無人飛行機からロボットまで。ハイテク化するブラジルの農業

2014年 04月 9日

istoe-dinheiro

生物化学の発展と機械化はブラジルの穀物の生産性をここ10年間で60%向上させたが、研究者達は、2020年までの生産性向上率は世界目標の2倍に当たる40%にと、さらに野心的な目標を打ち出している。

生産性向上に取り組む研究者が当面の目標にしているのは、ロボットや無人飛行機の活用だ。

サンパウロ州内陸部にあるエンブラッパ(ブラジル農牧調査研究公社、Embrapa)・インストゥルメンタッソンとサンパウロ総合大学(USP)サンカルロス校の研究者達の現在の課題は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が火星探索に使うジープ型ロボット“クリオシティ”同様の機能を持つロボットの開発だ。

開発中の新型ロボットはレーザー照射でプラズマを発生させ、土壌に含まれる水分や化学物質の種類と量を分析する上、栽培中の作物の栄養状態や病気の有無も解明するという。土壌や作物の状態を見て肥料などを調整すれば、作付け後の畑であっても土壌改良が可能なため、収量の増加も期待出来るという。

新型ロボットの試作品は小型のものが昨年9月に開発され、試験結果も良好だ。11月の農業機器の見本市出展を目標に開発中のものは農場で使う事を前提としており、大きさも長さ1.5メートル、幅1メートル、高さ0.8メートルに。ただし、この新型ロボットの実用化は3年後の見込み。同様のロボットを使うプロジェクトは米国や欧州などにもあるが、現在は皆、試用期間中だ。

軍が航空写真の撮影などに使う無人飛行機は、土地の侵食や放牧された牛の観察、栽培中の植物の種類の確認、開花や実の入り具合の観察などを可能とする。最近は赤外線を使えるカメラも搭載出来、水分管理や害虫被害の有無の分析も可能になったという。

無人飛行機の本格利用に必要なのは写真解析や情報理解のために必要なソフトウエアで、各植生に適したプログラム開発も不可欠だ。エンブラッパでは様々な会社と提携し、プログラム開発に取り組んでいる。主な提携企業と研究内容は、モンサント(トウモロコシの交配種に関して)、SLC(棉栽培における窒素の影響について)、ジロール(サトウキビ畑の問題管理)などだ。

南マット・グロッソ州にあるセルロース製造会社のエルドラード(エウドラード)・ブラジルは16万ヘクタールの畑の管理に3機の無人飛行機を使い、2週間前にも1機を買い足した。

最初の2機は8万レアル、3機目は12万レアルかかったが、技術者2人が2~3日を要していた植え付けから3カ月以上経たユーカリの苗管理が8時間で終わり、ヘクタール当たりの管理費用は6.68レアルが4.68レアルに減るなどの効果に満足している。

マット・グロッソ州内5市にまたがる25万8千ヘクタールの畑で大豆やトウモロコシ、棉を栽培するアンドレ・マギ・グループは、4年前から畑の状態を監視する技術者にタブレットを持たせている。技術者が5日間かけて集めた作物の成長や肥料散布の必要の有無、種々の機械がきちんと機能しているかといった情報は集計などにも時間がかかり、対応のための情報が現場に届くのには最大10日を要した。

現在は、技術者が集めた情報はその日の内に本社に送られ、翌朝には現場担当者の手元に届くため、作物の病気などへの対応も早くなった。同グループでは生産性が向上し、収穫期毎に作成されていた5万枚の集計用紙も不要となったという(6日付「エスタード」紙より)。

(記事提供/ニッケイ新聞 http://www.nikkeyshimbun.com.br/)
写真はエウドラード・ブラジルの無人飛行機導入など農業ハイテク化を特集した雑誌「ISTOÉ Dinheiro」2014年1月29日号