日・ブラジル経済フォーラムでルーラ大統領がスピーチ
2025年 03月 27日
3月26日(水)、東京・ホテルニューオータニで「日・ブラジル経済フォーラム」が開催され、ルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領をはじめブラジル政府の閣僚、議員、企業家などが参加した。
両国の様々な分野の企業によるセッションが行われた後、石破茂総理、そしてルーラ大統領がスピーチを行った。
冒頭からジョークで聴衆の心を掴んだルーラ大統領は、スピーチが進むにつれて語り口に熱量が溢れ、会場全体をその想いで包み、スピーチの随所で聴衆から拍手を受けた。
ルーラ大統領のスピーチは以下。

わが友である石破茂日本国総理大臣、そしてここにご列席の日本政府関係者の皆様にご挨拶申し上げます。
親愛なる安永竜夫・三井物産会長かつ日本ブラジル経済委員会委員長、ダヴィ・アウコルンブレ国民会議及び連邦上院議長、ウーゴ・モッタ下院議長、そしてここにご列席のブラジルの議員全員に挨拶を申し上げます。
マウロ・ヴィエイラ外務大臣、そしてここにご列席のブラジルの大臣の皆様にご挨拶申し上げます。
親愛なるマルシオ・エリアス・ホーザ開発・産業・商業・サービス省事務局長、ジェラウド・アウキミン副大統領。親愛なるタルシアーナ・メデイロス・ブラジル銀行頭取。親愛なるジョルジ・ヴィエイラ・ブラジル輸出投資振興庁長官。そしてエドゥアルド・エウジェニオ・ゴウヴェア・ヴィエイラ・ブラジル全国工業連盟(CNI)副会長、ここにご列席のブラジル企業の皆様にご挨拶申し上げます。
今日は、私にとって幸せな日であり、悲しい日でもあります。幸せなのは、ブラジルと130年も外交関係を結んでいる国で、産業・テクノロジー、農業の面でブラジルの現在の発展の期間に多大な貢献をされた国である、日本にいるからです。
私たちブラジル人は、日本がブラジルのセラードで、ブラジルが食糧を輸出する最も重要な農業国の一つになれるように驚くべき変革を起こしたことを、決して忘れることはできません。
悲しいのは、2026年ワールドカップの南米予選でブラジルがアルゼンチンに1対4で負けたからです。そしてまた悲しいのは、私はそれほど背が低くないのに、背が低いと思われ、ここに背を高く見せるための椅子が置かれているからです。

さて、親愛なるみなさん。
私が3度目の大統領選挙に出馬したとき、ブラジルを政治的に正常で民主的な礼節を持った国にすることが重要だと言いました。当時私は政治的安定が必要だと言いましたが、それは、下院議長、上院議長、ホドリゴ・パシェコ元上院議長、アルトゥール・リラ元下院議長を含む数名の議員が出席したこの会合によって示されています。
私は経済的安定が必要だと言いました。そして私の政権の最初の2年間で、ブラジルは成長し、世界を驚かせました。なぜなら、ブラジルの2023年の成長の予測は0.8%だったのに対し、実際には3.2%成長したからです。2024年には1.5%の成長が予測されていましたが、実際には3.4%の成長となりました。そして私は、2025年にはさらに成長することを石破総理に保証します。なぜなら、ブラジルは発展途上国の地位を脱し、最終的に先進国になる必要があると私は考えているからです。
法的な安定性。そして我々は、ブラジルで40年以上も期待されていた税制改革政策を驚くべき形で可決しました。この政策は上院と下院の全面的な支持を得て承認されたもので、外国人投資家とブラジル国民に、より利便的でと法的な安定を保証することができました。だから私は幸せです。
また、我々は社会的安定性を保証することを約束し、そのためにブラジル史上最も重要な社会的包摂政策と、ブラジル史上最も重要な信用政策を実施しました。
私は石破大臣に、ブラジルの歴史上で、これほど多くの融資が貧困層、労働者、そして大企業や農業関連企業にも提供されたことはかつてなかったと申し上げることができます。なぜなら、ブラジル銀行が強力な活動を再開したからであり、開発銀行が強力な活動を再開したからであり、連邦貯蓄銀行が強力な活動を再開したからです。
そして私は理想に基づいています。日本の企業家の皆さんが私の理想に耳を傾けてくださることが大切です。少数の人々の手にお金が集中しすぎると、貧困が続くことになると私は言いました。そして、多くの人々の手に少しのお金が渡るということは、所得の分配、富の分配を意味し、それが私たちの国を成長させ、私たちがこれまで国内で行ってきた最も重要な雇用創出政策でもあり、ブラジル史上最大のインフラ投資政策です。だから私は日本のみなさんにブラジルへの投資を呼びかけたいと考えています。ブラジルは1908年に日本のみなさんにとって安全な港であったように、2025年にはパートナーシップ、合弁事業、日本からの投資を我が国に呼び込みたいと考えています。
2008年にブラジルで何人かの日本の企業家と面会したことを覚えています。当時彼らはガソリンに3%のエタノールを混ぜるつもりだと言っていたが、それは実現できませんでした。欧州は10%の混合を約束しましたが、これも実現しませんでした。そして今、日本が10%の混合が可能だと言ったとき、私はそれを信じていますし、それが実現することを願っています。なぜなら、それは我が国の気候問題にとって革命となるからです。
私はまた、投資家に対し、予測可能性を保障する必要があると言いました。誰も、毎日のように法律が変更され、法令が変更され、条例が変更されることに驚かされたくありません。
ゲームのルールは、サッカーの選手権試合のルールと同様に確立されていばなければなりません。誰もが、国の労働者に、企業家に、政治家に対して私たちが抱かなければならない敬意を払うことなく、しばしば無責任な政府の行動によって不利益を被ることがないように、何が起こるのかを知る必要があります。
そのため、私は5人の労働組合員からなる代表団も同行させました。これは私の外遊における貴重な機会の一つで、ブラジルの労働組合と日本の労働組合の間で会議のためです。
したがって、親愛なる皆さん、私たちが日本と新たな戦略的パートナーシップを強化していることを嬉しく思います。私たちは売ることを望み、買うことを望みます、何よりも日本企業とブラジル企業が連携して共に成長していくことを願っています。
私は皆さんに、こういいたかったのです。
50年前、私はトヨタの従業員の招待で初めて日本を訪れました。
今回は私にとって5回目の訪問であり、大臣、国会議員、企業家、労働組合員を伴っての再訪問で、社会的、経済的、政治的なつながりを深めます。企業、銀行、大学、その他の機関の間で約80件の協定を締結するほか、より幅広い分野で10件の協力協定を締結する予定です。
しかし、重要な課題が残っています。近年、両国の二国間貿易は減少しています。 2011年の170億ドルから2024年には110億ドルに減少しました。私たちの関係には何か問題があり、これを改善する必要があります。
このビジネスフォーラムは、この減少を元に戻すためのチャンスです。ますます複雑化する世界の中で、歴史的なパートナー同士が協力して世界経済の不確実性と不安定性に立ち向かうことが不可欠です。
日本とメルコスールの経済連携協定の締結に向けて前進する必要があると私は確信しています。
両国は、保護主義的な政策を講じるよりも連携によって多くの利益を得ることができます。ブラジルと日本の間でビジネスビザと観光ビザの相互免除を維持することは、この方向へ向かう重要な一歩です。私たちの関係の将来には、投資の増加も見据えられています。
ブラジルはこの先も、世界銀行の予測に反するでしょう。過去2年間で、我が国のGDPは予想を上回り、3%以上成長しました。2025年に、私たちは再び世界を驚かせるでしょう。日本との協力によって驚かせたいのです。
私たちは、歴史的な税制改革を承認しました。これはプロセスを簡素化し、コストを削減し、企業にさらなる予測可能性と効率性をもたらします。私たちは、何百万人ものブラジル人に利益をもたらし、家庭内の消費を増やし、経済を動かし続けるために、所得税の不公平を是正しています。
セラード農業開発プログラム、PRODECERを通じて、日本はブラジル中西部の生産性の向上に貢献しました。現在、私たちは世界第4位の食料生産国です。ブラジルには、国際市場に組み込まれた強力で広範な工業団地もあります。
エンブラエル社は世界第3位の民間ジェット機メーカーとなり、日本に重要な市場を持っています。日本最大の航空会社ANAは本日、エンブラエル社からE-190ジェット機を最大20機購入することを発表し、合意に達した。エンブラエル社の航空機は大変高品質であると、私は石破総理にお伝え出来ます。20 機購入した国はもう少し購入することができます。もしかしたら日本のすべての企業がエンブラエル社の航空機で運行できるようになるかもしれません。

ブラジルの産業への日本の参加には長い歴史があります。特に自動車産業において。
1958年、トヨタが日本国外で初めて進出したのがブラジルでした。先週、私はブラジルにあるトヨタの工場の一つを訪問しましたが、そのとき同社は、2030年までに20億ドル以上の投資を行うと発表しました。
これにより、エタノールとガソリンのあらゆる混合燃料で走行可能な、電気自動車やハイブリッド車の生産が促進されるでしょう。ブラジルは議会で承認されたブラジル・未来の燃料法に沿って、ガソリン中のエタノールの割合を27%から30%に増やし、ディーゼルでは2030年までに20%に達する予定です。日本がエネルギー基本計画に基づき、バイオエタノールの割合を2030年までに最大10%、2040年以降は最大20%まで引き上げる予定であることは非常に前向きなことです。
脱炭素化は選択ではありません。必要不可欠なものであり、そして大きなチャンスです。この目標達成には民間部門の関与が不可欠です。ブラジルは、化石燃料へのグローバルな依存を減らす上で常に同盟国であり続けるでしょう。
再生可能エネルギーは、エネルギーマトリックスの 50% を占め、ブラジルの電力マトリックスの 90% 以上を占めています。
私たちは正しい変革を続けます。11月にはブラジルはアマゾン地域の中心でCOP30を開催しますが、石破総理にもCOPに参加していただき、誰もが話題にしているのに実際には知る人が少ないアマゾン地域の中心にコンタクトしていただきたいと思います。
そして我々は、これまで開催されたあらゆるCOPの中で最も重要なCOPを、大きな責任と冷静さをもって、狂信的な愛国主義に偏ることなく、1.5度を超えてはならないとわかっている地球の温暖化を制御するという問題について、より真剣な議論を伴って開催します。
これは冗談ではなく、科学者たちの問題でもなく、世界中で実際に起こっている現実であり、世界中の国々が話し合う必要がありますが、京都議定書が尊重さず、パリ協定の議論がないがしろにされ、2009年のコペンハーゲン合意で、森林を保全するために富裕国が年間1000億ドルを拠出すると約束したにもかかわらず、今日まで履行されていません。
木々が織りなす森林はとても美しいけれど、それぞれの木の下には労働者、先住民、採掘者、ゴムの樹液採取者、農村労働者がいることを想うことが大切です。そして、私たちは森林を保護したいと望むのならば、これらの人々が生活し、世界中のあらゆる国で誰もが望むような物質的な財産にアクセスできるようにするために持続可能性を提供する必要があります。
我々はすでに我が国のカーボンニュートラルを提示しており、ベレン(で開催されるCOP)に向けて、気候に対する意識を高めるための世界的な倫理的評価の最前線に立っています。私たちは2030年までにアマゾンの森林破壊をなくし、近隣諸国と協力してあらゆる種類の国際犯罪に対する戦いを強化します。2024年には、アマゾン地域は過去15年間で最大の森林破壊削減を達成しました。
私たちは、投資家のみなさんにとってブラジルを優良な選択肢として確立させる社会的、経済的、法的、環境的、政治的な安定を推進しています。
親愛なる皆様方、我が親愛なる総理、私は日本が2025年に大阪で開催される万国博覧会の成功を心からお祈りいたします。万国博覧会では、ブラジルの輸出投資振興庁(APEX)が6か月間日本に滞在し、議論を行い、ブラジルが行う能力のある可能なことをお見せします。
。同時に、このフェアは世界中から何百万人もの人々を引き付けるはずであり、私たちブラジル人は、ブラジルの一部を世界に示すためにそこに参加したいと考えています。同時に、この祭典は世界中から何百万人もの人々を呼び込むでしょう。私たちブラジル人は、ブラジルの一部を世界に示すためにそこに参加したいと考えています。
私たちは大阪万博を活用して、持続可能で多様性に富み、繁栄するブラジルを世界に紹介していきます。我々は正しい道を歩み、共通の歴史を尊重し、この長く成功に満ちた旅路に新たな章を書き加えていると確信しながら、私は明日日本を出発します。
親愛なる友である石破総理、
私のスピーチを締めくくるにあたり、世界のすべての大統領、すべての首相、そしてすべての民主主義国民が指針とすべき3つの懸念事項があることを申し上げたいと思います。ワクチンさえ認めず、気候の不安定性さえ認めず、政党や労働組合なその他も認めない否定論者の極右が選出されたことで、地球上の民主主義は危険にさらされています。そして政治を否定することは人類に何の利益ももたらさないでしょう。
実際、否定論者は京都議定書に従うことすら望んでいません。
私たちが確実に、そして強力に守らなければならない2番目のことは、自由貿易に関する問題です。
我々は保護主義を擁護する立場に戻ってはいけません。我々は第二の冷戦を望んでいません。私たちが望むのは、民主主義、経済成長、富の分配の流れの中で、私たちの国々を確かな形で確立させる自由貿易です。
総理、我々がもう一つ忘れてはならないのは、多国間主義の保護です。国同士の関係は非常に重要です。政治関係は非常に重要です。大学間の関係は非常に重要です。科学技術の経験の交換は非常に重要です。労働組合間の関係は非常に重要です。政党間の関係は非常に重要です。そして、何よりも人と人とのつながりは、とても大切です。なぜなら、私たちはこれ以上の壁を望んでいないからです。私たちはもう冷戦を望んでいません。私たちはもう無知の囚人になりたくありません。私たちは自由を求めています。自由の囚人でありたいのです。
ですから、日本の皆さんにハグを贈ります。企業家のみなさんにハグを贈ります。
そして石破総理に、大いなるハグを贈ります。
ご清聴をありがとうございました。
(文/麻生雅人)
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