ドラマが毎日決まった時間に始まらないのはテレビ局の戦略!?ブラジルのテレビ事情(2)

2014年 04月 7日

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ブラジルのテレビの放送時間に関する現地事情のお話です。前回は、「テレビドラマが毎日決まった時間に始まらない」第一の理由についてお話ししました。

しかし、理由は番組制作を合理的にすることだけではありません。ブラジルの熾烈な視聴率競争も、この習慣を作る要因になっていたのです。

ブラジル最大のテレビ放送網グローボの番組、特に夜のドラマが、視聴率競争で圧倒的な強さを誇っていることは前回お伝えしました(昨年放送のドラマでは最高視聴率75%という番組も!)。

そのため他のテレビ局は、このグローボの圧倒的視聴率を誇るドラマに正面から対抗する事はあまり無くなっています。むしろ、グローボのドラマが終わる時間に合わせて、自局の番組宣伝を放送します。

それを知っているグローボは、5分~10分間隔で番組と番組の間に設けられている時間を、戦略的に活用するようになりました。グローボはきっちりとした時間に番組を終わらせないのです。次の番組の開始時間まで前のドラマの放送時間を引っ張るようになり、番組の放送時間が伸びるようになったのです。

他のテレビ局はたまりません。グローボのドラマが終わっておらず、チャンネルが変えられる可能性が低くても、裏番組を始めなけばなりません。それどころか、グローボのドラマが終わった後に視聴者が他局のドラマを見ようとすると、そちらはすでに番組が始まってしまっているというわけです。とても高度な視聴率戦略です。

また、ニュース番組も大事件や重大なニュースが多いときは延長されます。これは日本も同じです。しかし、違うのはニュースが極端に無い時。この場合、ブラジルではニュースの放送時間が短くなります。

日本の場合は、ニュースが少ない時用の埋め合わせのニュースを用意してあると言われます。しかも、放送時間を秒単位でキッチリと埋めるわけです。ブラジルは、ニュースが無ければ番組を短縮する。至って合理的です。

もちろん、このような放送時間の伸縮が可能となるのは、日本とは異なる放送システムがあるためです。

日本の場合、放送局のマスター室と言われているところから番組を放送します。サブとメインの体制になっており24時間体制での監視の元、2重3重の体制で放送しています。

グローボの場合は、このマスター室がニュース部門、スポーツ部門、ドラマ部門、CM部門と4つに分かれており、常時、インカムで連絡を取りながら、次に放送する番組やCM、放送開始時間を決め、全てをライブ状態で放送しています。

そのため、各スタッフがリアルタイムで連絡を取り合って、臨機応変に放送時間を調整することが可能となっています。

連携プレイの一例を紹介します。

たとえば、ドラママスターからCMマスターにドラマを5分延長するからと連絡が入れば、CMマスターはドラマの終了後にCMを5本まとめて放送します。そうすると今度はCMマスターがスポーツマスターに、CMが5本流れた後にサッカー中継を放送して欲しいと連絡が入ります。すると今度はこれを受けて、スポーツマスターがサッカー中継をするスタジアムに連絡。試合レフリーに、キックオフをCM開けまで待つように指示を出す。という具合です。

こうしたシステムを利用して、如何にして視聴率を獲得するかを考え放送している結果と、番組制作上の合理性とが合わさって、結果としてブラジルでは、番組の時間は定まらず、番組表が機能しないという状況があるのです。

グローボは、日本でもスカパー514ch「グローボインターナショナル」で24時間、ポルトガル語で放送しています(視聴申し込みは03-6436-9200まで)。

ポルトガル語を勉強している方、実際に今のブラジル人が使っている表現をマスターしたい方、ブラジル国内の主要なサッカー試合放送を観たい方、ブラジル人との会話ネタを探したい方、ブラジル国内のことをいち早く知りたい方などにも、おすすめです。

(文/石原聖士、写真/Divulgação/TV GLOBO)
ブラジル本国で4月7日放送開始予定の新番組「Meu Pedacinho de Chão」。日本でもグローボインターナショナルで近日放送予定