ブラジル人が一緒に働きたいと思う上司像とは?(1)

2015年 12月 1日

総合評価が高いリーダー、つまりは『よい上司』がもつ資質のうち、高く評価されている項目は下記のとおりとなった

<ブラジル>
1.権限委譲できる
2.戦略的である
3.指示が明確である
4.活力がある
5.責任感が強い

<日本>
1.戦略的である
2.発想が豊かである
3.謙虚である
4.人の話を聞く
5. 権限委譲できる

<15か国(地域)平均>
1.権限委譲できる
2.責任感が強い
3.多様性を重んじる
4.戦略的である
5. 指示が明確である

『理想の上司』イメージと現実の『よい上司』から想像できる人物像には、かなり差があることがお分かりいただけると思う。ブラジル、日本のみならず、他の13か国(地域)でも同様の差異が出ている。理想イメージ通りにふるまっても周囲と何かかみ合わず、部下から辛い評価が出るという悩みは、どの国にリーダーにも当たり前に見られるものだったともいえるのではないか。

現実の上司を評価する際の資質について、ブラジルのランキングで出てきた上位5位までの資質項目は、順位は異なりつつも、15か国(地域)平均と4項目が重なっている。国別でみるとインド、ロシア、イギリスが3項目ブラジルと一致している。

一方日本では、「戦略的である」ことと「権限委譲ができる」ことは15か国(地域)平均の上位5位と重なるものの、「発想が豊か」「謙虚」「人の話を聞く」ことを評価の基準として重視している点は日本の特性を表していると言えるかもしれない。

ちなみに、日本のランキングで出てきた資質項目上位5位と似た項目がランクインしているのは中国で、順位は異なるものの5項目のうち4項目が日本と一致している。

上司の評価を上げる項目としてブラジルと日本でランクインしてこなかった項目で、15か国(地域)平均で上位5位にランクインしているのが「多様性を重んじる」資質だ。

この資質はブラジルでは12位、日本では10位。多民族国家のブラジルよりも日本のほうが上位に出ている。

ブラジルでは文化的な出自はさておき、「みんなブラジル人」であると認識している人が多いからなのか、多様性対応があまりにも当たり前過ぎて差別化の要因にならないのか、掘り下げてみたいポイントである。

今回の調査の意図について、CRIの担当リサーチャー・古井伸弥氏はこう語っている。

「人は、相手や環境に合わせることなく、過去に成功してきた自分流のリーダーシップを踏襲してしまいがちです。同じ国で同じ文化的背景を持つ人や組織に対しては自分流が通じるかもしれませんが、グローバルな環境では必ずしも通用しません。今回の分析結果が、リーダーの皆さんに、自らのリーダーシップを振り返るきっかけを提供できれば幸いです」(古井伸弥氏)

ちなみにこの調査結果はブラジルでも注目を集めているという。すでに現地有力経済紙「ヴァロール・エコノミコ」電子版(2015年8月19日づけ)や、人材開発専門誌「メリョール」2015年11月号(edição 336)などで取り上げられている。

CRIの調査結果はランキングというわかりやすい形式をとってはいるものの、組織ごと・階層ごとなど多少の濃淡はあるようだ。

「今回の分析結果は『有効なリーダーシップは国によって異なる』ということを示していますが、我々はある国で有効なリーダーシップがその国の人すべてに有効だとは考えていません。国によって有効なリーダーシップが異なるのは、各国の歴史的、文化的背景や価値観が異なるからだと考えられますが、人もそれぞれ異なる過去や考え方を持っているわけですから、それぞれが異なるリーダー観を持つと考える方が自然でしょう」(古井伸弥氏)

全般的な傾向を頭に置きつつも、ステレオタイプ化せず、目の前の部下を見つめることが、部下に「一緒に働きたい」と言わしめる最大のポイントかもしれない。

Part 2ではCRI『組織とリーダーに関するグローバル価値観調査』第2回レポート『リーダーシップの類型による国際比較』から、ブラジルで機能しやすいリーダーシップとそのメリット・デメリットを取り上げたい。

(文/麻生雅人)

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