ブラジル映画『シークレット・エージェント』がプラティノ賞作品賞を受賞
2026年 05月 11日

ブラジルの映像作品が、国際的な映画賞で再び高い評価を受けた。
映画『シークレット・エージェント』は、5月9日(土)夜、メキシコ・カンクンで行われた授賞式で、第13回プラティノ賞(イベロアメリカ映画及びオーディオビジュアル・プラティノ賞)で4部門を受賞した。プラティノ賞は、ラテンアメリカ、ポルトガル、スペインの映画・シリーズ作品を対象とするイベロアメリカ圏で最も重要な映画賞とされる。
ペトラ・コスタ監督の『熱帯の黙示録(原題:Apocalipse nos Trópicos)』も、最優秀ドキュメンタリー賞を獲得した。
この日、『シークレット・エージェント』は作品賞、脚本賞、監督賞、男優賞の4部門を受賞。ブラジル人俳優が最優秀男優賞を受賞するのは今回が初めてとなる。2025年には、映画『アイム・スティル・ヒア(Ainda Estou Aqui)』でエウニッシ・パイヴァを演じたフェルナンダ・トーへスが最優秀女優賞に選ばれており、同作は前年の主要受賞作となった。今回の受賞は、同作品がすでに獲得していた4つのプラティノ賞に加わる形となる。
『シークレット・エージェント』でヴァギネル・モウラが演じるのは、軍事独裁政権に追われる大学教授アルマンド。物語では、彼がサンパウロからレシフェへ逃れ、新たな身分を名乗らざるを得なくなる。
1970年代を舞台にした本作には、ブラジルの北東部ペルナンブッコ州の文化要素が随所に盛り込まれており、「ペルナ・カベルーダ」の伝説(注:1970年代にヘシーフィを中心に広まった、“毛むくじゃらの片足”が夜になると人を襲うという都市伝説)や、バンダ・ジ・ピファーノス・ジ・カルアルー(カルアルー市で活動する横笛を中心にした伝統音楽バンド)などが登場する。音響や美術の選択も、物語の重要な構成要素となっている。
銀色のトロフィーを受け取ったクレーベル・メンドンサ・フィーリョ監督は、偽情報が広がる現代において物語を語る意義を強調した。
「いまは真実が議論され、操作されている時代です」と監督は語った。
「確かに世界は嘘に満ちています。しかし、映画は詩情あふれる物語、壮大な冒険、人間ドラマ、愛と情の物語を、誠実に、真実をもって語るための強力な手段なのです」。
ヴァギネル・モウラは現在スペインで別作品の撮影に参加しており、授賞式には出席できなかった。会場では、クレーベル・メンドンサ・フィーリョ監督が代読した謝辞の中で、モウラは次のように喜びを伝えた。
「プラティノ賞が大好きです。私たちの映画文化が祝われ、仲間と再会し、新しい才能や作品、アーティスト、そしてポルトガル語・スペイン語圏の映画に携わる人々を知ることができる場だからです。(…)ブラジルが広い文化圏の一部として存在していると実感するたびに、胸が熱くなります」
モウラはこの受賞をメンドンサ監督に捧げ、監督は、モウラが次回作に参加することを改めて明らかにした。
数日前、ゴールデングローブ賞受賞歴を持つモウラは、プラティノ賞の一般投票部門で最優秀男優賞に選ばれており、今年のアカデミー賞にもノミネートされたブラジル人俳優として存在感を示していた。
『シークレット・エージェント』はすでに美術、音楽、編集の3部門で受賞が発表されており、美術監督タレス・ジュンケイラ、作曲家のトマーゼ&マテウス・アルヴェス兄弟、編集のエドゥアルド・セハーノとマテウス・ファリアスらがトロフィーを手にしている。
ペトラ・コスタ監督の『熱帯の黙示録(原題:Apocalipse nos Trópicos)』は、ドキュメンタリー部門で受賞し、パラグアイやスペインの作品を抑えて栄冠を手にした。
同作はジャイール・ボウソナーロ政権を追い、2023年のクーデター未遂事件を描くとともに、ブラジル政治における福音派の影響力を考察する長編ドキュメンタリーだ。
トロフィーを受け取った同作のプロデューサー兼研究者ブルーノ・パシーニは、ドキュメンタリー作品について「トラウマを記憶へ、そして記憶を運動へと変える力がある」と述べ、制作に携わった関係者へ感謝を伝えた。
シリーズ番組部門では、ブラジルの『ベレーザ・ファタウ(Beleza Fatal)』が長編シリーズ賞を受賞した。同作はメロドラマに近い構成を持つ作品で、監督のマリア・ジ・メジシスは、数カ月前にこの世を去ったテレビ演出家デニス・カルヴァーリョに敬意を表し、ラテンアメリカの映像文化を支えてきた“ノヴェーラ”(注:毎日放送される連続テレビドラマ)というジャンルを称賛、「ノヴェーラ万歳、ブラジル万歳」と喜びを語った。
今回のプラティノ賞では、ブラジルから7作品がノミネートされ、イベロアメリカ各国から約100作品が参加する36部門で競い合った。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




