラジルのタクシー運転手は、自分の話をするタイプが多く、やれ「何回目の新婚だ、妻は毎度若くなる」とか、「メスチソとの淡い青春の1ページとか、勝手に私生活を教えてくれます。
挙げ句の果てには、車を止めてまでたまたま道を歩いていた愛人を紹介されたこともありますが・・・ファビオ君のようなケースは初めてです。
タクシーのドアを開けると、一緒だった私の娘たちに「なんてかわいい姫たち、楽しい1日だった?」とやたら愛想のいいファビオ君。お、運転手、アタリか。こちらも愛想良くおしゃべりでもしようかね、と思った矢先、彼の携帯が鳴りました。
「あ、アモザォ(Amor(Love)に増大辞が付いた形。恋人への呼びかけに使われる、直訳すると「大きな愛」の意)だから、誤解だよ、浮気してないって、嘘じゃないよ、アモザォ、嘘じゃないよ、嘘じゃないよ、え、嘘じゃないよ・・・」
うわあ、すげえ修羅場ど真ん中からかよ。ハズレだ、テレビでサッカー中継見てるドライバー同様の気の散り具合だ。運転超心配(ブラジルのタクシーは結構事故る。ワタクシ、これまでも乗ったタクシーが事故に遭い、何回も降ろされています)。
「・・・聞いてって、嘘じゃない・・・あ」。20回くらい嘘じゃない、を繰り返したところで携帯の充電切れ。やれやれ。
・・・と思った直後 、2台目の携帯にまた電話が。続くのか、続けんのか?
「ごめん、充電が・・・いや、嘘じゃないって、だったらお前の目の前で彼女に電話をするよ、それで嘘じゃないってことが分かるだろ、客、降ろしたらすぐ行くから。だから、知り合いの親戚で仕事を手伝ってくれただけなんだって、嘘じゃないって、アモザォ、聞いてくれよ、嘘じゃないって・・・」
そこにキャッチが入った模様。そちらに出るファビオ君。頼むよ、運転に集中してくれよ。早く誤解を解きたいのは分かるが、そこまで飛ばさなくていいから、ね、ね?
「ああ、ハファエラ、もう困ったことになったんだよ、え? いや、オレじゃないって電話したの。彼女が勝手に電話番号調べてかけたんだよ。聞いて、彼女の前から電話するから、『私はマリアの娘よ』って言ってくれよ。いやいや、だってもう彼女にそう言ったから『マリアの娘』で頼むよ。お願いだから。いや、そうじゃなくて『マリアの娘』で。ね、頼んだよ!」
げ、誤解じゃないのかよ・・・。勝手に「マリアの娘」にされても困るって。ハファエラ嬢、絶対電話でファビオの彼女に「マリア? 誰のこと? ママは〇〇だけどぉ?」って言うね。
・・・あれ、ファビオ、マジかよ、目頭押さえてあんた、泣いてんのかよ。自分で撒いた種じゃないのかい。つーか、涙で事故やだよ、一応子連れなんですけど。赤信号で突然振り向くファビオ君。・・・何?!
「姫たち、何歳? え、5歳と2歳? そうかあ、かわいいねえ。オレの彼女の子供は6歳と3歳だよ・・・」。うわ、感傷に浸ってる。頼むから遠い目しないで。視線、リアウィンドウの先行ってますけど?
「携帯電話、TIM?」「うん」。
む? しまった、正直に答えてしまった。
「同じキャリアに1本電話かけさせてくれない?これで掛けられないんだ」
「・・・どうぞ。」
「アモザォ、・・・とにかく会って話そうよ、嘘じゃないって分かるから。愛してる・・・今から行くから・・・」。まだしゃべるのかよ。あ、切った。切られたのか?
しっかし、まだ泣いてるのか。うぅ、言いたい。「どうしたの、揉めてるみたいだけど」って。「嘘じゃないって繰り返せば繰り返すほど嘘っぽいぞ」って。でもコレ言ったら、絶対前向いて運転してくれない気がする・・・なんてことを考えていたら、到着してしまいました。
一応、「幸運を!」とだけ言っときました。
このお話から分かるブラジル男の生態(1)バレないうちは浮気ではない(と本気で信じられる)。(2)その場しのぎに、情熱を持って臨む(大抵すぐ辻褄が合わなくなる)。(3)恋愛は仕事よりも大事。
こんな感じで続きます。それでは、また次回〜。
(写真/David Turnley/Getty Images)※写真はイメージです。