アマゾンの牛伝説祭りボイ・ブンバ、活動家エウニッシ・パイヴァにオマージュ捧げる

2025年 06月 29日

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パリンチンス市。ボイ・ブンバ祭が行われる専用スタジアム、ブンボードロモ(写真/Fernando Frazão/Agência Brasil)

ブラジルの北部や北東部で6月を通して祝われる“6月祭り(フェスタ・ジュニーナ)”。この季節、北部~北東部ではさまざまな名物出し物が行われるが、民衆の間に伝わる牛伝説を対話劇にした伝統芸能「ブンバ・メウ・ボイ」も、有名な祭りのひとつだ。

路上で繰り広げられる伝統的な対話劇のスタイルの「ブンバ・メウ・ボイ」は、マラニョン州がメッカだ。

一方、アマゾナス州パリンチンス市では、街の路上ではなく、ブンボードロモと呼ばれる、約3万5000人を収容できるお祭りの専用スタジアムで、大人数で構成された紅チームと青チームが毎年、歌劇のパフォーマンスを繰り広げて勝敗を競い合う「ボイ・ブンバ」と呼ばれる祭りを開催している。

パラー州とアマゾナス州の境にある島にあるパリンチンス市では、年に一度、島中が紅と青に染まる。

2~3月に行われるリオやサンパウロのカルナヴァウ(カーニバル)も、伝統的なスタイルで路上で行われるが、エンタテインメントとしてのカーニバルは、サンボードロモと呼ばれる専用スタジアムで、各団体が勝敗を競い合う。「ボイ・ブンバ」は、カーニバルでいえば後者のスタイルに近い形だが、実際に、「ボイ・ブンバ」とリオのカーニバルは交流があり、山車のデザインや製作でコラボレーションも行われている。

今年も、マナウス市から370キロ離れたアマゾナス州内陸部の自治体パリンチンスにあるブンボードロモでは、第58回パリンチンスフェスティバルが6月27日(金)からはじまっており、29日(日)まで開催される。

ガランチードと呼ばれる赤組と、カプリショーゾと呼ばれる青組が、毎年、テーマに沿った歌劇を繰り広げて勝敗を競いあう「ボイ・ブンバ」。

今年はガランチードがパフォーマンスの中で、ブラジルの軍事独裁政権によって殺害された元国会議員フーベンス・パイヴァの未亡人である弁護士エウニッシ・パイヴァに敬意を表した。現地メディア「G1」が伝えている。

今年の歌劇でエウニッシ・パイヴァを題材にすることを決定したのはガランチード・チームのオーナーであるJ.P.オリヴェイラ自身。エウニッシを描いた映画「アイム・スティル・ヒア」に感銘を受けてのことだという。

山車には、フーベンスとエウニッシの孫であるシコ・フーベンス・パイヴァと他の家族も参加し、ブンボードロモでのエウニッシへの追悼の意を捧げたパフォーマンスを感動的に見守った。

今年、カプリショーゾは「奪還の時」というテーマを掲げ、森の民衆の力強さを称え、ガランチードは「民衆の牛、庶民の牛」というテーマを掲げ、彼らの民衆的ルーツ、民衆の強さを称えている。

カプリショーゾは4度目の優勝を目指し、ガランチードは優勝の奪還と、33度目の優勝を目指す。

(文/麻生雅人)