生まれも育ちもブラジルなのに”パラグアイのブラジル人”!?
2015年 09月 5日この間、日系二世の女性に「日本語は話しますか?」という質問をしたところ、「昔は理解したけど、もう長いこと使っていないから忘れてしまった。わたしは、パラグアイの日本人なんです」という回答が返ってきました。
しかし彼女は、ブラジル生まれの日系二世であり、パラグアイとはなんのゆかりもありません。それでは、なぜ「パラグアイの日本人」になるのでしょう。
それは、ブラジルでは「パラグアイ」=「偽物」という認識(誤解?)が人口に膾炙しているからなのです。
ブラジルとアルゼンチン、ボリビアに囲まれた小国パラグアイでは、ブラジルよりもモノが安く買えるそうです。安さの秘訣は、それらのモノが中国などから来た偽造品だからだということを知り合いのブラジル人が教えてくれました。
そこから派生して、ブラジルで「パラグアイ」というと、イコール「偽物」という意味で使われることが多いのだそうです。
冒頭に登場した日系人の女性も、見た目は日本人なのに日本語が話せないということから自虐的に「パラグアイの日本人」と言ったんですね。
ところでこの話、一歩引いて考えてみるとパラグアイ人にとっては失礼極まりない表現ですよね。では、パラグアイには、本当に偽造品が多いのでしょうか!?
パラグアイには偽造品が多いという認識は、実は誤解だとする指摘もあります。
偽造品も出回っているかもしれませんが、パラグアイの方がモノが安いのは他に理由があるようです。
ブラジルは、モノの輸入に当たり高い輸入関税がかけられます(商品価格の60%)。さらに、ブラジル国内で流通するに際して、商品流通取引税(ICMS)が
16~25%発生します(消費税のようなものです)。
一方で、パラグアイは小国なので、輸入依存度が高く、輸入関税などはブラジルに比べて低いそうです。
昨年、日本に帰国した際、ブラジル人の同僚からプレイステーション4を買ってきてくれと頼まれました。日本で買うと4万円くらいですが、ブラジルで買おうとすると、なんと3倍の12万円くらいで売られています。iPadのタブレット端末も日本で買うよりも2倍の価格で売られています。
以上のような理由で、パラグアイは偽造品ばかりという認識は誤解ではないかという指摘がなされているわけです。
(文/唐木真吾、写真/Polícia Federal Foz do Iguaçu)
写真は、密輸品の押収量が最も多いパラナ州フォス・ド・イグアス。押収された密輸品。パラグアイからブラジルへは価格差が大きいタバコが大量に密輸され続けていて、社会問題となっている