ブラジルのインフラと日本の食卓の相関関係は?(2)
2013年 08月 5日ブラジルの週刊誌「VEJA」13年3月号の記事によると、ブラジルは現在、米国と同等の大豆を生産しているが、アメリカ産に比べてコスト面で極めて厳しい状況になっている。アメリカでは、販売価格に対して40%強の利益が出ているのに対して、ブラジルはわずか10%弱である。
ブラジル政府も気づいていないわけではなく、PAC2(経済成長加速化計画2)においても、物流インフラに相当投資をする予定である。高速道路関係で、今後5年間で約360億レアル(約1兆8000億円)、港湾整備関係で436億レアル(約2兆5000億円)を用意している。
しかしながら、政党・閣僚間での利権の奪い合いや、建設ラッシュの中での人材不足、建設会社不足などでいっこうに進まない。先日のデモは、このような状況に対する怒りが噴出したのも一因である。
日本のトウモロコシは100%輸入、大豆も国産はわずか6.5%で、ほぼ輸入に頼っている。昨今の円安で輸入コストが上がり、食品は軒並み値上がりをし始めている。本当は今こそ、日本政府は護送船団方式で、ブラジルのインフラ整備事業を取りに行くべきである。
日本の大手商社が最近、ブラジルの大手穀物生産・物流会社を次々と買収をしているが、これらにうまく絡めて、輸送網の整備と特定の港湾を集中的に整備し、その見返りに何らかのインセンティブをブラジル政府から獲得すれば、それによって生産コスト、輸送コストが下がり、輸送効率は向上する。日本企業の利益増も見込め、ひいては店頭価格が下がり、日本の消費者の食卓も豊かになる。さらに、ブラジルもハッピーになり、日本企業のブラジルでのプレゼンスは高まるはずだ。
(文/輿石信男/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真/Arquivo/ABr)
写真はイメージです。ブラジリアでの穀物の収穫。日本商社もブラジルで穀物など調達に乗り出している。三井物産はブラジルにおいて穀物を中心とする農業生産事業及び穀物物流事業(集荷、加工、輸送、輸出、販売)を行うマルチグレイン社(本社スイス)を2011年に完全子会社化。丸紅はサンタカタリーナ州サンフランシスコ・ド・スル港の港湾ターミナル会社、テルログ社を2011年に完全子会社化。三菱商事はゴイアス州の穀物会社Los Grobo Ceagro do Brasil S.A.社(ロス・グロボ・セアグロ・ド・ブラジル、以下セアグロ社)の子会社化を進めている