「無限に広がるブラジルハーブの魅力」講演レポート
2013年 07月 17日今年6月23日(日)、日本メディカルハーブ協会が「食とハーブ・世界の植物を使った伝統医療」というシンポジウムを開催。その中で、薬剤師、ブラジルハーブ研究家の長田順子さんが「無限に広がるブラジルハーブの魅力」という講演を行いました。
特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会が主催した第14回シンポジウム「食とハーブ・世界の植物を使った伝統医療」。「世界の食物を使った伝統医療」というセッションでは、南米、北米、ヨーロッパでの植物療法の事情が紹介されました。
ブラジルのハーブ事情を発表した長田順子さんは、20余年ブラジルとかかわり、日本とブラジルを行き来してフィールドワークを続けている研究家。
長田さんによると、ブラジルにおける植物療法~薬草・薬木文化のはじまりは先住民族の時代にさかのぼるとのこと。
そこにポルトガルなどヨーロッパの薬草・薬木文化や、奴隷制度の下でアフリカから持ち込まれた薬草・薬木文化が加わり、さらにアジアをはじめ世界化国の移民が持ち込んだ薬草・薬木文化が伝わり、これらがブラジル各地で独自の形で帰化していったのではないか、とのことです。
たとえば、ゲットウ(月桃、Vindiva)はアジアからブラジルに伝わった薬草のひとつ。沖縄では抗菌・殺菌、防虫などに使われることで有名ですが、ブラジルでは抗菌・殺菌ではあまり使われず、心を落ち着ける効用に用いられるそうです。
また日本でもはトロピカル・フルーツとしてお馴染みの果物も、薬効が知られているものが少なくないのだそうです。
ところでブラジルでは北部を中心に、薬草・薬木文化が一般的なブラジル人の生活の中に浸透していますが、先住民族の文化という点に関していえば、北米にも先住民族が存在して、伝統的な薬草文化が伝えられています。
しかし北米の事情を発表した村上志緒(日本メディカルハーブ協会学術委員)さんによると、北米では先住民族の文化は、ブラジルと比較すると普遍的に人々の生活の中に溶け込んでいるとはいえない、とのこと。
ブラジルの植物療法~薬草・薬木文化は、この国ならではの歴史や混交文化を背景に育まれ、広く人々の生活の中に浸透しているということが、事例と共に伝わる講演でした。
(写真・文/麻生雅人)