テメル政権の経済改革。期待と不安の交錯する2017年
2017年 03月 20日ドラスチックな財政改革と競争経済への移行という、困難ではあっても避けては通れない、ブラジルの宿痾ともいうべき構造問題に果敢に切り込んでいく姿勢は評価してよいが、その成否はテメル大統領が任期(~ 2018 年末)を全うできるかにかかっている。
最後に、その可能性について整理しておきたい。
ペトロブラスを舞台とする汚職捜査の収束が見えないなか、汚職スキャンダルで主導的役割を果たしたラ米最大手の建設会社オデブレヒト(オーデブレヒチ)社が12月初に検察と過去最大規模ともいわれる司法取引に合意、前CEO をはじめ77 人の役職員が贈賄の全容について供述を行うこととなった。
すでに一部がリークされているが、連邦最高裁は1月末にこれら証言を有効と認定した。有力政治家のほとんどを網羅していると見られ、潜在的に大きな破壊力を持つ。
2014年大統領選挙のキャンペーン資金(の不正の有無)を調べている高等選挙裁判所(TSE)が同選挙の結果そのものを無効とするカードを切るか否か、上半期中にも最終判断を下す。司法取引での幹部の証言とTSEの判断、この二つがテメル政権にとって上半期最大のリスク
といえよう。
任期の残余期間が2年を切ったこの時点で退陣を余儀なくされた場合の新大統領の選出は国民の直接選挙ではなく議会が大統領を選出することになっているが、展開次第では再び大きな政治空白が生まれることが懸念される。
決して安泰とはいえないテメル政権は、改革推進と政権維持の厳しい板ばさみ状態で国家運営を強いられるが、2月初の上下両院議長選挙(任期2年)で両院ともテメル支持派が議長に選出されたことは、今後の法案の議会審議において大きなプラス要因にはなろう。
2018年10月の大統領・連邦議会選挙が近づくにつれ現在議会の過半数を占める連立与党の議員も不人気な政策から距離をおくようになる可能性がある。その意味で少しでも早く目に見える成果(年金改革の成立等)を挙げることが肝要であり、時間との競争ともいえる(2017年2月6日)。
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(文/岸本憲明、記事提供/日本ブラジル中央協会、写真/Alan Santos/PR)
写真は3月15日、ブラジリアにて、テメル大統領(一番右)