リベンジポルノの犠牲者広がる。ブラジルでは少女2名が自殺
2013年 12月 9日元交際相手の裸、あるいは性的な画像や動画などを、インターネット上に無断で公開する暴力行為「リベンジポルノ(Revenge Porn、復讐ポルノ)」。
近年、世界中で被害者を生んでいるこの問題は10月に、アメリカ合衆国のカリフォルニア州でリベンジポルノ非合法化法が成立したことや、カリフォルニアの例を受けて、日本でも第185回国会参議院予算委員会で取り上げられた(10月23日)ことでも話題となった。12月7日(土)には、リベンジポルノをほのめかして女性を脅迫したとされる男性が逮捕される事件をNHKなどが報じて、またまた話題になった。
ブラジルでも11月に、「リベンジポルノ(ブラジルではpornôs de vingança ポルノス・ヂ・ヴィンガンサまたはvingança pornô ヴィンガンサ・ポルノ)」が原因で2名の女性が自殺して、波紋を呼んでいる。11月20日付け「テーハ」(電子版)は、ブラジル南部のリオグランヂドスウ州ヴェラノーポリス市で16歳の女性が自殺したことを伝えている。
女性は、携帯電話やSNSで自分の裸の画像が出回ったことを知った数時間後に自殺したとみられている。死体は家族によって木曜に発見された。自殺した女性の父親は、どういう経緯で娘が自殺に追いやられたのかを調べてほしいと19日(火)に地元の警察に訴えたという。
彼女のツイッターでの最後の投稿は「今日の午後、この問題について私は解決します。誰ももう私を話題にできなくなると思う」というものだったと地元紙「ゼロ・オーラ」が伝えたという。
6か月前に交際していた男性が、二人が別れた後に画像をインターネットで公開したという。二人は中等教育2年目の同級生で、自殺した女性は1か月前から新しい恋人と付き合いはじめていたという。
この事件の調査を担当しているヴェラノーポリス市警察のマルセロ・ドス・サントス・フェフージェン本部長は加害者を、青少年児童法の241条に則って罰することを要求しているとのこと。同法241条では、未成年者のセックスやポルノグラフィ画像や動画の撮影、複製、インターネットへの送信どを犯罪行為と定めていて、マルセロ本部長は、事件の責任が問われるべき者は、画像をネットにアップしたものだけではないという。
「画像や動画を受け取り、拡散させた者も罪に問われます」(マルセロ本部長)
犠牲となった女性のコンピュータの履歴を辿って捜査は行われる予定。
ブラジルでは11月10日にも、リベンジポルノの犠牲となった女性が自殺に追い込まれている。11月17日付けの「G1」が伝えている。
被害者はピアウイ州パルナイーバ市に住んでいた17歳の女子学生ジュリア・へベッカさん。自室でヘアアイロンのコードを首に巻いて自殺しているのが彼女の叔母によって発見された。
男性一人と、もうひとりの女性とによる計3名による性的な動画が、チャットアプリのワッツアップメッセンジャーで公表されたという。
インスタグラムとツイッターに残された彼女の最後のメッセージは、家族への言葉だった。「テーハ」、「G1」が彼女の最後の言葉を伝えている。
「間もなくすべてが終わります。これが私の最後のメッセージです。私は今、とても怖い。でもすべて、終わります。さようなら」
「愛しています。がんばったんだけど、完璧な娘になれなくて、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、愛してる、お母さん、ごめんなさい」
この事件はパルナイーバに住んでいる人たちに衝撃を与えたという。
ジュリア・へベッカさんの母親イヴァニア・サリアさんが、インターネットでプライベートな画像や動画が公開されるのは暴力だと語る。TV番組「ファンタスチコ」による電話インタビューにイヴァニアさんは、自分の娘に何が起きていたかまったく知らなかったと語ったという。
「若者たちには若者たちの正義があります。こういうやり方で私の娘の画像や動画を公開するのは暴力です」(イヴァニアさん)
ジュリアさんの友人たちは残された家族に励ましのメールを送り、ジュリアさんのいとこは葬儀の一部始終をネットで公開したという。
ジュリアさんはいつも明るく、家族とも仲が良く、合衆国のポップススター、マイリー・サイラスが大好きなごく普通の10代の女性だったという。しかし、学校の友人たちによると、自殺する前の週からふさぎ込みがちでいつも携帯電話を見ていたという。
現在、警察は誰が最初に動画をインターネットに公開したかを捜索しているという。パラナイーバ市警察のホドリゴ・モレイラ本部長は「原則として動画を公開された3人は被害者です。彼ら以外で誰が動画を広めていったのかを捜査しています」と語ったという。
(文/麻生雅人、写真/camilita__a)
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