渡辺貞夫さん、ブラジルの最高勲章のひとつリオ・ブランコ国家勲章を受章

2015年 11月 20日

アンドレ コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下と渡辺貞夫

ジャズサックス奏者の渡辺貞夫さん(82)がブラジルの最高勲章のひとつである「リオ・ブランコ国家勲章」を受章した。

11月19日(木)、渋谷区にある駐日ブラジル大使公邸にて叙勲式が執り行われ、渡辺貞夫さんはアンドレ コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下より勲章を授与された。

リオ・ブランコ国家勲章はブラジル連邦共和国政府が、外交分野で功績が顕著であると認めた人物に授与する勲章で、公式の国家勲章の中では最高位のひとつ。

会場には受章を祝して、リー・リトナーさんや、2013年にリオ・ブランコ国家勲章を受章した小野リサさんも駆けつけた。

アンドレ コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下は「渡辺貞夫さんは両国の文化交流に極めて重要な役割を果たしてこられました。ここに特別なお許しをいただきまして、”ナベサダ”さんと呼ばせていただきます。親愛なるナベサダさん、あなたは常に両国の文化交流に、大きな貢献をしつづけてこられました」と、渡辺貞夫さんに親しみを込めてコメントされた。

「ナベサダさんが(キャリアの初期の1967年に)出された記念すべき作品『ボサノヴァ67』は、日本におけるボサノヴァの普及に記念碑的な役割を果たしました。その後も現在に至るまで活躍、70枚以上のアルバム作品を発表されていますが、そのうち13枚はブラジル音楽を専門に扱った作品です」(アンドレ コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下)

渡辺貞夫さんがブラジル音楽に取り組んだ作品には、「ナチュラリー」(15)、「オウトラ・ヴェス ~ふたたび~」(13)、「ミーニャ・サウダージ」(00)、「ヴィアジャンド」(98)、「In Tempo」(94)、「A NIGHT WITH STRINGS 2」(93)、「MADE IN CORAÇÃO」(トッキーニョとの共演作、88)、「Elis」(88)、「ブラジルの渡辺貞夫」(68)、「MUSIC BREAK」(67)、「BOSSA NOVA CONCERT」(67)、「BOSSA BEAT COLLECTION」(67)、「JAZZ SAMBA」(67)、「BOSSA NOVA ’67」(67)、「JAZZ&BOSSA」(66)などがあり、ライヴ・アルバムまで含めると15作以上になる。

また、渡辺貞夫さんは長年にわたるキャリアの中で、ジャキス・モレレンバウン、セーザル・カマルゴ・マリアーノ、トッキーニョなどのベテラン勢からファビオ・トヘス、ファビアーノ・コッツァ、ウィウソン・シモニーニャなどの気鋭や若手の音楽家、オロドゥンの子ども打楽器隊など、幅広い世代、ジャンルの音楽家と積極的に共演。ブラジル音楽の多彩な魅力を日本に紹介しつづけた。

さらに自身のジャズ作品のみならず、ブラジル人ボサノヴァ歌手のソニア・ホーザ(ローザ)のプロデュースや、「恋のスノー・ドルフィン」「スノー・ドルフィン・サンバ」(共にユキとヒデ)、「白い波」(ヒデとロザンナ)の作曲などを通じて、幅広い層にボサノヴァを普及させることにも大きな貢献を果たしている。

「ご存知の通りボサノヴァはブラジルを代表する音楽のひとつですが、ナベサダさんをはじめ外国の音楽家の活躍を通じて世界中に普及していきました。ブラジル音楽の普及に果たしてこられた大きな役割に対して心から感謝いたします」(アンドレ コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下)

渡辺貞夫

リオ・ブランコ国家勲章を受章した渡辺貞夫さんは、自身とブラジル音楽との関りについて語った。

「小野リサさんのお父さんの敏郎さんがサンパウロでレストランをやっていまして。1968年にニューポート・ジャズフェスティバルに参加したときに、小野さんに、せっかくだからサンパウロにも寄らないかと誘われたのが、初めてブラジルで行った演奏でした。滞在中、毎晩のようにサンパウロのローカル・ミュージシャンとセッションをしました。このときのインパクトが大きく、すっかりブラジル音楽にはまってしまいました」(渡辺貞夫さん)

ジャキス・モレレンバウンやリー・リトナーなど、長年にわたり親交を育んできた音楽家たちへの感謝を述べたのち、「カリニョーゾ」と「ポル・トーダ・ア・ミーニャ・ヴィーダ」の2曲をサックスで演奏した。

「僕の音楽生活の中で、本当に素晴らしい音楽家たちと出会って、僕の音楽生活を充実したものにしてくれました」(渡辺貞夫さん)

(写真・文/麻生雅人)
写真上は11月19日(木)、駐日ブラジル大使公邸にて。リオ・ブランコ国家勲章を受章した渡辺貞夫さん(右)と乾杯するアンドレ コヘーア・ド・ラーゴ大使閣下(左)