米国、ブラジルのWTOへの協議要請を受け入れるも、「国家安全保障」を主張

2025年 08月 20日

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写真はルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ・ブラジル連邦共和国大統領。ブラジルは8月6日、米国が同国に課した50%の関税はWTOのルールに違反するとしてWTOに提訴していた(写真/Valter Campanato/Agência Brasil)

アメリカ合衆国は、ドナルド・トランプ大統領によって課された関税に関して、ブラジルが世界貿易機関(WTO)に提出した協議要請を受け入れた。 しかし米国は、ブラジル側の主張の一部が「国家安全保障」に関わるものであり、WTOの枠内では審査できないと主張した。

WTOの公式ページに掲載された回答の中で、米国政府は、ブラジル製品に対する50%の追加関税や現在進行中の通商調査は、米国の戦略的利益を守るために必要な措置であると述べた。

「これらの関税は、アメリカ合衆国が貿易相手国との間で抱える大規模かつ恒常的な年間貿易赤字という状況に起因する国家的緊急事態に対処するために必要であり、それが国家安全保障と経済を脅かしている」と米国政府は説明した。そして「国家安全保障に関する問題は政治的なものであり、WTOで解決できる性質のものではない」と文書は続けている。

<ブラジルによるWTOへの提訴>

今月初め、ブラジルはドナルド・トランプ政権によって課された50%の関税に対して、世界貿易機関(WTO)に提訴した。

この協議申請は、商業紛争の正式な開始を意味し、WTOが両国間の対話を仲裁し、合意形成を目指すプロセスである。60日以内に合意に至らない場合、ブラジルは「紛争解決パネル」の設置を要請することができる。

しかし、WTOの紛争解決メカニズムは近年機能不全に陥っており、今回の商業紛争は実質的には政治的・象徴的な意味合いが強い。

ブラジル外務省は、紛争がパネル審査に進展した場合、さらなる要素や新たな主張を追加する意向を示している。

<ブラジルの主張>

協議申請の中で、ブラジルは米国が「関税と貿易に関する一般協定(GATT)」および「紛争解決了解(DSU)」の規則に違反していると主張している。

ブラジル政府が挙げた主な論点は以下の通り:

  • WTO加盟国を平等に扱うという原則の違反:一部の貿易相手国を免除し、ブラジルのみを制裁対象としたこと
  • 関税率の上限超過:50%の関税率は、米国自身がWTOで合意した水準を超えている
  • 差別的な扱い:追加関税により、ブラジルに対して米国の公式な貿易譲許リストよりも不利な条件が課されている
  • 紛争解決手続きの不履行:ブラジルによれば、米国の一方的な制裁は、国際合意に基づく手続きに違反している

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)