「量刑算定法案」抗議デモにカエターノ・ヴェローゾらも参加
2025年 12月 15日

ブラジル各地の州都で12月14日(日)、市民が、量刑算定法案(PL da Dosimetria)の承認に反対する抗議デモを行った。この法案は、2023年1月8日のクーデター未遂事件で有罪判決を受けた者の刑期算定(量刑)を軽減し、ジャイール・ボウソナーロ前大統領にも有利に働く内容とされている。
抗議行動は左派系の社会運動「ブラジル民衆戦線」および「恐れなき人民戦線」が主導した。午前中にはベロオリゾンチ市、カンポグランジ市、クイアバ市、マセイオー市、フォルタレーザ市、サウヴァドール市、そしてブラジリアなど主要都市でデモが展開された。
首都ブラジリアでは、参加者が共和国博物館前に集まり、国会議事堂へと向かって行進。「クーデターに恩赦なし」と書かれた横断幕を掲げ、シュプレヒコールを上げた。さらに、ウーゴ・モッタ連邦下院議長(共和党・パライーバ州)への批判も相次いだ。
サンパウロ市中心部のパウリスタ大通りは12月14日(日)、国会による量刑算定法案(PL da Dosimetria)承認に抗議する市民で埋め尽くされた。抗議行動はサンパウロ美術館(MASP)周辺の街区に集中し、労働組合、社会運動、学生団体、野党政党の代表者らが参加した。
参加者は「恩赦なし」と繰り返し唱和し、「国民の敵となった国会」と記した横断幕を掲げ、ウーゴ・モッタ下院議長への批判の声も高めた。緑と黄色の服を身にまとい、クーデター関与者への恩赦反対や「後ろ向きな国会」への抗議を示す人々もいた。

量刑算定法案の採決は、警察がグラウベル・ブラーガ下院議員(社会主義自由党・リオデジャネイロ州)を議事運営委員会の席から強制的に排除した後に行われた。報道関係者は現場取材を禁じられ、複数の記者が警察から暴行を受けた。
野党議員らは、この法案によりボウソナーロ前大統領の刑期が大幅に短縮され、現在の7年8か月から最短で2年4か月の服役にとどまる可能性があると予測している。
「今回の抗議は、今週下院で行われた量刑算定法案の採決がきっかけです。私たちはこれを、事実上の恩赦と認識しています。民主主義に対する犯罪は非常に重大であり、許されるべきではありません。なぜなら、処罰がなければ再びクーデターの試みが起こるからです」と「恐れなき民衆戦線」のジュリアーナ・ドナート氏は語った。
ドナート氏は、街頭での市民の圧力が上院での採決に影響を与え、法案を否決に導く可能性があると考えている。さらに彼女は、今回の抗議は量刑算定法案だけでなく、国会が承認した他の政策への反対でもあることも強調した。
「恩赦の問題に加えて、時制基準案(※注:Marco temporal:ブラジル先住民の土地権を「1988年憲法公布時点に実際に占有していたかどうか」で限定しようとする基準)、グラウベル・ブラーガ議員の資格剥奪の試み(幸い阻止できました)、労働者の権利を奪うものや議員自身の利益、セントロンの修正案、企業寄りの政策など、すべて労働者に反するものです」と述べた。
「これらすべては民主主義への大いなる驚異です。国会は『国民の家』であるはずなのに、深夜に国民に背を向ける採決を行い、報道を締め出して記録を妨げています。だからこそ『国民の敵となった国会』という言葉がインターネットで広まったのです。人々は理解し始めており、2026年の選挙で私たちは議会に対して明確なメッセージを送らなければなりません」とジュリアナ氏は付け加え、現在の議員の多くが国民を代表していないと指摘した。

リオデジャネイロ市南部コパカバーナのポスト5周辺は12月14日(日)、国会による「量刑算定法案(PL da Dosimetria)」承認に抗議する市民で埋め尽くされた。
抗議は「恐れなき民衆戦線」などの社会運動、労働組合、学生団体が呼びかけ、左派政党や芸術家も参加した。カエターノ・ヴェローゾやジウベルト・ジウが出演する午後のコンサートを含む「音楽的抗議行動」として注目を集めた。
参加者は法案を「民主主義の大きな後退」、「クーデターの恩赦」と批判し、労働制度の改悪(6日労働1日休み)、フェミサイド(女性殺害)対策の不備、先住民土地権を制限する「時制基準案(Marco Temporal)」、銀行調査の不透明性などにも抗議の声をあげた。
演説は議員や労組、学生リーダーが車上から行い、「恩赦なし」、「国民の敵となった国会」と書かれたステッカーが掲げられた。女性グループは「裏切り者のネズミ」と議員を呼び、ゴム製のゴキブリやヘビ、サソリ、ネズミを配布するパフォーマンスで注目を集めた。
教育者カロリーナ・フェルナンデス・カリスト氏は「国民の意思に反する決定を下す議員は虫けら同然だ」と批判。72歳の退職者アンジェラ・タルナポルスキー氏は「ジウマ大統領への弾劾以来続く民主主義の後退に憤りを覚える。独裁時代でもこれほど多数のファシスト議員はいなかった」と語った。
女優カミラ・ピタンガと歌手テレーザ・クリスチーナも群衆に加わり、「量刑算定法案はクーデター主義の受容だ」と非難。議員によるベネジッタ・ダ・シウヴァやジャンジーラ・フェガーリへの侮辱も抗議理由に挙げた。
抗議には議会による6か月の資格停止を受けたグラウベル・ブラーガ議員(PSOL-RJ)も参加し、「議員活動を街頭に移す」と宣言。法案や「ピクス修正案」(用途説明なしに公金を移す仕組み)への反対を訴えた。
午後4時から予定されたコンサートにより、この抗議は「音楽的抗議行動2:帰還」と名付けられた。これは9月に行われた「ブリンダージェン憲法改正法案(議員に対する訴追を困難にする議員保護憲法改正案)」反対の音楽デモに続くもので、国会に対し民主主義を守るよう求める市民の声が再びリオの街に響いた。
量刑算定法案(PL da Dosimetria)とは
量刑算定法案(PL da Dosimetria)の条文は、民主的法治国家を廃止しようとする企図の犯罪と、クーデター未遂の犯罪が同一の文脈で行われた場合、両方の刑を合算するのではなく、より重い刑罰のみを適用することを定めている。さらに、この法案は、刑務所の閉鎖的(厳格)拘禁から準開放型、あるいは開放型への移行に必要な期間を短縮する内容を含んでいる。
この変更は、ジャイール・ボウソナーロ前大統領をはじめ、アウミール・ガルニエ元海軍司令官、パウロ・セルジオ・ノゲイラ元国防相、ヴァウテル・ブラーガ・ネット元官房長官、アウグスト・ヘレーノ元国家安全保障室長官など、複数の軍関係者の被告に利益をもたらすとみられている。
刑期短縮
また量刑算定法案(PL da Dosimetria)は、一部の一般犯罪者に対して刑期の進行期間を短縮する内容を含んでいると、アジェンシア・ブラジルが取材した法律専門家は指摘している。
法案は下院で承認され、2023年1月8日のクーデター未遂事件に関与した有罪者、ジャイール・ボウソナーロ前大統領を含む被告らを利することを目的としている。
リオグランジドスウ州カトリック大学(PUC-RS)法学部のホドリゴ・アゼヴェード教授は、この変更によって2019年から適用されている現行モデルと比べ、刑期進行に必要な服役割合が「顕著に」減少すると強調した。特に非暴力的な一般犯罪において、その影響が大きいと述べている。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




