ブラジルの泥棒、SNSのメッセージに説得されて盗品を返却
2016年 11月 2日「拝啓、泥棒さん。盗んだ品を返して」…。SNSを通じて投げかけられたメッセージに泥棒が応じて、盗んだ品を持ち主に返すという出来事が、ブラジルで話題になっている。現地メディア「G1」(10月25日づけ)が伝えている。
ブラジルでは、泥棒に盗まれた盗品が返ってきたというニュースをときどき耳にする。細かい事情は個々で異なるものの、お金に困って盗みを働いたものの、被害者の思いを何らかの理由で泥棒が知り情にほだされて盗品を返すケースが多々あるようだ。果たして今回のケースは…。
10月25日(火)の昼前ごろ、弁護士のカルロス・ジュンギさんは受け取った見知らぬ人物からの一本の電話は、22日(土)にカルロスさんが盗まれたノートパソコンを盗んだ張本人からのものだった。
盗難事件が起きたのは22日(土)の明け方、セルジッピ州アカラジュー市南部イナーシオ・バルボーザ地区。パウロ6世大通にある薬局の駐車場に車を止めていたカルロスさんと妻のマヤラ・ヘイスさん夫妻は、40分ほどして車に戻ると、窓ガラスが割られていることに気づいた。
被害にあったのはノートパソコン、外付けハードドライブ、スマートフォン、メガネ、現金約500レアル。財布からは現金のみが抜き取られ、書類は残されていたという。
夫婦は、地元の警察署に盗難届の手続きをする前に、SNSを通じて犯人に呼び掛けることも思いついた。
「もし犯人に私たちの思いを理解してくれる気持ちがあれば、私の仕事のためにどうしても必要な(データが入った)外付けハードディスクだけでも返してもらえないかと考えたのです」(カルロス・ジュンギさん)
カルロスさんはSNSにて丁寧な文面で「ノートパソコン、スマホ、現金のことでも、車の窓ガラスを取り替えなければならないということでもなく、仕事に関する情報の入っているハードディスクについてお話ししたいのです。ハードディスクだけでかまいませんので返してもらえないでしょうか」と訴えた。
またこのメッセージは「ストリートでのセキュリティが機能していないから盗まずにいられないのですよね」と、警察への皮肉が込められているほか、「ハードディスクを返していただけたら私はまた仕事にいそしむことができ、稼いだお金で新しいノートパソコン、スマホを買います。そうすればまたあなたもそれを盗むことができますよ」とユーモアも忘れておらず、「G1」や地元のテレビ局などでも話題となっていた。メッセージには、600名以上からの書き込みがあったという。
ところが、このメッセージがSNSに掲載された三日後の25日(火)、本当に、犯人からカルロスさんに盗んだ品を返すという電話があった。
SNSやテレビを通じてカルロスさんが大変困っていることを知った泥棒は、バイクタクシーを使って盗んだ品をカルロスさんに返却したという。
「残念ながら、ハードディスクは他の人間が持ち去ってしまったとのことで戻って来ませんでしたが、それでも、家族の記録をはじめとする個人情報や、2009年以降の仕事のデータなどの情報が入ったノートパソコンは返ってきました。仕事のファイルは問題ありません」(カルロス・ジュンギさん)
泥棒は盗品の返却に関する連絡をしたとき、カルロスさんに謝罪したという。
(文/加藤元庸、写真/Reprodução/Internet)