安倍首相・テメル大統領による共同記者発表の要旨

2016年 10月 19日

安部首相とテメル大統領

ブラジルのミシェウ・テメル大統領は10月19日(水)、安倍晋三首相との首脳会談の後、共同記者発表を行った。共同記者発表の要旨は次のとおり。ブラジル大統領府が公表した動画を基に共同記者発表の要旨を作成した。

<安倍晋三首相>

「テメル大統領が就任されてから、2ヵ月足らずのはやい時期に訪日されたことを心から歓迎いたします。日本とブラジルは、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有し、そして国際社会において大きな責任を持つ重要なパートナーであります。

ブラジルには約200万人の日系社会が存在し、日本にも約17万人の在日ブラジル人コミュニティがあります。こうした強固な絆に支えられているのが、日ブラジル関係であります。

本日、テメル大統領と、両国の関係を一層前進させる様々な方途について、大変有意義な意見交換を行いました。

ブラジルは2億人を超す巨大市場であります。自由・開放的な経済政策により、この巨大市場がいっそう魅力的なものになります。

日本は、テメル政権が掲げる規制改革、インフラ整備、競争力強化を歓迎します。

ブラジルは日本にとってチャンスです。とくにインフラ分野で大きな投資機会があります。このような観点から今般、インフラ整備協議の設立に合意できたことを大変うれしく思います。この協議も活用し、両国官民が協力し、ブラジル側の投資環境の改善の努力と相まって、経済関係をいっそう強化していきます。

日ブラジル関係が、政治、安全保障、農業、科学技術、インフラ、エネルギー、教育、スポーツといった幅広い分野に拡大していることも、関係が進展している証左です。今回それぞれの分野の協力をさらに進めていくことで一致しました。

また、国際社会の諸問題についても、幅広く意見交換し、とりわけ、地域の平和や安全の確保には、東シナ海、南シナ海を含む海洋における航行の自由の確保や、法の支配の尊重が重要であることについて話しました。

また、テメル大統領からは、天野IAEA事務局長の再選について、ブラジル政府としての公式な支持表明を頂いたことに感謝いたします。

今後も、テメル大統領と手を携えて、日本とブラジルの協力関係を発展させていきたいと思います」

安倍首相とテメル大統領

<ミシェウ・テメル大統領>

「安倍総理の温かいお言葉に心から感謝の意を表明したいと思います。ブラジルの大統領が訪日するのは11年ぶりということでございますが、わたくしも就任してから2ヵ月足らずですが、日本をトップの訪問国のひとつに選び、やってまいりました。そして、訪問は実質的には本日1日だけでありますが、午前中には天皇陛下にご引見を賜り、お昼の時間には経団連に参りまして、ブラジルと日本の財界人の集まりに出席いたしました。

午後は総理大臣官邸において、安倍総理閣下に、このようにお迎えいただきまして、1日のみの訪日でありますが非常に実りが多く、また、日本のみなさまの歓迎ぶり、暖かさに非常に感銘を受けております。

総理とのお話につきましては、ブラジルが新しい国になったということを申し上げ、経済成長の路線を再度、歩み始めるということをご報告し、そのためには財政均衡の療治をしなければいけないということを申し上げ、そして、最優先の課題としましては、現在ブラジルで失業率が高いことから、雇用を促進する必要があるということを申し上げました。

ブラジルが新しい国になったということは、法律の面でも、司法の面でも安定し、法治国家としてあらゆる保障を兼ね備えた国になりつつあるということであります。

政府の規制につきましても、これまでとは変わった方法で、より弾力的にやっていくことを考えております。現在、そういった路線をブラジル政府として歩み始めたということをご報告いたしました。

そのためには、ブラジルはこれまでにも増して貿易を促進し、ブラジルに対する信頼を回復させ、外国からの投資を再度、積極的に行っていただきたいというふうに考えております。

とくに日本企業におかれましては、700社に及ぶ日本企業がブラジルに進出しておられ、貿易関係、メーカーとして活動をしておられ、これまでのブラジルへの投資をさらに拡大し、新たな投資もお願いしたいと考えております。

日本の財界人とお話をして、日本企業の方々は、ブラジル政府が推し進めている投資に関するパートナーシップの計画に非常に大きな関心を寄せておられ、参加を真剣に検討したいという声をお聞きすることができました。

これまでの日伯関係の貿易を、ますます促進させる意味において、一次産品のみならず、より多くの付加価値のついたブラジルの産品を日本に輸出したいという希望をもっています。

総理におかれましては、オリンピックの閉会式にも出席していただきましたが、ブラジル政府としては、次のオリンピック開催国の日本に対して、オリンピックとパラリンピックの旗を成功裏に伝達することができたことは、非常に大きな喜びであります。

総理の言葉にもありましたように、ブラジル政府といたしましては、国際原子力機関の天野之弥事務局長の再選に、ブラジル政府としてサポートをお約束いたしました。

人権、G20、国連安保理のメンバーの改正、G4など様々なことを話し、合意に達することができました。

グローバルな戦略パートナーシップという観点から、日伯間の合意に至ることができ、民主主義、法治国家として、これからブラジルはやっていくつもりであり、ブラジル外交は、ブラジル国民と相互利益のためにあるということをあらためて申し上げ、結びとさせていただきます。ドウモアリガトウ」

(文/小島寛明、写真/Beto Barata/PR)
写真は10月19日(水)、東京。式典でのテメル大統領と安倍首相