ブラジルの国民的人気漫画家マウリシオ・ヂ・ソウザが来日。「私のロマンスは伊勢丹から始まったのです」
2014年 05月 2日ブラジルではまず知らない人はいない国民的人気漫画家のマウシリオ・ヂ・ソウザさんが来日中だ。
マウリシオさんは日本とも交流が深く、とりわけ、故・手塚治虫氏とは深い友情で結ばれていた。「ブラジルにおける日本文化の紹介及び対日理解の促進に寄与」した功労で、平成25年秋の外国人叙勲・旭日小綬章を受賞している。
現在、伊勢丹新宿店で開催中のブラジルフェア「Abraços do Brasil ! ~ブラジルの抱擁~」(5月6日(火・振替休日)まで)、本館1階「ザ・ステージ」では、マウリシオさんの代表作「モニカの仲間たち」コーナーを設置。漫画やステイショナリー、ポスターなどが販売されている。
マウリシオさんは4月30日(水)に行われた同フェアのオープニンレセプションに出席した後、会場でサイン会も行っている。サイン会は5月2日(金)にも午後14:00~14:30に行われる。
来日中のマウリシオ・ヂ・ソウザさんにお話を伺った。
「Abraços do Brasil ! ~ブラジルの抱擁~」のレセプションで、伊勢丹へは以前、買い物客としてきたことがあると話していたマウリシオさんだが、その買い物はマウシリオさんにとって思い出深いものだった。
「初めて伊勢丹を訪れたのは1975年。初めて日本に来た時のことです。私はサンリオとの仕事で日本に来ていました。そのとき、すでにブラジルで絵を描いて活躍していたアリッシに日本に同行してもらっていました」
アリッシさんとは、現在マウリシオさんの妻であり、マウリシオさんの漫画スタジオでアートディレクターを務める日系ブラジル人女性だ。
「ちょうどお正月前だったので、私は伊勢丹で買ったプレゼントをアリッシに贈りました」
マウリシオさんはブラジルに戻ってから正式にアリッシさんにデートを申し込み、そこから二人はロマンスを育んでいったという。
「私のロマンスは伊勢丹から始まったのです。私のセンチメンタルな歴史の中に伊勢丹は刻まれています。ですからこの場所に戻れて、イベントに参加できることは大変うれしく思います」
1970年代から日本と交流のあったマウリシオさんだが、手塚治虫氏との交流も有名だ。
「日本で手塚先生と初めて親交を深めたとき、日本のいろいろな場所を紹介してくださいました。彼の生まれ故郷にも連れて行ってくれました。その後、彼がブラジルに来た時は私の番で、ブラジルのいろいろなところに、彼と一緒に行きました。私が持っている農場に行ったときには、手塚先生はとてもゆっくり休養されていました。彼は日本ではものすごく多忙でしたから。手塚先生とは亡くなるまでとてもいい友人でした」
実は手塚漫画は、実際に二人が出会う前からマウリシオさんにとって大きな存在だった。
「アリッシは8歳までポルトガル語を話さなかったそうですが、日本語の読み書きは、手塚先生の漫画を通じて学んだのです。彼女はその後、イラストや漫画を描くようになり、仕事を求めて私のスタジオの扉を叩いたときには、すでに彼女の絵のスタイルは完成されていました。その絵に手塚先生からの影響があり、私の絵のスタイルとも通じるところがありました。やがて彼女はスタジオで最終工程を手掛けるほど、重要なスタッフになったのです」
生前、マウリシオさんと手塚治虫氏はお互いの作品にお互いのキャラクターを出演させようという約束をしていたが、手塚氏の他界でお互いのコラボレーションは実現しなかった。しかし、2012年にマウリシオさんは、自身の代表作「モニカの仲間たち」のティーン版「ヤング・モニカの仲間たち」に手塚漫画のキャラクターを登場させ、マウリシオさんのキャラクターと共演させた。アマゾンの森林破壊を守るために、レオやアトムなど手塚治虫氏のキャラクターたちと、マウリシオさんのキャラクターのモニカたちが協力し合うというものだ。
「あのストーリーは手塚先生と話していた内容なんです。しかし、私の漫画『モニカの仲間たち』の登場人物は全員小さな子どもばかりだったので、手塚先生の漫画のキャラクターと釣りいがとれず、なかなか実現させることができませんでした。近年『ヤング・モニカの仲間たち』が始まって、ようやく手塚先生のキャラクターと一緒に物語がつくれるようになったのです。状況が整って、ようやく手塚先生との約束が果たせたのです」
手塚治虫氏との交流や不思議な縁、伊勢丹とのめぐりあわせなどを思い、マウリシオさんは言う。
「私は、ペンに導かれて人生を歩んできました。ペンで描いてきたものを通じて現実の様々な出会いがありました。私の人生そのものが、運命が描きあげた物語といえるでしょう」
タイトル: 「Abraços do Brasil ! 〜ブラジルの抱擁〜」
会期: 2014年4月30 日(水)〜5 月6 日(火・振替休日)
時間: 10:30 – 20:00 不定休(会期中は休まず営業致します。)
場所: 伊勢丹新宿店本館・メンズ館各階
東京都新宿区新宿3-14-1
連絡先: 03-3352-1111(大代表)
マウリシオ・ヂ・ソウザ サイン会
5月1日(木)、2日(金)午後14:00~14:30
(写真・文/麻生雅人)