ワールドカップ真っただ中のブラジルで行われた、世界最大規模の日本祭り

2014年 07月 9日

中田英寿 nakata cafe

ワールドカップの準々決勝が行われ7月4日、サンパウロのイミグランテス国際展示会場にて、おそらく海外移民者による日本文化のお祭りでは世界最大規模の「フェスティバル・ド・ジャポン(日本祭り)2014」が開幕した。今年で17回を数え、6日までの3日間で約20万人が来場したと見られる。

トヨタ、ホンダといったブラジルに進出した日本企業が出展するとともに、アニメ・マンガ、日本食、畳などの日本文化の紹介・販売やコスプレ大会、ミス日系コンテスト、世界遺産となった富士山写真展などのイベントが行われ、非常に盛りだくさんな内容となっている。そして、来場者のほとんどは、日系人ではなくブラジル人であり、いかに彼らが日本文化を好きかが良くわかる。

このイベントのある意味で目玉であり、大人気なのが屋外で展開される各都道府県県人会による、日本の地元の料理や飲料を販売するフードコーナーである。

お祭りの屋台よろしく各県人会のテントがびっしりと並び、各地の特産物を販売するとともに、B-1グランプリさながらに地元料理を競う。

ここで改めて日本の食文化の多様性、豊かさを実感する。日本でもこれだけまとめて各県の郷土料理を味わえる場所はなかなかない。それを日本から最も離れたブラジルの地で行っていることは、ただただ驚くばかりである。

さらには伝統芸能も伝承されており、様々なスタイルの和太鼓や各種和楽器による演奏、盆踊りなども行われる。

しかし、ちょうどオープニングの7月4日はワールドカップのブラジル戦。ブラジル戦のある日は会社も午後から休みになり、ほとんどの店も閉まり、テレビ中継に釘付けになる。この日本祭りはどうなるのかなあと見ていたら、試合が始まるぎりぎりまで、例年と変わらず、太鼓のパフォーマンスや法被を着て和食の販売をしていた人たちが、いつの間にかブラジル・セレソンのイエローのユニフォームに着替え、これを見越して会場に設置された大型スクリーンの前に集まって来た。

そして、座っていた人も立ち上がって、セレソンと一緒に国歌を歌い出した。その変わり身の速さというか、自然さに移民の歴史を感じるとともに、いつか完全にイエローの側だけになっていくのではという怖さも感じた。

このイベントは県人会の連合である県連が主催で行っている、いわゆるボランティアの文化イベントである。もちろん協賛も募ってはいるが十分ではなく、実は来年の開催が危ぶまれているらしい。すでにここまでの実績と集客力のある、世界最大規模の日本文化イベントを失ったら、日本にとってどれだけの損失かわからない。日本政府もクールジャパンやソフトパワーとしての日本文化の浸透に予算を割いているはずなので、ぜひこのイベントを存続させるとともに、日本文化発信の場としてさらに大きく育ててほしいところだ。

そしていつの日か、日本の総理大臣がこのイベントに合わせてブラジルを来訪することがあれば、160万人の日系人も多くの日本文化ファンのブラジル人も大歓迎するであろう。

(文/輿石信男/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真提供/サニーサイド・アップ)
写真は「フェスティバル・ド・ジャポン(日本祭り)2014」会場に出店した日本酒Bar「N-Bar」とプロデュースした中田英寿。「N-Bar」は「nakata.net Cafe2014@サンパウロ」内でも展開している