Entrevista ホジェル・メロ
2014年 07月 8日ホジェル・メロの絵本が、作品ごとにタッチ異なるのは、多様な文化を持つブラジルを題材にした作品が多いからとも言えそうだ。
各地の伝統芸能を描くシリーズでは、地元に近いゴイアス州に伝わる騎馬芸能カヴァリャーダについて語った「カヴァリャーダス・ヂ・ピレノーポリス」、マラニョン州で盛んな牛の伝説のお祭りブンバ・メウ・ボイについて語った「ブンバ・メウ・ボイ・ブンバ」などがある。この2冊の原画も現在、ちひろ美術館にて展示されている。きめ細かいホジェルさんの作品は、生の原画で見ると存在感は圧倒的だ。
「カヴァリャーダはゴイアス州のピレノーポリスに伝わる行事ですが、この街は同州の首都よりも、私が生まれたブラジリアに近いんですよ。鉱物を探索するために奥地を開拓しに来たポルトガル人が作った植民地で、古いポルトガルの文化や祭りが残っています。カヴァリャーダもそのひとつです」
ブンバ・メウ・ボイは北東部のマラニョン州が盛んだが、類型はブラジル中にある。
「だから、ブンバ・メウ・ボイ自体はブラジル中で広く知られています。しかし地方によって形が違い物語も異なります。マラニョン州のブンバ・メウ・ボイにはカズンバーやパイ・フランシスコという登場人物がいますが、彼らがブラジル中で知られているわけではありません。私自身もマラニョンを訪ねるまでは、その土地の話のことを詳しくは知りませんでした。ブラジルには、地方ごとに実に多様なお祭りで行事があり、今も子供からお年寄りまで地元の人々に親しまれています。絵のイメージも、その土地土地やお祭りによって異なります」
こうしたホジェルさんの活動は国際的にも高く評価されており、2014年、児童文学に貢献し続けている作家に対して贈られる国際アンデルセン賞のイラスト部門を受賞した。ホジェルさんは2010年、2012年にもノミネートされており、贈られるべくして贈られた賞だといえる。
ホジェルさんの作品は広く世界にブラジルの文化を伝える面もあるが、何よりブラジル国内の子どもたちが、自分の国に、これだけ豊かで素晴らしい文化があるのだということを知るきっかけにもなるはずだ。そしてホジェルさんの活動は、本を書くことだけにとどまらない。
「ブラジルでは、本を買える人たちというのは中産階級以上で、低所得者層の人が多く暮らすコミュニティでは本を買うことは困難ですし、文字を読めない子どもたちも少なくありません。こうしたコミュニティの中では図書館があっても何年も新しい本が入っていなかったり設備が不十分でした。だから図書館の変革が必要です」
かつて、自分自身が子どものころに絵を学ぶきっかけとなった課外授業が行われるような図書館などの公共施設が、ブラジルのあらゆるコミュニティに作られることも、ホジェルさんの希望だ。
「ブラジルには、こうした素晴らしい伝統的な文化が伝えられているのですから、こうした文化を伝えるためにも、もっと教育に予算を使うべきだと私は思います」
コミュニティの図書館でワークショップを行うなど、図書館や本に興味を持ってもらえるように、足を運んでいる。
「知り合いになったある家族は、家族全員、図書館に通うことが習慣になりました。子どもたちが図書館に通うようになったことがきっかけで、コミュニティ内の大人たちの何人かも、本に興味を持って図書館に来るようになりました。外の人間がとやかく言うのではなく、コミュニティの人々が自分たちの考えでコミュニティを変えていくために、図書館は大きな役割を果たしていくと思います」
(文/麻生雅人、写真/Roosewelt Pinheiro/ABr)
写真はマラニョン州のブンバ・メウ・ボイを演じるグループのひとつ
「ブラジルからやってきた! 色彩の画家 ホジェル・メロ展」(開催中~7月22日まで)
http://www.chihiro.jp/azumino/museum/schedule/2014/0106_1225.html
安曇野ちひろ美術館
長野県北安曇郡松川村西原3358-24
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