現代美術作家ジウベルト・サウヴァドール展、リオ市で開催
2025年 12月 10日

リオデジャネイロ市で12月9日(火)より、展覧会「ジウベルト・サウヴァドール ― 幾何学的な内臓」が開幕したと現地メディア「アジェンシア・ブラジル」、「ジアーリオ・ド・リオ」が伝えている。
この展覧会は、サンパウロ出身のジウベルト・サウヴァドール(Gilberto Salvador)が17年ぶりに同市で開催する個展で、近作から、1960~70年代の歴史的な作品、触覚的に鑑賞できる彫刻、映像作品など約40点が展示されている。

会場はリオ市の旧市街区にある文化施設「パッソ・インペリアウ」の2階。「パッソ・インペリアウ」は1743年にリオ・デ・ジャネイロ総督の官邸として建築された歴史的建造物で、1808年にポルトガル王ジョアン6世がリオに到着以降はパッソ・ヘアウ(王宮)となり、1822年の独立後、パッソ・インペリアウ(皇宮)となった。1985年以降、修復され文化サンタ―として使われている。
キュレーションは批評家のデニス・マッタールが手掛けた。
「サウヴァドールの作品は、サンパウロ美術界の重要な要素でありながら、リオではあまり知られていません。これは主に、車椅子生活による移動の困難さが原因だと思います。しかし彼は自らの身体的制約を強調することなく、むしろレジリエンスと勇気の象徴となっています。今回の展覧会は、創作活動の全盛期にある芸術家を、リオの観客が発見する貴重な機会を提供することになるでしょう」(デニス・マッタール氏)

サンパウロ大学建築都市計画学部(FAU/USP)の卒業生でもあるジウベルト・サウヴァドールの表現は具象から抽象へと広がったものの、幾何学的な形やアクリルや金属などの工業素材は、作品の中に生き続けている。アクリル、金属、木材、塗料、さらには建設資材に関連するオブジェは、彼の作品における表現の語彙の一部として用いられている。
「ジウベルトは異なる素材を絶対的に調和の取れた形で取り込み、すべての時期において素材の豊かさが際立つ作品を生み出しています」(デニス・マッタール氏)
平面から外へと形を突き出す切り抜き作品は、作家のもう一つの特徴であり、強烈な色彩の使用も顕著だ。
サウヴァドールはこの色彩感覚を、ブラジルならではの自身の体験に結びつけている。

「子どもの頃、最も印象的だったのは映画館の入口に掲げられていたポスターでした。木に印刷され、切り抜かれて、まるで命を得たかのように見えた。その要素は私の作品の歩みの中で繰り返し現れ、やがて鮮やかな色彩感覚として定着していった。鮮やかな色は私たちの熱帯的なテーマに関わるものです。ブラジルの熱帯は色彩に満ち、私たちの植物相も色彩豊かなのです」(ジウベルト・サウヴァドール)
長年にわたり造園にも携わってきたというサウヴァドールは、都市空間と自然環境の対話を作品に取り込みながら、鮮烈な色彩と素材の融合を通じてブラジル的感覚を表現し続けている。
デニス・マッタールの解釈よると、ジウベルト・サウヴァドールの作品世界の核には、「構築」と「主観性」の対話がある。
「幾何学的な線、断片化されたボリューム、計算された構成は、建築家としての彼の背景を呼び起こし、形式的な厳密さが主観的な不安に浸透する視覚世界を構築する力を示しています。時に彼の作品は動物相や先住民神話、大衆的想像力の要素を取り込み、集団的記憶と個人的な寓話を統合するブラジル的な視覚の語彙を形成し、色彩、リズム、象徴的密度として爆発するのです」(デニス・マッタール)
展覧会のタイトル「幾何学的な内臓」は、この厳密さと有機性の衝突から生まれたという。
「彼の作品で最も注目すべき点、そしてこのタイトルを与えた理由は、構成主義や幾何学がジウベルトの作品に、常に存在していることです。初期のポップアート的な精神を持つ作品においても、幾何学は顕著に表れています。しかし常に、有機的な形態が対照的に存在し、全作品に通底しているのです」(デニス・マッタール)
(文/麻生雅人)



