安倍首相「日系人がいるから魂の交流できる」。日系社会との関係強化誓う。JICAボランティア増員も発表

2014年 08月 5日

安倍首相ブラジル

安倍晋三首相は(8月)2日午後、日系団体との懇談・歓迎会に出席するため聖市の文協ビルを訪れた。

現役首相としては10年ぶりの聖市訪問に、会場となった文協大講堂はほぼ満員、1千人を超える来場者が埋め尽くした。コロニアの手厚い歓迎を受けた安倍首相は壇上で「海外で活躍する日系人にとって、誇りがもてる日本であり続けたい」との思いを語った。

安倍首相は同日、聖市のイビラプエラ公園の開拓先没者慰霊碑参拝、日本館視察の後、文協ビルには午後3時半過ぎ、昭恵夫人と共に到着した。入り口には「歓迎 安倍晋三内閣総理大臣」と書かれた垂れ幕が下がり、午後1時から文協前には長蛇の列ができた。

首相はまず正門前で待ち構えていた人々の握手に笑顔で応え、平成学院など日系校の生徒が両国旗を振る中、階段に敷かれた赤絨毯を、手を振りながら上った。9階での日系団体、日系議員らとの懇談の後、大講堂に入った首相は来場者総立ちの拍手で迎えられ、文協婦人コーラスの合唱の中、壇上の席に着いた。

首相は「政治家として人前で涙を見せることはなかった祖父が、『あの時は、初めて流れる涙を止めることができなかった』と言っていました」と1959年に当地を訪問した岸信介元首相の知られざる話を披露した。

「大変な苦労の中、この地で頑張った一世、日本人の守るべきものを守りながら受け継いできた子孫に敬意を表したい」とした上で、「“ジャポネース・ガランチード(信用できる日本人)”は、私達日本で暮らす日本人も大切にすべきもの」と続けた。

東日本大震災への義捐金として当地から6億円相当の金額が送られたことに触れ、謝意を表明すると同時に「それだけ日本のことを思ってくれていると感激しました」との気持ちをのべた。

今後の日系社会との関係について「日本人の信用を高めて頂いている日系人の皆さんとの関係をさらに深めていきたい」と明言。種々の活動の支援に加え、来年の日伯外交樹立120周年にあたり「日本語教育の普及にも力を入れたい」とした。

具体的にはJICA日系社会青年・シニアボランティアの派遣を現状の60人から100人に増員する予定を挙げ、「様々な策を通じ、日系社会との繋がりをより太くしていくことを約束する」とした。

最後に「日系人の存在のおかげで、日本とブラジルが魂と魂の交流を続けて行くことができる。今後も両国関係のために全力を尽くすことを誓い、皆様がお元気で、各分野でますます活躍されることを祈念したい」と締めくくった。首相は夫人とともに子供達から花束を受け取り、自身の強い意向で予定時刻を過ぎるまで来場者全員との記念撮影を行った。

来場者の尾迫幸平さん(86、鹿児島)は「やっぱり総理だけのことはある。いい話を聞かせてもらった」、徳力洋子さん(70、千葉)も「もっと話を聞きたかった。日本語普及に力を入れてくださるとの話、とても嬉しい」、前田進さん(68、富山)は「コチア青年も来年60周年、外交樹立120周年と共に盛り上げたい」と述べた。西丸俊子さん(85、香川)は「感心しました」と感動した様子で、「日本語教育に力を入れて、研修生や留学生制度など交流を絶やさないで頂きたい」と話した。

(記事提供/ニッケイ新聞、写真/Wilson Dias/Agência Brasil)
8月1日、ブラジリア。文協を訪問する前日、ジウマ大統領(右)と会談した安倍首相(左)