W杯へのプロテスト・ソング「ごめんね、ネイマール」が話題に作者は気鋭のシンガー・ソングライター

2014年 04月 16日

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またブラジルで、ワールドカップブラジル大会の出費などに異議を唱えるデモが行われた。4月15日(火)、2014年に入ってから5度目となるW杯への抗議デモが、リオやサンパウロで行われた。

そんなブラジルで今、抗議デモのテーマソングとなりそうな歌がインターネット上を中心に話題となっている。

話題となっているのは弾き語りソングで、タイトルもずばり「Desculpe, Neymar ごめんね、ネイマール」。

作ったのはサンパウロの気鋭シンガー・ソングライター、エドゥ・クリエゲル。曲はyoutube(https://www.youtube.com/watch?v=iwL3TxSeDmA)で聴くことができる。

エドゥ・クリエゲルは、アナ・カロリーナ、マリア・ヒタ、マリア・ガドゥ、ホベルタ・サーなど、現在のブラジルのポップス界で活躍する歌手たちにも曲を提供する注目の作家の一人だ。

歌詞に込められているメッセージは、昨年からW杯への抗議で叫ばれている内容と同様。W杯への巨額な投資を行う前に、FIFAがスタジアムに対して口うるさくいう規格とはほど遠い学校や病院など公共施設の環境改善など、優先すべきことがあるはず、と訴えるものだ。

また、歌詞にはネイマールだけでなく、1994年に4度目の優勝をもたらしたパヘイラ元監督、フェリパォンことスコラリ現監督、5度目の優勝を果たしたときのキャプテン、カフー(トロフィーを掲げたときユニフォームに生まれ故郷であるスラム地区ジャルジン・イレーニの名を記していた)の名も登場する。

しかしこの曲は、単純に抗議を叫ぶだけの歌ではない。

下記の意訳によると、ワールドカップや選手、監督たちのすばらしさや、強いサッカーがブラジルにあることを喜び讃えながらも、それでも今回は、心から君たちを応援することができないんだという想いが歌われている。

その一方で、自分は応援することができないけれども、それでも、苦しい生活を強いられながらもセレソンを応援する人はたくさんいて、彼らの気持ちはわかる、とも。語りかける様に歌われる切ない歌詞が、胸に響く。今のブラジルの人々の切なる想いをリアルに歌映す歌詞が、人々の心を揺さぶっているのかもしれない。

「ごめんね、ネイマール」(作詞・作曲/エドゥ・クリエゲル)

ごめんね、ネイマール
でもこの大会では君たちを応援しないよ
テレビのニュースで
皆がちょっとづつ衰弱していく姿を見るのに
もう疲れたんだ
FIFAが規格を気にしている間
汚れた金を競って手にしようとする泥棒たちに
僕らは仕切られているんだ
ごめんね、ネイマール
今回は応援しないよ

パヘイラ、僕は見たよ
あの4回目の優勝は
みんなを幸せにしてくれた
だけど僕らは
本当のチャンピオンにはなれないよ
ワールドカップを開催するのに
100億以上も費やして
僕らはとても美しいスタジアムを手に入れた
だけど学校や病院は
壊れかかってぼろぼろだよ
パヘイラ、僕は見たよ
ブラジルの崖っぷちを

ごめんよ、フェリパォン
カフーがトロフィーを掲げて
あの厳粛な瞬間にルーツを示したときは
ジャルジン・イレーニが
ブラジルの顔になるよう、皆が期待したね
だけど約束された春はこなかった
人生は一つのゴールより価値がある
より良い国になるという希望は
どこのあるの?
ごめんよ、フェリパォン
この国に花は咲かなかったよ

だけど僕は知っている
サポーターのみんな
僕のシンプルで正直な意見にもかかわらず
給料をもらっても一寸もよくならない生活をしながら
君たちは僕らのセレソンと共に
最後までついていくってことを
高額なチケットを買えなくても
セレソンへの想いは変わらないってことを
だけど僕は知っている
サポーターのみんな
君たちは間違っていないってこともね

(文/麻生雅人、「ごめんね、ネイマール」意訳/浅野雅雄、麻生雅人、写真/Tomaz Silva/Agência Brasil)
写真は4月15日、リオデジャネイロの旧市街区で行われたワールドカップブラジル大会の出費などに異議を唱えるデモ。ボードには「“FIFAの規格”に適った学校、地下鉄、電車、バス、船、病院が欲しい」と記されている