タルシーラ・ド・アマラウ生誕140周年を記念するイマーシブ展示、サンパウロで開催
2026年 08月 16日
【サンパウロ 8月15日】 今年9月、ブラジルの画家タルシーラ・ド・アマラウの生誕140周年を迎える。これを記念し、サンパウロ市パウリスタ大通りのコンジュント・ナシオナウ内に新設された文化スペース「Nubank Art Lab」で、イマーシブ(没入型)展示が8月15日(土)に開幕する。
過去に40万人以上を動員し、サンパウロ美術館(Masp)の歴代展示でも屈指の来場者数を記録した展示会「タルシーラ・ポプラール(Tarsila Popular)」の成功を受け、今回の展示「タルシーラのブラジル(O Brasil de Tarsila)」はインタラクティブ性を前面に打ち出し、10月31日まで公開される。
来場者は、作品をイメージした香りを体験したり、タルシーラが描いた風景の前で佇んだり、彼女の言葉を聞きながら列車に乗って旅をする演出を楽しめるほか、代表作「アバポルー(Abaporu)」の隣で写真を撮ったり、ブラジル近代主義の象徴的作品「労働者(Operários)」の中に自分の顔を組み込んで遊ぶこともできる。

主催者によると、今回の展示はタルシーラの作品に特化したイマーシブ(没入型)展示としては最大規模で、舞台装置、音響、インタラクティブ装置、香り、360度投影などを備えた複数の部屋で構成されている。
展示空間では、タルシーラの数十点に及ぶ作品がアニメーションや投影で再現され、来場者はその世界観に没入することができる。
キュレーションは、画家の又姪にあたるパオラ・ド・アマラウ・モンチネグロ氏と、ジュリアーナ・ミラルディ氏が担当し、14室に70点以上を配置した「民主的な選定」だと説明する。

「ここでは、タルシーラを見たことがない人、知らない人とも対話しつつ、タルシーラをよく知る人とも対話しています。めったに公開されないため普段はほとんど見られない作品も含め、展示は本質的に民主的な発想で構成されています。あらゆる年齢、あらゆる背景の人に向けた展示です」(ジュリアーナ・ミラルディ氏)
パオラ・ド・アマラウ・モンチネグロ氏は、今回の展示が従来のタルシーラ展とは異なる点を強調した。
「私たちは何か新しいものを提示したかったのです。あまり知られていない作品に没入できるようにし、これまでとは違う体験を提供したいと考えました。没入型展示は非常に現代的で、ここまでの形は皆さんも見たことがないはずです。生誕140周年を祝うのに、これ以上ふさわしい形式はありません。タルシーラを再び“時代の先を行く存在”として提示する展示です」(パオラ・ド・アマラウ・モンチネグロ氏)

<新たな表現媒体の活用でタルシーラ作品を再解釈>
ジュリアーナ氏によると、今回の展示で使用されている映像・音響などの全コンテンツは、人工知能ではなく、デジタルアーティストや造形作家らによって制作されたものだという。作品の美的一貫性と原作への敬意を保つためだ。
「この制作には32人以上のデジタルアーティストが関わりました。映像を見れば、人工知能とは異なることが分かるはずです。ここでは光や質感を重ねたレイヤー表現が用いられています」(ジュリアーナ・ミラルディ氏)
ジュリアーナ氏はアジェンシア・ブラジルの取材に対し、展示全体が家族連れを受け入れ、子どもや若者の好奇心を刺激し、タルシーラ作品に触れたことのない人々にも門戸を開き、さらには没入型展示への偏見を乗り越えることを目指して構成されていると強調した。
「新しい表現媒体が登場すると、伝統を築いてきた既存の領域からは疑念が生まれるものです。私の見解では、没入型展示は写真や映画と同様に、純粋な美術の場だけでなく、娯楽・情報・コミュニケーションといった重要な領域とも対話する空間です」(ジュリアーナ・ミラルディ氏)
画家の又姪であるモンチネグロ氏も、新たな表現媒体の登場はしばしば議論を呼ぶが、最終的には芸術理解を広げる役割を果たすと指摘する。
「現在、哲学・社会学・精神分析の分野では、感覚や感情の重要性が再評価されています。喜びや没入、感動する力もまた“知る”ことの一形態だと語られています。没入体験はそれを可能にします。今回のタルシーラ展は、その可能性に賭けています」(パオラ・ド・アマラウ・モンチネグロ氏)

<生誕140年>
1886年、サンパウロ州カピヴァリで生まれたタルシーラ・ド・アマラウは、20世紀ブラジル美術を代表する画家であり、モダニズムの中心的存在とされる。
1928年、当時の伴侶であった作家オズヴァウド・ジ・アンドラージ(1890〜1954)の誕生日を祝うために描いた作品「アバポルー(Abaporu)」は、ブラジル美術史上最も価値の高い絵画の一つとなり、“食人主義”運動の象徴的作品として知られる。
作品名は、タルシラがトゥピ=グアラニー語辞典で見つけた「aba(人)」と「poru/puru(食べる)」に由来し、「人肉を食べる人」を意味する。パオラ氏は、タルシーラは常に時代の先を行く女性だったと語る。
「タルシーラは芸術家としてだけでなく、女性として、フェミニストとしても重要です。彼女は旅を重ね、得たものをすべて芸術に昇華しました。その姿勢は、私自身が夢を追ううえで大きな教訓になっています」(パオラ・ド・アマラウ・モンチネグロ氏)
<Nubank Art Lab>
サンパウロ市の新たな文化拠点「Nubank Art Lab」は、パウリスタ大通りのコンジュント・ナシオナウ1階に位置し、総面積は2,700平方メートルを超える。
施設は多目的ホールと2つの没入型空間で構成されている。没入ルームの一つには、長さ10メートルのLEDウォールと鏡張りの天井が設置され、各投影に合わせてプログラムされるセンサーシステムが備えられている。
同スペースでは、タルシーラ展と同時に「Fronteiras do Imaginário(想像の境界)」展も開催される。南アフリカ出身で国際的に評価されるアーティスト兼デザイナーのムチ・ランドルフ氏と、没入型・インタラクティブ体験の創出で知られるフランス人デジタルアーティスト、マオティック氏の作品が展示される。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




