中国は5月以降、米国産大豆の購入を停止。ブラジルは中国への輸出を拡大

2025年 10月 8日

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中国への輸出が増加したブラジル産大豆(写真/Jose Cruz/Agência Brasil)

米国と中国との間の貿易戦争は、結果的に中国へのブラジル産大豆の輸出を後押していると、ブラジルの現地メディア「G1」、「アジェンシア・ブラジル」などが伝えている。

「G1」によると、中国は、4月に、ドナルド・トランプ大統領による通商措置への報復として、この製品に20%の関税を課しており、5月には米国産大豆の購入を停止しているという。

米国の現行の収穫期は9月に始まりまっているが、新規収穫分の中国への販売は一切行われていないため、米国の農家による抗議を引き起こしているという。

アメリカン・ファーム・ビューロ・フェデレーションは、6月から8月の間、米国が中国にほとんど穀物を販売しなかった一方で、ブラジルが同期間に輸出記録を更新したと発表した。

「アジェンシア・ブラジル」によると、2025年1月から8月の間に、中国は米国産大豆をわずか580万トンしか輸入せず、前年同期の2,650万トンと比べてほぼ80%の減少となったという。

加えてアメリカン・ファーム・ビューロ・フェデレーションによる以下の報告を紹介した。報告によると、6月から8月の間、米国は中国向けに「事実上何も」大豆を出荷せず、また中国は翌年の収穫に向けた新たな購入を一切行わなかったとのこと。その一方で、ブラジルは同じ期間に中国市場へ7,700万トン以上の大豆を輸出した。同時期にアルゼンチンも輸出税を一時的に停止したことで大豆の販売を拡大し、輸出額が70億米ドルを超えた時点で再び課税を復活させたという。

「これは南米が市場を支配し、米国の生産者に取って代わるようになったことを示す兆候だ」とフェデレーションは述べているという。

発表では「中国の大豆輸入は減少していない。実際には記録的な水準に達している。しかし、その需要の大部分はいまや競合国によって満たされている」とも記されているという。

9月には、アメリカ大豆協会がトランプ政権に対し中国との貿易協定を求め、さらにブラジルとアルゼンチンがアジア市場における米国産大豆の代替供給国となっていることを指摘したという。

同団体は「中国は世界最大の大豆購入国であり、我々にとって最大の輸出市場だ。米国は新しい大豆収穫分について中国に一切販売していない」「これにより、他の輸出国――ブラジル、そして今ではアルゼンチン――がこの市場を獲得し、米国の農業者に直接的な損害を与えることとなった」と述べているという。

1か月前、同協会はトランプ氏に宛てた書簡の中で、この部門が「商業的かつ財政的な断崖の縁に立たされており」、最大の顧客との貿易紛争には耐えられないだろうと警告していた。

米国農務省(USDA)のデータが業界の懸念を裏付けていると「G1」は指摘する。

9月26日に公表された報告書の中で同省は、中国がブラジルから月に1,000万トン以上の大豆を購入し、ブラジル産大豆の輸入記録を更新したことを強調しているという。そしてブラジルの収穫期が終わりに近づくと、中国は、米国産大豆輸入の停止を補うために、アルゼンチンとウルグアイに目を向けた。

農家の損失を軽減するためトランプ政権は、今週、農業部門への支援パッケージを発表するとされており、CNNによるとその規模は100億から140億米ドルの範囲になる可能性があるという。

米国における大豆は主要な輸出農産物であり、全体の約14%を占めるとAP通信は伝えている。中国は最大の顧客であり、近年では米国産大豆の25%を購入してきたという。

米国のスコット・ベッセント財務長官は、先週木曜日にCNBCに対し、農業従事者、特に大豆生産者への「相当な支援」に関する発表が今週火曜日(6日)にあるだろうと述べたという。その前日、トランプ氏は自身のSNSに中国への批判を投稿し、生産者への支援を約束した。

またトランプ氏は、今後数週間以内に中国の習近平国家主席と会談する予定であると述べ「大豆は会談の主要な議題の一つとなるだろう」と語っているという。会談は、10月末に韓国で開催予定のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の際に行われる見込みとのこと。

(文/麻生雅人)