<Entrevista> ドゥトラ(横浜マリノス)
2014年 02月 1日ワールドカップブラジル大会まで4か月と少し。そこで「Mega Brasil」では、現在日本で活躍しているブラジル人サッカー選手たちへのインタビューをお届けします。ブラジル人選手から見た日本のサッカーの様子や、ワールドカップにまつわる話題などを語ってもらいます。
当コーナーのキックオフは、漢字の「動虎」でもお馴染み、横浜マリノスのドゥトラこと、アントニオ・モンテイロ・ドゥトラ選手からスタートです。
1973年マラニョン州ドゥッキ・バセラール市生まれのドゥトラは地元チームのバカバウECをかわきりに、パラー、サンパウロ、ミナスジェライス
、パラナなどブラジル各地のクラブで活躍した。
日本へは2001年にやってきて、2006年まで横浜マリノスに参加した。一度帰国したが、2012年に再来日、再びマリノスに迎えられた。
--日本サッカーは大いに成長を遂げました。あなたが最初に来た時と今とでは、日本人選手のスタイルは変わりましたか?
「私が日本に来るずっと前に、ラモスやゼー・セルジオ、さらにもっと前では、ジーコやアルシンドたちがブラジルサッカーを日本に伝えてくれたのだと思います。そしてチームとしてプロ化が進んでいく中で、現在活躍している日本人選手にも影響を及ぼしていったのだと思います。また日本にいるブラジル人選手たちはピッチ内だけではなく、ピッチ外でも、いろいろな面で日本サッカー界を盛り上げていると思いますよ」
--日本での生活にはすっかり慣れましたか?
「言語面を除いては非常に楽しく過ごせています。日本語は、サッカーをやる上では大丈夫ですが、私生活ではまだまだ困る点ばかりです。しかし、チームがサポートしてくれるので何とかやれています。私の勉強方法は、主に”聞く”ことです」
--日本での生活はあなたの人生に新しい発見を与えましたか。
「日本に来た選手は、望むとも望まざるとも、日本の文化をいろいろと学んで帰国します。日本に着いてまず思うのは「潤滑に物事が進む」事と「日本人が持つ素直さ」です。ブラジルでは、なかなか見られない事です(笑)」
--今年はワールドカップの年です。日本代表も参加が決定しており、何よりブラジルにとっては母国開催の大会です。果たして、ブラジルはいいグループに入ったと思われますか?
「ブラジルはホームで戦うプレッシャーは大きいでしょう。1950年に大きな屈辱を受けての今回の母国開催ですから、かなりの責任を背負っての戦いとなるでしょう」
--番狂わせが起こるでしょうか。そして成長を遂げた日本代表はどうなると考えますか。
「日本代表はいい状態にあると思いますよ。しかし、基本的にアジアのチームはヨーロッパのチームとの試合機会が少ないので、予想するのは難しいです。とはいえ、多くの日本人選手が海外でプレーしていることは、大きな強みになるでしょう。彼らを応援はしますが、私はブラジル人ですので、優勝を渡すことはできません(笑)」
--日本代表の注目選手は誰ですか。
「多くの人が注目選手は香川だといいますが、私は本田だと思います。彼の性格や責任感がそれを表しています。しかし、突然、ノーマークだった選手が注目選手になることもあると思いますよ」
--あなたは2度日本に来ているので日本サッカーを誰よりも知っていると思われます。日本のサッカーを知らない人に、日本のサッカーについて説明するとしたらどのように伝えますか。
「まずは、アジアのサッカーの特徴でもある、細かいパスやスピードに乗ったプレーがあげられると思います。しかし、理論上で予想される結果に必ずなるとは限りません。日本代表は非常にいい準備が出来ている為、相手にとって手強いチームとなるでしょう」
--ワールドカップ決勝のカードは、ずばりどことどこになると思いますか。
「ブラジル対アルゼンチンの決勝になってもらいたいです。この因縁の対決に早く終止符を打って、ブラジルが一番だと証明したいです」
--あなたのようにサッカー選手になりたいという夢を持つ若者にメッセージをお願いします。
「信じる事を忘れないで欲しいですね。時には、サッカー以外のことを犠牲にしなくてはならない事も出てくると思います。趣味や、家族とか。それでも懸命に自分の夢に専念するしかないのです。一線で活躍する選手で、簡単な人生を送っている人なんて一人もいません。私の場合はマラニョン州の5万人しかいない町から出てきました。神様が機会を与えて下さり、懸命に追い続けたことで今夢の舞台に立つ事が出来ています。サッカーに関わらず、どの夢であっても壁は現われます。しかし、それに打ち勝つことで夢は叶うのだと思います」
(文/勝田道徳、写真/Getty Images)
ドゥトラ。写真は2013年11月23日、ジュビロ磐田対横浜マリノス戦にて