ブラジル北東部地方では、カーニバルよりも盛り上がる(?)「6月祭り」とは

2025年 06月 17日

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6月祭りのアハウアウ(広場のお祭り)で行われるクアドリーリャ(結婚式を模したダンス)(写真/Marcello Casal Jr/Agência Brasil)

ブラジルで行われる6月祭り(フェスタ・ジュニーナ)の伝統は、カトリック文化を持つヨーロッパで生まれ、植民地時代にポルトガル人によってブラジルにもたらされた。(この祭りでは)聖アントニオ、聖ジョアン、聖ペドロ、聖パウロにまつわるカトリックの厳粛な祭日を祝う。

焚き火、ケルメッシ(バザーなど教会で行われるフェスタ)、クアドリーリャ(スクエアダンス)を伴うこの祭りは、情緒、宗教上の教え、そして何世紀にもわたる民衆の歴史にまつわる物語を伝える。

ブラジルのパラナ州教皇庁カトリック大学(PUCPR)の神学博士アナ・ベアトリス・ヂアス・ピント教授によると、これらは単なるカトリックの典礼上の記念日ではなく、信仰、食事、ダンス、情緒的な記憶が混ざり合った集団的な体験だという。

「それぞれのアハイアウ(広場で行うお祭り)、それぞれの赤々と燃える焚火、それぞれの信仰と共にある共感は、本を通してではなく直接伝えられる生きたカトリックの教えを表わしています。習慣的な行為、味、リズムを通して、人々の宗教性の中に皆が共に感じる世界を作り出し、私たちの文化について多くを語ります」(アナ・ベアトリス・ヂアス・ピント教授)

教授は、焚き火の伝統は、妊娠中の従妹であるイザベウとマリアの間で交わされた一つの約束から生まれたと説明する。ふたりは、聖ジョアンの誕生の際queimar energiasに、イザベウがマリアに焚火で知らせると約束をしていた。

「こうして、亡くなった日ではなく生まれた日に祝われる唯一の聖人の誕生を祝うため、ブラジル各地で行われるケルメッシで今も焚火をたく伝統が生まれたのです」(アナ・ベアトリス・ヂアス・ピント教授)

聖ジョアンの焚き火は、暗闇の中に生命の光をもたらし、人生から喜びを奪うあらゆるものを祓い、火で焼き尽くすという期待を象徴していると教授は説明する。また、このお祭りで、焚き火の上を飛び越える習慣があるのは、お清め、再生、そして願いの成就を象徴しているという。

「ブラジルでは一般的な習慣となり、子どもたちが歌うの中で『焚火を飛び越えろ、イオイオ』と歌われています。この行為は、ネガティブな経験やエネルギーを焼き尽くし、人生にとって良くないものを灰にするという“お清め”の代表的な例です」(同)

6月祭りのもう一つの伝統的なシンボルであるアハイアウは一時的かつ神聖な村の再現であり、教会、神父、結婚式、代父母が存在する。

「それはカトリック社会組織そのものの縮図であり、田舎者風のカラフルな衣装を着て歌ったり踊ったりする行為は、都市部に食料を供給している田舎の人々にオマージュを捧げています」(同)

アナ・ベアトリス教授によると、アハイアウで行われるブラジル発祥の結婚式を模したダンスである「クアドリーリャ」は、フランスの社交ダンスがルーツで、それが徐々にブラジルで振り付けされたダンスに変化していったという。

“パウ・ジ・セーボ”(獣脂などを塗り、立てられた丸太をよじ登るゲーム)も6月祭りのひとつの要素だ。「これを、罪を持った男根の象徴、悪魔的なものと捉える人がいる一方で、単に楽しいものとして捉える人もいます。しかし実際には“パウ・ジ・セーボ”は、6月祭りの単なる冗談めかした遊戯にすぎません。丸太の先端には、必ず聖アントニオの像、または誰もが欲しがる賞品が用意されており、それを手にできた者が勝者になります」(同)

教会で行う祭りを表わす“ケルメッシ”という用語は、フランドル地方(現在はベルギーの一部)で話されている言語に由来するフランドル語のケルクミスから来ている。このフェスタは慈善イベントとして始まり、時間が経つにつれて、ブラジルでもフォホー、ゲームの屋台、ビンゴ、ホットドッグなどが取り入れられるようになっていった。

「根本的にこれは、収穫への感謝と、人々がミサ、フェスタ、連帯、共生、友愛を望んでいることを祝うコミュニティの祭典であり続けています。都会と田舎のブラジル社会の形成の中に存在する価値観です」(同)

ブラジルの6月祭りは、トウモロコシ、ピーナッツ、ピニャォン(アラウカーリアという木になる実)、ブドウなど、いくつかの食べ物の収穫時期と一致している。これらの産品から、カンジッカ、パモーニャ、コーンケーキ、クラウ、ペ・ジ・モレッキ、茹でた、またはローストしたピニャォンなどの料理が作られる。ケンタォンやホットワインなどのポルトガルに起源を持つ飲み物は、心身を温めるという社会的機能として誕生した。

「これらはすべて、植え付けから収穫までの豊作を祝う感謝祭のひとつの形を表わしており、並べられたご馳走に感謝の念が託されています」(同)

アナ・ベアトリス教授は、6月祭りはデジタルコミュニケーションとソーシャルネットワークが存在感を持つ現代において、集団で行うな儀式、情緒的な記憶、ダンスや遊戯、そして典型的な冬の食べ物の収穫を祝うことを通して、帰属意識、喜びや希望を物語る正当な民衆の精神性を表現する場として、ますます重要になっているという。

「6月お祭りは、ブラジルの信仰的かつ文化的なイメージの象徴的な表現であり、多くの祈り、共感、そして 1年が半分に達したという象徴的な認識が込められており、私たち一人ひとりが過去を振り返り、感謝し、これから起こることへの祈りを、改めて強くします」(同)

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)