電話するときは旦那に秘密でね、というタクシー運転手(20歳)
2014年 06月 9日久しぶりに、よ~くしゃべるタクシーの運転手に出会いました。カルロス君(仮名・20歳)。「普通の黒人のように俺の鼻はつぶれていないだろ? 白人みたいってよく言われるんだ」という顔をした青年です。
「タクシーで送り迎えする運転手、必要じゃない? 俺のこと、月契約とかで雇ってくれないかな?」
「日本人? 俺ねえ、サッカーはカズから教えてもらったんだよ。サッカー選手だったんだ。カズのサイト見てよ、出てるから、俺が所属していたチーム・・・日本のプロサッカーで雇ってくれないかな? 連れてってよ、日本・・・」
「宗教は、エバンジェリコ(キリスト教福音派)? なに、仏教だって? 俺は、敬虔なエバンジェリコだよ。アセンブレイア・デ・デウスの宣教師として、あちこちに布教に行ったよ。アンゴラが一番好きだった・・・見て、これ、宣教師ID」
と、適当に話を流していたら、どんだけ仕事持ってるんじゃい、と、なんだかいっぱい出てくる、出てくる。
そのうち、「俺、結婚したばかりなんだよ」という話が出たので、「あら~、若いのに。どんなワイフなの?」と水を向けてみると、「彼女も信者なんだ。俺、すごい振られ方をして落ち込んじゃって、彼女の前、しばらく誰とも付き合ってなかったんだよ。ルームメートが、週末デートに出かけたりなんかしたら、寂しくて泣いてたよ。で、神に祈っていたんだ・・・」
「そうしたら、彼女が現れた?」
「そうだよ。俺、日本人と付き合ったことあるよ。でもね、やつ、娼婦だったんだよ!」
「え? 日本から来た日本人? 本当に?」
「そうだよ、だって、俺見たんだよ。ダウンタウンの方に、いつも彼女が立つスポットがあったんだ。タクシーでそこを通って、男とイチャついてるところ、見たんだ」
「それはショックだったね。で、今のパートナー?」
「いや、別の子と付き合った。でも、そいつもひどかった。学校だって言うから、迎えに行くって言うと、断るんだよ。悪いから、なんて。でも毎回そうだと、なんかおかしいって思うだろ? でね、ある時、待ち伏せしていたら、別の男とイチャついてて・・・」
「あらあら」
「それで、もう女性不信になったんだよ。でも、ほら、俺、サッカー選手だっただろ? 女はいくらでも手に入ったんだ。チームメートなんかは、辛気臭い顔してないで、一緒に遊びに行こうって誘ってくるんだけど、そんな気にもならず、独り、寂しく泣いて、祈ってた」
「そうかあ。でも、そんな心境で結婚決めて大丈夫なの?」
「聖書に書いてあるんだよ、夫は妻に一生の貞操を誓うべきだって。だから、もちろんそうするつもり。・・・この前乗せた日本人の女性なんて、店で夫に泣かされて、車内でずーっと泣いてたよ。そんな男にはならないんだ、俺は」
「それはいいことだよ。でも、ぜんぜん誘惑とか、ないんだ?」
「・・・ある!」
「どんな?」
「この前、タクシーに乗せた30歳くらいのブロンドの弁護士に、買い物の荷物を部屋まで運んで、って頼まれて、ついて行ったんだ。そしたら、ソファーに座るように言われ、なんか着替えてきて、朝まで一緒にいて欲しいと・・・」
「おおっ。で、どうした?」
「もちろん、そんなことはできませんって、帰ったよ。・・・だって聖書に書いてある・・・」
「ふーん。パートナーは知ってるの?」
「もちろんだよ」
「あ、着いた、ここだ。レシートちょうだい。名刺ある? ない? じゃあ、連絡先、書いておいてよ」
「うん。でも、旦那に嫉妬されない?」
「なんで!?」
「この前、お客の夫からすごい怒りの電話があったんだよ。もう妻を迎えに来ないでくれって。だから、秘密で電話して(ウィンク)」
「いやあ、それは・・・(なんでタクシー呼ぶのに秘密にしなきゃいかんのよ)、うん。ありがとう、またね」
「遊ぶことはしない」と言いながらも、「モテる俺」アピールがものすごくて、面白かったです。二十歳ってこんな感じなのですね・・・。彼の結婚生活は、どうなるのでしょう。話の続き&近況を聞くために、彼のタクシーを呼ぼうかと思うくらいですよ。
(文/東リカ、写真/Dê Preferência à Vida)