ブラジルでの家庭動物の遺棄、約3,000万匹に達する
2025年 12月 28日

12月は、家庭動物の適切なケアの重要性を訴える啓発活動「動物保護の12月」の月として位置づけられている。
時期が選ばれたのには理由があり、年末年始の祝祭期間は動物の遺棄が最も多く発生するほか、飼い主と離れる時間が増えることや、花火などストレス要因が重なることで、逃走リスクも高まるとされる。
キャンペーンでは、動物の不快感を軽減し、安全を確保するための対策の必要性が強調されている。推計によると、犬や猫をはじめとする家庭動物の遺棄数はこの10年ずっと横ばいで、約3,000万匹に達している。
サンパウロ州獣医師会(CRMV‑SP)動物福祉技術委員会のダニエラ・ハモス委員長は「(ブラジルにおける)人とペットの関係は絶えず親密になりつつあり、双方の距離はこれまで以上に近く、強く、感情的なものになっています。『所有』や『所有者』といった用語は、もはや適切とは言えなません。伴侶動物の責任者として共に暮らすには、身体的な面だけでなく、情緒面も含め、あらゆるニーズに応えることが求められます」と語る。
同獣医師会は、動物福祉の向上を目指すうえで、動物の「保護者/保護責任者(tutor)」への適切な指導や関連サービスの重要性を強調している。
基本的な課題の一つとして挙げられるのが、生活設計や日常の調整に対する意識づけだ。家庭動物の寿命は10年以上に及ぶことが一般的であり、休暇など例外的な期間におけるケアは、動物の発達と快適さのために欠かせない。また、生理的なニーズに加え、世話をする人が不在になることによる不安など、情緒面での福祉も重要だと指摘する。
そのうえで同獣医師会は、動物が複数の人や場所に慣れるようにしておくことが、保護者の不在による負担を軽減する一つの方法になると提案している。
「遺棄されるケースの多くは譲渡を受ける前に、引っ越しの際にどうするのか、旅行中は誰が世話をするのかといった、実際的な問題について考えておけば防ぐことができます」(ダニエラ・ハモス委員長)
「自宅で過ごす時間が増える休暇などの機会を利用して、譲渡についてよく考えてください。どの動物も、私たちとの生活に最初から適応しているわけではありません。家族と調和して暮らせるよう、教え、導く必要があります。責任者だけでなく、家のすべてのメンバーがこの過程において重要な役割を担っています」(ダニエラ・ハモス委員長)
動物の遺棄は犯罪
サンパウロ市保健局は、動物の遺棄が連邦法9.605/1998により犯罪とみなされることを改めて注意喚起している。通報は、動物保護オンライン警察窓口や動物通報ダイヤル(0800-600-6428)を通じて、治安当局に届け出る必要がある。
動物の遺棄には最長1年の禁錮刑が科される可能性があり、虐待の兆候がある場合や、動物の健康に危険が及ぶ状況では刑罰が加重される。
サンパウロ市内では、飼い主のいない動物は、保健監視調整局(Covisa)に属する人獣共通感染症監視部(DVZ)が収容している。同部門は、公道や公共スペースで放置されている犬や猫の回収を担う公衆衛生機関であり、攻撃行動が確認された場合、公的機関への侵入が確認された場合、公衆衛生上のリスクがある場所にいる場合、あるいは苦痛状態にある動物など、特定の状況で対応する。対応にあたっては、人への健康リスクがあるケースが優先される。
サンタカタリーナ州の事例
いくつかの州では12月を、このテーマを議論するための戦略的な時期として位置づけている。サンタカタリーナ州もその一つで、「愛を捨てないで」キャンペーンを展開し、街頭広告やマルチメディアによる広報活動を1月まで実施している。
「このキャンペーンの着想は、データに基づく一つの事実から生まれました。年末やハイシーズンのこの時期は、人々の感受性が高まり、譲渡件数が増える傾向にあるのです」と語るのは、州動物福祉局のファブリシア・ホーザ・コスタ局長である。
しかしコスタ局長は、同時に、家族が休暇に出かけたり引っ越したりする際に、預け先や譲渡先が見つからず、結果として動物を放置してしまうケースが増えることを指摘する。
「この現実は変わらなければなりません。ペットはおもちゃではなく、意識的に感覚や感情を持つ、感覚・感情を感じる能力を持つ存在なのです。こうした状況では、空腹、恐怖、悲しみ、寒さ、暑さ、そして見捨てられた不安を感じるのです」(ファブリシア・ホーザ・コスタ局長)
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




