サンパウロ市で、バス車内ヘッドフォン無し音楽視聴禁止条例がスタート

2014年 01月 11日

バスサンパウロ車内

いやいや当たり前でしょ!と、日本人ならツッコミを入れたくなるニュースだ。

サンパウロでは、バス内などでヘッドフォンを使用せずに、スマホや携帯電話などで音楽を聴くことを禁じる条例が制定された。「ヴェージャ」、「フォーリャ」、「G1」などが2013年12月24日に報じており、サンパウロの各事業主はこの日から90日以内に、注意喚起のステッカーなどを準備するよう命じられたという。またバスのほかに地下鉄や電車等も対象になるという。

この条例は、3段階の措置を事業主に呼びかけている。はじめは、違反者への口頭注意。聞き入れない場合、バスから強制的に降車するように命じることが可能となる。それでも言うことを聞かない場合は警察を呼べる、といった内容だ。

ただし、ブラジルの公共交通機関のマナーが全般的に悪い、というわけではない。サンパウロ市でも前例となる条例は1965年に既に制定されていているとのこと。他の自治体では、音楽を再生できる機器の使用自体を禁止しているところもあるという。

ブラジル人の同僚や編集部スタッフに、公共交通機関で音楽を流すことがブラジルでは普通なの?と尋ねると、小型の音楽プレイヤーやスマートフォンの普及により、好きな音楽を気軽に持ち運べるようになってきてから、各々音楽を流す人がいるにはいるという。ラジカセを肩に乗っけて乗車する人もいたらしい (笑)。

しかし、公共交通機関の社内マナーは、路線や地域、時間帯によってずいぶん違いがあるのでは? という意見も。経済的な格差によって人々の生活の仕方や行動範囲が異なるブラジルでは、居住者のクラスの違いによって、路線バスの利用者の習慣や意識も異なる面もあるという。

主に中産階級が利用する路線での日中のマナーは、決して悪いというわけではない様子だ。むしろ混雑時には、お年寄りや女性に座席を譲るのは当たり前。座っている人が、見知らぬ人であっても目の前の人の荷物を持ってあげるなど、助けあいや譲り合いが普通に行われているという。

もしかしたらこの条例は、携帯やスマホの需要が新中間層など幅広い層の人に浸透していく中で、新たに生じた現象に対処するために生まれたものなのかも?

ところで、ついでに、スマホや携帯電話による通話事情についても同僚たちに尋ねてみた。すると通話に関しては日常的にみられる風景だとか。ただし通話に関しては、音楽を聴く話とは事情が異なるようだ。

日本で、公共交通機関内での携帯電話の使用が迷惑がられる大きな理由は、対面会話と異なり、携帯での会話は全容が分からないため、耳にした人がストレスを感じるからだと言われている。しかし、他人の会話なんて気にしなければ、関係のない話だ。ブラジルでは耳に入ってきても(堂々と普通の声で話しているから絶対耳に入る!(笑))、人の通話内容など気にする人は少ないのだろう。

むしろ何が誰に対して迷惑なのかは、人々が個々がその場その場で判断して行動しているため、日本のように、一概には携帯電話の使用を迷惑行為だと考えていないのかもしれない。

これもまた、日本人とブラジル人との国民性の違いが現われている一例なのかも。

(文/柳田あや、写真/igorschutz)
写真はサンパウロ市内のバス車内風景