【コラム】サンフランシスコ河中流域における灌漑農業の発展

2019年 12月 17日
サンフランシスコ河流域で栽培されるブドウ(写真/MDA)

5: サンフランシスコ河中流域の灌漑農業

ソブラジーニョ人造湖の下流に新しく拓かれた耕地は農業省の管轄の元、8つの灌漑耕地プロジェクトが造成され地元住民に販売された他、南伯からの移住者などにも分譲された。

中でも、コチア組合などを通して移住してきた日系人の果たし た功績は絶大である(土壌塩性化の予防 策、ぶどうの強制剪定による収穫時期の調整と生産性の向上など)。

移住者の流入によりペトロリーナ・ジュアゼイロを合わせた人口は1980年の 20万人から現在では56万人までに成長している。これは鳥取県と同じくらいの人口規模だ。

米国をモデルとして灌漑農業の開発が進められてきたことから、「ブラジ ルのカルフォルニア」と呼ばれることが ある。灌漑区画は約5万ヘクタールあり、その大部分においてマンゴーとブドウ(生食用)の生産が行われている。

2016 年におけるマンゴーの生産量は 21万トン、ブドウは22万トンであった。 そのうち7割近くは海外に輸出されており、ブラジル全体の輸出のおよそ9割はこの地で生産されたものである。

マンゴーやブドウを運ぶ航空貨物便はペト ロリーナからヨーロッパのルクセンブル グに直行する。主な輸出先はヨーロッパ、 北米であり、最近では韓国やロシアにまで輸出を始めている。

自然環境的にはセ トン(半乾燥地帯)に属しており、年間降水量が400-500mmと少なく、大 西洋に面した州都レシーフェと比べると6分の1程度でしかない。晴天の日が多 く日照時間も長いので、マンゴーなどの 熱帯果実の生育には大変適している。

果実の生育に必要な水は、降水量の多い南部のミナスジェライス州の水源から運ば れてくる。要するに、サンフランシスコ河中流域では、セルトンの「太陽の恵み」 とミナスジェライスの「水の恵み」をいいとこ取りすることによって、熱帯果実 の一大フロンティアとしての目覚ましい 発展を遂げることができたのだ。

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