ミルトン・ナシメント、「Esquenta」に出演

2013年 07月 26日

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ミルトン・ナシメントは世界的にもっとも親しまれているブラジル人歌手、作曲家の一人だろう。

1942年にリオに生まれるも幼少のころミナスジェライス州(以下、ミナス)へと移住。「Canção do Sal(塩の歌)」が、国民的歌手エリス・レジーナの歌唱で大ヒットし、1967年にファースト・アルバム「Travessia(トラヴェッシア)」を発表。

続けてブラジルODEONから2作、アメリカのCTIから1作リリースした後、1972年にロー・ボルジェス、トニーニョ・オルタらミナスの仲間達と制作した2枚組の大作「Clube da Esquina(街角クラブ)」を発表した。この作品は現在に至るまでミナス音楽の金字塔とされている。

1974年には合衆国のジャズ・ミュージシャン、ウェイン・ショーターのアルバム「Native Dancer(ネイティブ・ダンサー)」にヴォーカリストとして参加。その唯一無二の歌声で鮮烈な印象を残し世界的な知名度を獲得した。それ以降、様々なアーティストとのコラボレーションを実現することとなる。

オリジナル・アルバムもコンスタントに発表し、1998年にはアルバム「Nascimento(ナシメント)」でグラミー賞のワールドミュージック部門を獲得。近年、イマイチ焦点の定まらない作品も多かったが、最新作である2010年の「…E a Gente Sonhando(…イ・ア・ジェンチ・ソニャンド)」は久々の本格的なオリジナル・アルバムとなりファンに健在ぶりをアピールしてくれた。

エリス・レジーナもレパートリーとしてミルトンの楽曲を頻繁に取り上げるなど、ブラジル音楽史上におけるもっとも偉大なシンガーソングライターの一人である。

上述した楽曲以外にも「Ponta de Areia(砂の岬)」「Maria, Maria(マリア、マリア)」「Canção da América(カンサォン・ダ・アメリカ)」「Cais(カイシ)」など、彼の歌は今も名曲とされているものが多い。

と同時に、ポルトガル語を解さない日本や欧米の人々をも魅了し続けているのがミルトン音楽のもうひとつの特色だ。ジャズ・ミュージシャンはハーモニーやコード進行の面白さに惹かれミルトンの楽曲を頻繁に取り上げているし、ヒップホップのトラックメイカーはサンプリング・ネタとしてミルトン音楽のグルーヴや音色に着目している。

そして、その流れは年々加速しつつある。要因はいくつか考えられるが、インターネットの発達が情報を平均化し、世界中の音楽からエキサイティングを奪ってしまった昨今、 相対的にミルトンや彼の仲間達の音楽、そしてその影響を受けた新しい世代のブラジル音楽の高度なオリジナリティが浮き上がってきているからであろう。

http://diskunion.net/latin/ct/detail/BR4330
近年のレコード再評価ブームもあり、USのレーベルから再発された名盤「街角クラブ」

(文/江利川 侑介/diskunion)

(写真/TV GLOBO)
「Esquenta」に出演するミルトン(ミウトン)・ナシメント(写真中)と、Alexandre Pires (アレシャンドリ・ピリス、写真左)、 Xande(シャンヂ、写真右)

日本ではグローボ・インターナショナルにて、8月4日に放送予定。