ブラジルのデモに参加したバットマン、逮捕される
2013年 09月 27日ブラジルのリオデジャネイロのデモに参加していた、バットマンのコスプレをしていた人が逮捕されたと、9月25日のグローボG1が伝えています。
ブラジルでは大掛かりな形のデモは沈静化しているものの、今もテーマごとに、各地でさまざまなデモが行われています。これらのデモの多くは平和に行われているますが、デモに便乗して、ガスマスクや覆面をした者たちが犯罪行為を行うという現象も起きている、とされています。
こういった便乗犯罪が問題視される中、さまざまな州や自治体で、デモにおける覆面の禁止を法令化する動きが出てきています。
サンパウロ州の奥地の一部地域でデモを行うときに覆面することが禁止されたと、9月5日のエスタダォン(電子版)が報じています。6月に、禁止区域付近にある広場で放火があったことが、法律が制定されたきっかけとなったとのことです。
Maria Thereza Nogueira Pinto マリア・テレーザ・ノゲイラ・ピント判事は「誰が犯罪を行ったか特定できないという現状があり、放火以上のひどいことが行われる可能性もあるため、(覆面禁止の)申し立てを受理しました」と語ったとのことです。
リオデジャネイロ州でもデモにおける覆面禁止の法案が討議されていましたが、9月11日にSérgio Cabral セルジオ・カブラウ州知事が認可、9月12日から発効することをエスタダォン(電子版)が伝えています。
しかし、デモにおける覆面禁止に反対している人たちもいます。
9月25日に、Assembleia Legislativa do Rio (Alerj) リオ立法議会が行われるチラデンチス宮殿前のデモに、バットマンのコスプレで参加して逮捕されたEron Moraes Melo エロン・モライス・メロさんも、そんな中のひとり。本人曰く「拘留されることはわかっていてやったんだ。覆面禁止法案への抗議でやったことだと警察署でも説明したよ。法案は覆されるべきだ」。
デモにおける覆面禁止を法律で定めている国は少なくなく、これに対し、反対の声も叫ばれ続けてきました。反対意見の中には、社会的偏見や差別を受けている人たちがデモを行う際に覆面ができないとメディアに素顔を公表しなければならなくなり、基本的人権の侵害にあたるという意見があります。例えばですが、レイプされたことのある人たちが、レイプという行為に対する量刑が軽いことに不満を抱いてデモを行いたいと考えても、デモで覆面ができないとなると、その人たちはデモを行うことで素性をさらすリスクを負うことになる、ということも起こりえます。
覆面使用で便乗犯罪が起りえることも事実と思われますし、覆面を禁止することで権利を失う人たちが存在することも事実と思われます。法案の是非は簡単には語れませんが、ブラジルのデモに、新たな抗議の種が生まれたことは確かなようです。
(文/麻生雅人、写真/Fernando Frazão/ABr)
写真は2013年9月25日、チラデンチス宮殿の前のデモ。バットマンに扮したエロンさんたち