フォルクスワーゲン社、軍事政権下のブラジルにおける奴隷労働の搾取で有罪判決受ける
2025年 08月 31日
ドイツ資本の多国籍企業フォルクスワーゲンが、ブラジル・パラー州における奴隷的労働の搾取により、ブラジルの労働裁判所から有罪判決を受けた。犯罪は1974年から1986年にかけて、農畜産業を営む「ヴァーリ・ド・リオ・クリスタリーノ農場」(通称フォルクスワーゲン農場)で行われたもので、同農場はパラー州南東部サンタナ・ド・アラグアイアに位置している。
フォルクスワーゲン社は、集団に対する賠償金として1億6,500万レアル(約4.7億円)を支払うよう命じられた。この資金は、パラー州の「尊厳ある労働の推進および奴隷労働根絶州立基金(Funtrad/PA)」に充てられる予定。
ヘデンサォン労働裁判所のオターヴィオ・ブルーノ・ダ・シウヴァ・フェへイラ判事は、「訴訟記録の証拠は、ブラジル・フォルクスワーゲン社がヴァーリ・ド・リオ・クリスタリーノ農場に投資しただけでなく、その戦略的運営にも積極的に関与し、違法な労働搾取によって直接的な利益を得ていたことを示している」と述べた。
判決文ではさらに、「公式報告書、労働者の証言、公的機関の文書は、同農場の生産モデルが、(労働者への)借金による束縛、暴力、劣悪な環境への服従といった実態を含んでおり、現代の奴隷労働の核心を構成していたことを明らかにしている」と記されている。
労働検察庁(MPT)の声明によると、ヴァーリ・ド・リオ・クリスタリーノ農場では数百人の労働者が、武装管理者による監視、粗末な宿泊施設、十分でない食事、借金による束縛、医療支援の欠如、特にマラリアに罹患した者への対応の欠如といった劣悪な条件に置かれていたという。
<訴訟の発端>
この判決は、労働検察庁が2024年12月に提起した民事公益訴訟によって導かれたものであり、訴訟は2019年にヒカルド・へゼンジ・フィゲイラ神父が提出した、土地司牧委員会(CPT)による告発に基づいている。
労働検察庁によると、フィゲイラ神父はフォルクスワーゲンの所有地における劣悪な労働環境に関する文書を収集しており、労働検察庁は、訴訟記録、警察の捜査資料、公証人による証言記録などの証拠を入手し、告発された事実の裏付けを得たという。
労働検察庁は、巨額の賠償金に加え、フォルクスワーゲンが「自らの責任を公に認め」、「被害を受けた労働者および社会全体に謝罪する」義務があると発表した。
同社はさらに、「人権と尊厳ある労働に関する方針」を採用し、すべてのサプライヤーとの契約に奴隷的労働を禁じる条項を盛り込み、契約関係に対する独立監査を許可するなどの措置を講じることが求められる。
また、フォルクスワーゲンの農業事業は、軍事政権下(1964〜1985年)にアマゾン開発庁(Sudam)から公的資金の支援を受けていた。
2020年、フォルクスワーゲンは検察庁と「行動調整合意(TAC)」を締結し、軍事政権への協力と人権侵害への関与を認めた。
フォルクスワーゲンは1950年代からブラジルに進出しており、同国の工業化と自動車生産の開始期に事業を展開していた。
アジェンシア・ブラジルはフォルクスワーゲンの広報部門に連絡を取っており、現在返答を待っている。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)