写真展「ジョアン・ギマランイス・ホーザに捧ぐ」開催
2026年 04月 25日

駐日ブラジル大使館にて、写真展「ジョアン・ギマランイス・ホーザに捧ぐ」が開催中だ。この写真展では、ブラジルを代表する作家の一人ジョアン・ギマランイス・ホーザの小説「大いなる奥地」(1956年刊行)に感銘を受けた写真家モーリン・ビジリアが、小説の舞台となった地域を実際に旅しながら映し出した、ブラジルの内陸部の情景をまとめた作品集「ジョアン・ギマランイス・ホーザに捧ぐ」の収録作品を展示している。
ジョアン・ギマランイス・ホーザ(1908~1967)は、ミナスジェライス州出身の医師・外交官・作家。本展示のキュレーションを務めたモレイラ・サレス財団のチアゴ・ノゲイラ氏によると、ホーザは、自身の故郷であるミナスジェライス州の奥地に、地域独特の詩的、音楽的な繊細な情景を感じて文学で表現したという。
「ギマランイス・ホーザは、国境画定の仕事にも携わった外交官でもあり、作家でもありました。彼の故郷であるミナスジェライス州は、17世紀後半から18世紀にかけてゴールドラッシュが起こり、奴隷としてアフリカから多くの黒人が連れてこられた場所です。金の発掘のピークが去った後は、人々は牧畜を中心として生活を営んでいきますが、特に、セルタォンとよばれる内陸部、いわゆる奥地のサバンナ地帯は“忘れ去られた土地”となっていきます。しかしその後、先住民文化、この地に取り残された黒人文化などが交じり合いながら独自の文化が育まれていきました。ギマランイス・ホーザが記した『大いなる奥地』でも、この地域の豊かな文化が描かれています。1956年に刊行されて以来、多くの世代に読み継がれている『大いなる奥地』は、ポルトガル語の言語を美しく表現した文学で、貧しい地域である内陸の文化を、豊かに、哲学的に描いています」(チアゴ・ノゲイラ氏)
造語や方言も多く使われているこの小説は、ブラジル人であっても理解するのが難しい部分もあるという。
「言語を通してセルタォンの生活の厳しさが伝わり、読むと音楽を感じる文学だといえます」(チアゴ・ノゲイラ氏)
ブエノスアイレス、パリ、ニューヨークで絵画や造形作品を学んでいたイギリス人、モーリン・ビジリアは、1952年に写真家だった夫と共にブラジルに移住。ブラジルで、夫のローライフレックスを手に写真の世界にも足を踏み入れはじめた。
「画家であるアイルランド人の母親と、外交官であるアルゼンチン人の父親の間に生まれたモーリン・ビジリアは、生まれたときから国際的な環境に身を置き、イギリス、デンマーク、コロンビア、アメリカ合衆国、スイスなどを転々として育ちました。ブラジルに移住して、あるときギマランイス・ホーザの『大いなる奥地』を贈られた彼女は、本に感銘を受け、そこに描かれている世界がホーザの創造の産物なのか、実際にある世界なのかを知りたくなり、ホーザに会いに行きます。ホーザは彼女に『アイルランドの血を引く君なら、風と共に景色が変わっていく、セルタォンの詩的で音楽的な世界を感じることができるはず』と語り、地図を手渡しました」(チアゴ・ノゲイラ氏)
モーリンは、実際に作品に描かれた奥地を旅して写真に収めて、戻るとホーザにそれを見せ、また旅に出るという生活を繰り返した。
「そしてモーリン・ビジリアは『視覚的等価性』という概念を自分の表現に反映させて、文学で描かれている世界をただ写真に収めるのではなく、
彼女が感じた要素を、写真で新しい詩として表現していきます。哲学的、内なる考察を、写真で表現していったのです」(チアゴ・ノゲイラ氏)
セルタォンの生活、牛飼いたちの日常、生活の中にある宗教や祝祭などを、独自の感性で映し出していったモーリンは、自身の写真に、ギマランイス・ホーザの小説の一片を添えた作品集「ジョアン・ギマランイス・ホーザに捧ぐ」を1969年に刊行した。
「モノクロームの写真でモーリンが映し出したブラジルは、民族色が賑やかで、カラフルでトロピカルなブラジルではありません。人間の存在意義を内省的、詩的に表現されたブラジルの姿です」(チアゴ・ノゲイラ氏)
今回の展覧会は「ジョアン・ギマランイス・ホーザに捧ぐ」に沿って、モーリンの写真とギマランイス・ホーザの文章が展示されているが、発行されている書籍に収録された写真だけでなく、モレイラ・サレス財団が保管しているバリエーションも展示されている。本の中でトリミングされた写真のオリジナル画像も観ることができる。
展示「ジョアン・ギマランイス・ホーザに捧ぐ」は駐日ブラジル大使館(東京都港区北青山2-11-12)にて5月15日(金)まで開催。入場は無料。
(文/麻生雅人)




