環境保護活動家の暗殺事件は無くすことができるのか(1)

2014年 03月 12日

gonzalohernandes

アトランティック・フォレスト(大西洋岸森林、ブラジルではマタ・アトランチカ)でおきている環境破壊行為の実態について発言した場合、ブラジル自然保護に関わる人々は、自分たちの生命を危険に曝す可能性がある。

そんな中で、国の司法制度が暴力を止めるには十分を機能していないと、公に語る人々もいる。

ドイツのDWアカデミーが運営するサイト「Deutsche Welle (DW)」が2月28日(金)、森林保護をめぐる数々の殺人事件について伝えている。

鳥類、花や蝶など、豊かな植生を持つブラジルのマタ・アトランチカには、ここでしか見ることができないものがたくさんある。

しかし過去数十年の間に木々の多くが伐採され、動物は追われて死に絶えたか、他の場所に逃げた。森林は都市や農場、巨大工場に置き換わってきた。現在では、元の森林の10%未満しか残っていない状況だという。そしてこの森林には恐ろしい事実が隠されているとDWはいう。

森林の保護のため政府に補助金を受けて土地を管理しているオーナー、セルジオ・ヂ・リマ氏は数ヶ月前、親しい友人を失った。仲間の森林保護活動家だったゴンザロ・エルナンデス氏(49歳)が滝の下で死体となって発見されたというのだ。彼は銃で頭を撃たれていたという。

事件が起きたのは2013年8月6日、リオデジャネイロ州南部のリオクラーロで、スペイン人森林活動家のゴンザロ氏が被害に遭った。

「最後まで戦う!」。

ゴンザロ氏は、この地域で4000以上の木を植え、ブラジルで16年間、森林保護活動家として頑張ってきた。違法伐採や、保護地域を悪用してきたヤシの木の農場主に対しても、頻繁に苦情を申し立てていたという。警察は、この活動家の死は、違法伐採業者側からの報復かもしれないと言う。

セルジオ氏は、マタ・アトランチカを保護するためにゴンザロ氏が犠牲になったという。

「彼は意志の強い男で、理想のために命を賭けた。彼の死は間違いなく環境問題に関係している。ゴンザロを失ったことは悲しいが、私たちは活動をやめない」と語った。

環境保護を訴える人々が違法伐採業者などから標的にされる例は、ブラジルにとってなんら新しいことではない。1980年代に、元セリンゲイロ(ゴム採取人)の活動家シコ・メンデスが暗殺された事件は国内外で大きなニュースとなった。セリンゲイロは森と共生しながら、木を伐採せずにゴムの木から樹液を採取して生計を立てているため、木材の伐採人にとっては邪魔な存在となることがある。

近年でも、2011年に、熱帯雨林の自然保護活動家ジョゼー・クラウヂオ・ヒベイロ・ダ・シウヴァと彼の妻マリアも、パラ州北部の森林保護区で射殺された。

「誰が何処を所有している?」かが問題だと同紙はいう。

採取人全国協議会(旧全国ゴム採取人協議会(CNS: Conselho Nacional dos Seringueiros)のマノエウ・クーニャ会長は、土地の所有権に問題が残っているため、争いの多くが起こると考えているという。

「争いの元となっている問題に対して政府が無策であることも、争いが絶えない原因でです。土地の所有権や環境資源をめぐる紛争は、問題を抱かえたまま放置されています」(マノエウ・クーニャ会長)

これらの根本的な問題が解決されない限り、環境活動家に向けられる暴力はなくならないとクーニャ氏は考えている。

リオ州政府は、殺人事件についての情報を提供する人々に報酬を出すことを決定して、ゴンサロ氏殺害犯の捜査を進めてきた。しかし、実際にこの凶悪犯罪の責任者が捕まり、刑を宣告される可能性は低そうだ。犯行は、殺人を契約によって請け負う人によって行われることが多く、犯人の特定は難しいのだという。

(文/加藤元庸、写真/Terceiro/Divulgação)
写真は緑を守るために命をかけたゴンザロ・アロンソ・エルナンデス氏