アラーニャ選手への人種差別野次を飛ばした女性、今度は自宅が放火される

2014年 09月 13日

アラーニャ

サッカーの試合で、人種差別の罵声を飛ばした姿がテレビに映し出された後、パトリシア・モレイラさん(23)の生活が脅かされている。

パトリシアさんは8月28日、リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレのグレミオ・アリーナで開催されたブラジル杯のグレミオ対サントスの試合の最中、サントスの黒人キーパー、アラーニャに対し、「汚い匂いの猿」との叫び声に続き、客席の一部で差別語や猿の鳴きまねが繰り返された事件に関与したひとりだ。

当日の差別的行為に加担したとされるグレミオ側のサポーターは10人程度の身元が判明している。

ブラジルのサッカーの試合では今年に入ってから、このようなことが数件起きており、問題視されていた。パトリシアさんの行為も当然問題視されるわけだが、彼女の場合、差別語である「マカーコ(猿)」と叫んだ姿がテレビの生中継で映し出されてしまい、身元がわかってしまった。

これにより、パトリシアさんは自身のフェイスブックで攻撃を受け、勤務していた会社から解雇処分を受けた。ポルト・アレグレにある自宅には石を投げつけられるなどの嫌がらせも受けた。

結局、パトリシアさんを含む一握りのサポーターたちの差別行為により、グレミオはブラジル杯の今大会からの参加資格を剥奪された。

騒ぎが大きくなっていく中、パトリシアさんは9月5日に警察で事情聴取を受けた後に記者会見を開き、アラーニャに罵声を浴びせたことを「試合に負けていたから感情的に叫んだ。人種差別の意図はなかった」と弁明した上、泣きながら謝罪した。この会見の時点で担当弁護士は、パトリシアさんが既に大きな社会的制裁を受けていると訴えていた。

だが12日未明、パトリシアさんの自宅の一部が放火の被害にあった。火は午前4時ごろ、家の前で起こり、パトリシアさん宅に広がって行く様相だった。近隣住民がこれに気づいて消防署に連絡し、消防隊もかけつけた。消防隊が現場についた頃には火は消え、門や水道や電気のメーターが焼けただけで済んだ。消防は近隣住民が消火したと見ている。

放火事件が起こった時、パトリシアさん一家は不在だった。それは8月28日以来、一家は連日のようにいやがらせを受け、自宅にも安心して住めなくなっており、親類や友人の家に寝泊りを続けていたという。

ブラジルは人種差別問題に敏感な国として知られており、批判が強く起こったところまではそうしたお国柄を反映していたと言える。だが、時が進めば進むほど、事態が事の本質から大きくそれつつあるようだ。

なお、市警は12日午後、放火犯と見られる男性を逮捕。目撃者の証言で犯人と確認された男性は、警察で同日中に事情聴取を受けている(12日付「G1」サイトより)。

(記事提供/ニッケイ新聞、写真/Getty Images)
野次を受けたアラーニャ選手(サントス)。写真は8月31日、ボタフォーゴ対サントス戦