ブラジルの情報機関、米国がブラジルの選挙に影響または干渉を及ぼすリスクを指摘
2026年 09月 21日
【ブラジリア 9月20日 14:05】 ブラジル情報局(ABIN)は、今年のブラジル選挙に対して米国が影響または干渉を及ぼすリスクがあると指摘する報告書を作成した。
この機密文書は、米国によるブラジルへの圧力が、今後さらに高まる傾向にあることも警告している。
報告書は8月末に大統領府、選挙高等裁判所(TSE)、司法省へ送付された。内容は19日(土)に「フォーリャ・ジ・サンパウロ」紙が報じ、ブラジル通信公社(EBC)のTV Brasilも確認した。
同紙によると、ブラジルの情報機関は外部干渉の可能性を「重大度の高いレベル」と分類し、問題の背景として「米国のラテンアメリカにおける覇権の再確認」がドナルド・トランプ米大統領の第2期政権の優先事項だと説明している。
目的は、中国など「米国のライバル」を地域の戦略資産、天然資源、インフラから遠ざけることにある。
ABINの評価では、ここ数か月で米国の対ブラジル行動が強まっているという。
選挙への介入に加え、ブラジルは国家的利益を損なう経済的・政治的措置の対象にもなっている。
一方、これに対してブラジル政府は、外交・通商関係を良好に保とうとしている。
米国政府の行動を批判しつつも、ルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領はイベントやインタビューで「私はトランプとうまくやっている」と語ることが多い。
<解説>
すべての始まりは、2025年9月の国連総会で両者の間に芽生えたとされる“ケミストリー(相性の良さ)”だった。
これは、ルーラが壇上を降り、トランプが演説の準備をしていた際に短い対面があった後、米国大統領がその関係性を表現するために使った言葉そのものだ。
しかし、この一見良好に見える関係は、ブラジルの外交や経済にとって必ずしも容易な状況を意味するわけではない。
2025年4月以降、ブラジルは米国に輸出する製品に対し、追加関税の対象となってきた。
当初は複数の国に対して10%の関税が課され、純粋に経済的な理由が背景にあった。
しかしその2か月後、米国政府の経済措置には政治的な色合いが加わるようになった。
7月30日、ドナルド・トランプは大統領令(OE)に署名し、ブラジルを「米国の国家安全保障に対する異例かつ重大な脅威」と位置づけた。
これにより、関税の総額は50%へと引き上げられた。
<関税引き上げの理由>
関税引き上げの理由として挙げられたのは、ブラジル司法当局が同国内でのSNS運営を制限したことだった。
対象となったSNSには、トランプ・メディア&テクノロジー・グループ(TMTG)が運営するRumbleや、イーロン・マスクが率いる旧TwitterのXが含まれていた。
ブラジル連邦最高裁によると、これらの制限はヘイトスピーチの扇動や民主主義への攻撃に関連していた。
また、関税の理由には、ジャイール・ボウソナーロ元大統領が「民主的法秩序の暴力的な破壊を試みた」として有罪判決を受けたことも含まれていた。
米国政府はこの判決を「政治的迫害」であり、現政権への反対派への威圧だと称した。
トランプは、ボウソナーロが主張する「自分は政治的に迫害されている」という見解を繰り返し支持していた。
ボウソナーロは、2022年10月の大統領選でルーラに敗れた際、軍司令官らに選挙結果の停止を迫り、ブラジルでのクーデター未遂の中心人物とされている。
<マグニツキー法>
関税に加え、米国政府はさらに踏み込み、クーデター未遂事件の関連訴訟の審理を担当する連邦最高裁(STF)のアレシャンドリ・ジ・モライス判事と、判事の妻でもあるヴィヴィアーニ・バルシ・モライス弁護士に対してマグニツキー法を適用した。
同法は米国の国内法で、米国内の銀行口座、資産、金融投資の凍結、ブラジル国内にある米国企業との取引禁止、さらに米国への入国禁止を規定している。
当時、STFのルイス・ホベルト・バホーゾ、エジソン・ファキン、カルメン・ルシア、フラヴィオ・ジノ、クリスチアーノ・ザニン、ジウマール・メンデスの各判事も、米国の入国ビザが取り消された。
2025年12月、モライス氏とその妻はマグニツキー法の制裁対象リストから除外されている。
<エドゥアルド・ボウソナーロの役割>
当時、元大統領の息子エドゥアルド・ボウソナーロ元連邦下院議員は、「政治的迫害を受けている」と主張して米国へ渡っていた。
連邦最高裁判事へのマグニツキー法が適用されると、彼はSNSでブラジルへの経済・法的措置を祝福した。
さらに、米国当局に働きかけ、この結果を後押ししたと明かした。
これにより、彼は「訴訟手続きへの不当な干渉」で告発された。
米国に、ブラジルへの関税を課すよう促し、ブラジル司法が父親を有罪にしないよう圧力をかけたとされたためだ。
エドゥアルド・ボウソナーロは2026年6月に連邦最高裁で有罪判決を受けた。
現在も米国に居住しており、下院本会議への欠席が続いたため議員資格を失った。
<関税の引き下げ>
しかし今年2月、ドナルド・トランプ氏の関税政策は大きな打撃を受けた。
米国連邦最高裁が、トランプ氏が世界的に課していた輸入品への関税を無効としたのだ。
同最高裁は、関税の付与は議会の権限を侵害し、「重大な問題の原則」に反すると判断した。
米国政府は違法に徴収した数十億ドルを返還する必要が生じた。
しかし法的制約があるにもかかわらず、米国政府は依然として追加関税を適用している。ブラジルに対しても同様だ。
7月22日、米国はブラジルの輸出品の19%を対象に25%の追加関税を発表した。
今回のトランプ政権の主張は、ブラジルが「不公正な慣行」を採用しているというものだった。
その例として、PIX(ブラジルの電子決済システム)、SNS規制、違法伐採、メキシコやインドとの優遇協定などが挙げられた。
数日後、さらに12.5%の新たな関税が課された。
理由は、ブラジルが「強制労働で生産された商品」の輸入を防ぐ有効な仕組みを採用していないというものだった。
ブラジル政府はこの関税を「恣意的で根拠がない」と反論し、同国が奴隷労働撲滅で国際的に評価されている点を強調した。
現在、ブラジルから米国への輸出品の一部は最大37.5%の関税を課される可能性がある。
<テロ組織指定>
今年5月、米国務省は声明で、ブラジルの犯罪組織コマンド・ヴェルメーリョ(CV)とプリメイロ・コマンド・ダ・カピタウ(PCC)をテロ組織に指定した。
ブラジル政府は数か月にわたりこの指定を回避しようと対応していた。ブラジル政府の評価では、この指定は米国による軍事行動や、経済・金融分野への厳しい制裁につながる可能性があったためだ。
専門家によると、この指定はむしろ麻薬取引、資金洗浄、恐喝、強盗致死、武器弾薬の密輸などの犯罪に対する処罰を軽減してしまう可能性もあるという。
<ビザ取り消し>
8月4日、米国はマリア・ルイーザ・ヒベイロ・ヴィオッチ駐米国ブラジル大使のビザを取り消した。
米国政府は、トランプ政権がブラジル駐米大使に指名した人物の承認手続きにブラジル側が時間をかけすぎたことを理由に挙げた。
ブラジル政府はこの主張を否定し、虚偽だと反論した。
当時発表された声明では、米国がブラジル駐米大使の指名者の名前を公表したことは、ウィーン外交関係条約に違反すると指摘した。
ブラジル政府によると、指名者の名前は、受け入れ国が正式に同意を与えた後でなければ公表できない。
<ルーラとトランプ>
ルーラ大統領は、ドナルド・トランプ氏との個人的な関係は良好だと繰り返し述べているが、トランプ氏への批判を控えるわけではない。
今年6月、両国が交渉中にもかかわらず、トランプ氏が新たな関税を示唆したことについて「無礼な行為だ」と発言した。
それでも、両者の会談や電話協議は続いている。
2025年9月の国連総会での短い対面の後、翌月にはマレーシア・クアラルンプールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で再び顔を合わせた。
当時、トランプ氏はブラジル大統領と会うことを「光栄だ」と述べたが、合意事項は発表されなかった。
直近の会談は今年5月、ワシントンで行われた。
ルーラ大統領は、米国がブラジルとの貿易で黒字を維持しており、「不公正な慣行」は存在しないと説明した。
資料を提示し、両国政府のチームによる協議の場を設けることで合意した。この会談は3時間以上に及んだ。
ルーラ大統領は、ブラジルの組織犯罪対策についても説明し、ブラジルの犯罪組織がテロ組織に指定されることを避けようとしたが、数日後に指定が発表された。
今年4月には、ブラジルと米国は国際的な武器・麻薬取引の取り締まりで協力する協定を発表している。
両者はこれまでに少なくとも4回電話で協議している。
最も最近で最長の通話は8月に行われ、1時間20分に及んだ。この通話はブラジル側の発案で、貿易交渉の再開と国際紛争の抑制が主な議題だった。
両者は来週火曜日(22日)、ニューヨークで開催される第81回国連総会で再び同席する。
ルーラ大統領はブラジル代表として一般討論を開会し、その後に米国大統領が演説する。ただし、両者の二国間会談は予定されていない。
(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)




