金閣寺売却の可能性浮上!? 所有者は否定

2015年 04月 7日

金閣寺

写真は約40年前に建立され、日系家族の共同墓地となっている(ブラジル)サンパウロ州イタペセリカ・ダ・セーラ(セーハ)市の金閣寺。

同寺が数年前に霊園の運営や葬儀を行うメモリアル社の手に渡って以来、管理が行き届かず、売却の話まで持ち上がっているという。

隣接する円光寺の僧侶ルイス・カルロス・ルジロさん(47)によれば、「金閣寺は利益にならないからだろう。放ったらかしの上、遺灰墓の販売も止めてしまった」との状況のようだ。同僧侶は「もし金閣寺の文化的価値の分からない人間の手に渡ったら、どうなるか…」と懸念を表明している。

サンパウロ市中心街から南西に約40キロ、イタペセリカ市のヴァーレ・ドス・テンプロス国立観光公園内に金閣寺は建つ。

空気の清涼な公園内の湖畔に、豊かな大西洋岸林を背景として静々としてたたずむ。内部にはロッカー状の遺灰墓がびっしりと詰まっており、約5千家族の遺灰が安置されている。

金閣寺建設の協力者であり、1976年の創立当初から遺灰を持ち寄る家族のために法要を執り行ってきた大畑天昇さん(95、静岡)は、「以前は週末の法要にも差し支えるくらい人が来たのに、入場料が5レアルになってからめっきり減った。入場料なんか取っちゃいかんと、私は言ったんだが…」と嘆く。

現在は、仏事を行う場所として01年に金閣寺横に建設された円光寺の住職を務めている。

金閣寺は従来、創始者のアロンゾ・バイン・シャトゥキ氏自らが管理を行ってきた。でもアロンゾ氏は寺の財政状況が思わしくなかったためか、齢90を超えた数年前、借金を残したまま突如米国に帰国したという。

以来、大畑住職も寺の運営にはほぼ関与しておらず、「日系社会の文化遺産の運命は運営会社の手にゆだねられている」とルイスさんは言う。「寺には資金がない。日系団体や総領事館が買ってくれれば一番理想的だ」と力なく語った。

彼によれば、金閣寺にはメモリアルが買い取る前に出資した名ばかりの共同経営者がおり、二者の間で4年ほど金銭をめぐる争いがあった。それに業を煮やした同社は、利益の出ない金閣寺の売却を考えたという状況のようだ。

しかしながら同社は本紙の問い合わせに対し、「売却するつもりはないし、管理も従来通り行っている。客が減ったという話も聞いていない」と少々憤慨気味に否定し、「ただ、今はほかに中心となるプロジェクトがあり、金閣寺にはそれほど手をかけていないだけ」と弁明した。

(写真・記事提供/ニッケイ新聞)
日本に在住経験のあるアメリカ人が、日本の金閣寺を模して建てたブラジルの金閣寺をバックに、円光寺のルイスさんと大畑住職