「るろうに剣心」の黒碕薫さんがブラジルで”凱旋講演”

2014年 03月 6日

世界的にヒットした時代物漫画「るろうに剣心」のストーリー協力をした、作家、脚本家でもある黒碕薫さん(45、神奈川)が来伯し、国際交流基金日本文化センター主催で伯国内3都市(マナウス、リオ、サンパウロ市)で講演会を行った。

サンパウロ市では2月27日にピニェイロス区のFNAC(フナッキ)で開催された。

父親の転勤に伴い小学生の数年間をブラジルで過ごした黒碕さんは、第2の故郷と思える国での”凱旋講演”となり、漫画やブラジルに対する熱い思いを語った。

講演前の記者会見では、伯人記者が熱のこもった質問を浴びせた。子どもの頃の当地体験がどう創作活動に影響を与えているかと訊ねると、「当時は本当に物がなかった。本も全然なかったので、図書館などにある本を片っ端から全部読んだ。それが作家としての今の自分を作ったと思う」と懐かしそうに語った。

当時の日系社会に関する印象を訊くと、「リベルダーデにマンガ貸し本屋があって、毎週の様に行っていた。在住していたのは35年前だったが、それ以前の古いマンガが沢山あって、それを読むのも楽しみだった。ねだって、よく連れて行ってもらった」と思い出し瞳を輝かせた。

伯人記者から「日本の歴史漫画なのになぜ海外で受け入れられたと思うか」との質問に、「侍モノは異国情緒があるのと、漫画なので歴史でも難しくないからでは。漫画を通じて歴史を知るのは日本人にとって知的でとても刺激的な事だと思うが、それは海外でも同じ事かも」と分析した。

以前の日本では漫画を読む事は、読書に比べ随分卑下される行為であったが、ここブラジルではその逆で、日本の漫画の普及のお陰で本を読む人も増えた。日系人以外にも日本語を勉強したり、日本語を覚える教材として使われる事が多いが、それに関してどう思うかとの質問には、「素晴らしい事だし漫画に携わる者として嬉しい。日本では漫画が認められない時間が長かったので文化に貢献できるのは光栄だ」と答えた。

このように外国で熱狂的に迎えられていることに対して、「創作というのは自分の中に深く潜って光る物を探し、それを自分の表面に出す作業。だから意識しているのはいつも自分自身。なのでこんな風に海外から反響を頂くのは本当に想定外でラッキーだったと思う」と謙虚に答えた。

さらに「ブラジルは私の故郷。サッカーで日本が勝ってもブラジルが勝っても『私の国が勝った!』と思う。有難うブラジルと感謝している」との心情を吐露した。

会見後の講演は立ち見まで出る盛況ぶり。来場者は男女関係なく様々な年代の人達がおり、漫画が海を渡り世代を超えて愛されている事を伺わせた。講演会では創作過程や、人気漫画家の仕事現場をスライドで紹介した。通常見られないプロの原稿や技術を堪能出来るので、スライドが変わるたびに会場はファン達の熱気に包まれた。

黒碕さんの「漫画を知ってもらいたい」という情熱と、凱旋という気持ちからか、掲載前の原稿コピーを持参するなどファンへのサービスに溢れており、会場全体が熱く盛り上がった講演会となった。

(記事提供/ニッケイ新聞)