ブラジル政府、路上生活者支援で複数省庁による包括的パッケージを発表

2026年 06月 24日

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ブラジリア(連邦区)、2026年6月23日。連邦政府は、路上生活者を対象に、保健、雇用、社会支援、人権の各分野での施策パッケージを発表した(写真:Marcelo Camargo/Agência Brasil)

ブラジル法務・公安省(MJSP)は6月23日(火)、ブラジリアで、路上生活者を対象とした保健、雇用、福祉、人権分野の施策パッケージを発表した。総額は 1億3,000万レアル(約39億円) を超え、同省によると、これまでにこの分野に割り当てられた予算としては最大規模となる。

MJSPのアデマール・ボルジェス次官によると、今回の取り組みは複数の省庁に加え、州政府、自治体、市民社会と協力して構築されたもので、路上生活者が権利にアクセスし、尊厳が守られるようにすることが目的だという。

「すべてのブラジル人の尊厳を認めるということは、すべての人間が同じ内在的価値を持ち、等しい尊重と配慮に値するということです」(ボルジェス次官)

連邦政府による「路上生活者向け施策発表式典」で、共和国大統領府総務局のギリェルミ・ボウロス大臣は、これらの人々を、権利を持つ市民として認識することの緊急性を強調した。

「社会の一部に偏見が残っているとしても、私たちは連帯と人間性という価値を手放しません。公共政策の指針としてこれらの価値を守るために必要な代償は払う覚悟です」(ボウロス大臣)

<治安当局職員の研修強化へ 脆弱な立場にある人々への人権尊重を重点化>

法務・公安省(MJSP)は、路上生活者に直接対応する治安当局職員5,077人を対象に、人権および、脆弱な立場に置かれた人々の尊厳を尊重するための研修を実施すると発表した。投資額は90万レアル(約2,700万円)に上る。

連邦直轄区ブラジリアで行われた発表会には、サンパウロ大司教区「路上の民の司牧(Pastoral do Povo da Rua)」のジュリオ・ランセロッチ神父も招かれた。同神父は、治安当局による路上生活者への暴力行為の根絶を強く求めた。

「尊重されるべき基本原則があります。世界人権宣言には、何人たりとも拷問や屈辱的・侮辱的な扱いを受けてはならないと明記されています。しかし、私たちは多くの自治体で、まさにそのような行為が行われている現実を目にしています」(ランセロッチ神父)

さらに同神父は、最も脆弱な立場に置かれた人々の権利を守るため、連邦および州の検察庁、そして公的弁護機関が積極的に行動する必要性を強調した。

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ブラジリア(連邦区)、2026年6月23日。路上生活者支援に関する保健・雇用・福祉・人権施策の発表に臨むジュリオ・ランセロッティ神父(写真:Marcelo Camargo/Agência Brasil)

<省庁横断の統合施策による、路上生活者を対象とした初の全国センサス準備を開始>

政府が23日(火)に発表した施策の一つが、ブラジル地理統計院(IBGE)が実施する初の全国路上生活者センサスに向けた準備作業の開始だ。

この前例のない人口調査に加え、法務・公安省(MJSP)と社会開発・社会支援・家族政策・飢餓対策省(MDS)は、統一社会福祉システム(SUAS)のサービス網を強化するため、技術・財政協力協定も締結した。

この取り組みには年間5,000万レアル(約15億円)の投資が予定されており、全国263カ所の「路上生活者専門支援センター(Centros-Pop)」を、 社会福祉統一システム(SUAS)が直轄する「権利アクセス・社会包摂センター(CAIS)」に統合する計画だ。

MDSのウェリントン・ジアス大臣は、最も重要なのは「この人々を不可視の状態から救い出すこと」だと強調した。

「政府が発表する政策は、制度的な壁を越え、実際に“歩道や広場など、人々がいる場所”に届かなければなりません」(ウェリントン・ジアス大臣)

大臣によると、財政支援は地域ごとの特性を尊重し、首都圏と中規模都市では需要が異なることを踏まえて配分されるという。

法務・公安省(MJSP)は労働・雇用省(MTE)とも連携し、路上生活者に尊厳ある食事を提供するため、社会的脆弱層のための相互扶助型の無料共同食堂として機能する「相互扶助キッチン(Cozinhas Solidárias)」の拡充に290万レアル(約8,700万円)を投資する。

この資金は、全国27州で活動する 88人の奨学生(研修員) を雇用・育成するために使われ、奨学生は路上生活者とともに、収入づくりや社会包摂のプロジェクトを企画・運営し、制度へのアクセスを伴走的に支える。

MDSによると、相互扶助キッチンは2025年に約1,500万食を提供しているが、これまでの政策を新たな段階に移し、路上生活者への支援を重点化する。

労働・雇用省のフェルナンド・ザンバン国民経済・連帯経済局長は、支援の方向性について次のように述べた。

「これらの人々の権利へのアクセスと、人間としての尊厳が守られる環境を保障すること最優先です。単なる“施し”では、脆弱な立場に置かれた人々の“不可視化”という問題は解決しません」(ザンバン局長)

さらにザンバン局長は、路上生活者が持つ能力を認め、協力・連帯・自主管理の原則に基づいて 経済的に人生を再構築する機会を提供することが不可欠だ と強調した。

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ブラジリア(連邦区)、2026年6月23日。路上生活者支援に関する保健・雇用・福祉・人権施策発表式典でスピーチを行った大統領府総務局のギリェルミ・ボウロス大臣(写真:Marcelo Camargo/Agência Brasil)

<保健分野の施策>

保健省は、路上生活者を対象とした政策に年間1億2,000万レアル(約36億円)を投じると発表した。

初期医療保健局のアナ・ルイーザ・カルダス局長によると、同省は「路上診療所(Consultório na Rua=eCR)」のチーム数で過去最多を記録したという。これらのチームは、統一医療保健システム(SUS)の多職種専門家で構成され、全国27州すべてで国家の存在を確立する役割を担う。

「2022年時点では170チームでしたが、現在は全国に333チームが配置されています」(カルダス局長)

さらに同局長は、サンパウロ市で24日(水)に予定されている会合で、同市のeCRチームを 即時20%増員することが正式に発表されると明らかにした。

「人がいる場所にはSUSが存在します。路上生活者がいる場所にも必ずSUSが行き届き、必要なケア、支援、そして“路上の現実(rualidade)”と地域性に基づく連携を届けます」(カルダス局長)

ボウロス大臣はさらに、連邦貯蓄銀行(Caixa)および都市省と協力し、住宅供給政策「私の家、私の暮らし(Minha Casa, Minha Vida)」の住宅ユニットのうち、一定割合を路上生活者と暴力被害女性に必ず割り当てるための規則づくりを最終段階にしていると明らかにした。

<住宅政策との連携>

「政策の実施状況を継続的に把握し、改善を促す省庁横断委員会(CIAMP-Rua)」のジョアナ・バジリオ副議長は、路上生活者が置かれている脆弱な状況は「国家による放置の結果」だと強調して、国家が市民に義務を求める前に、まず基本的権利を提供し保障する必要があると指摘した。

「この政策が末端まで届き、実際に路上にいる人々に行き渡らなければ意味がありません」(バジリオ副議長)

<“敵対的建築”の撤去を要求>

高架下や橋、庇の下など公共空間での滞留を防ぐために設置されるバリケード、いわゆる「敵対的建築(arquitetura hostil)」 を長年批判してきたジュリオ・ランセロッチ神父は、ボウロス大臣に対し、まず連邦政府の建物からこの種の構造物を撤去するよう求めた。

敵対的建築の例としては、尖った石や金属柵、地面に埋め込まれたピン、有刺ワイヤーなどが挙げられる。

<「見える路上」へ——国家計画の第2フェーズを準備中>

最後にボウロス大臣は、連邦政府が州・自治体と連携して進める 「全国路上生活者可視化計画(Plano Nacional Ruas Visíveis)」の第2版を近く発表する と明らかにした。

同計画は、社会的脆弱性への対処と、路上生活者の社会的包摂を促進することを目的としている。

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)