“ワールドカップ”ならぬ“市民のカップ”を掲げ土地占拠で抗議。「私たちはワールドカップに反対しているわけではありません」

2014年 05月 10日

copadopovo

5月3日(土)から、サンパウロ市北部のイタケラ地区で約4000人以上が、“ワールドカップ”ならぬ“市民のカップ”と呼ぶ抗議運動を行っている。現地メディア「G1」、「Brasil de Fato」(5月5~6日付け、電子版)などが報じている。

占拠が行われているのは、イタケラォンから4キロ離れたところで、カルモ自然公園の近くにあるマウメケール・ド・カンポ通りにある。屋根なし労働者運動(MTST)に主導された最初の一団がこの土地にやってきたのが3日(土)の午後12時半ごろ。

運動のコーディネイター、ナタリア・セルメッタさんによると、ここに集まってきている人たちは、アレーナ・コリンチャンス(イタケラォン)の近くにある4つの地域からやって来た家族たちだという。

その後も街宣車で土地の占拠を呼びかけられた人々が集結して、やってきた人が次々とテントやバラックの家屋を建てている。300家族の約1300人くらいから始まった運動だったが、5日(月)までに約4000人以上が集まっているという。

「ここにいるのはスタジアムの近くで土地や住まいで困っている人たちです」とはナタリア・セルメッタさん。屋根なし労働者運動(MTST)によると、集まっているのは、スタジアム建築に伴い近隣家賃が高騰して家賃が払えなくなった人たちや、開発に伴い暮らせなくなった近隣のファヴェーラの住人たちとのこと。中には親戚の家に身を寄せていた人たちもいるという。

占拠地では、一人の12歳の少年が、この場所に新しくやってきた家族のために仮設バラック造りを手伝っているという。少年は1軒手伝うと20ヘアイスがもらえるとのこと。

屋根なし労働者運動(MTST)はこの土地を、市役所と市議会に対して、サンパウロ市の都市計画、戦略的マスタープラン(PDE)の社会利益特区(Zeis)にするよう求めていく。この土地が社会利益特区(Zeis)になれば整備して団地を作り、人々が住む環境が作れるという。

屋根なし労働者運動(MTST)の調べによると、この土地は約1000メートル四方だが、放置されたままで、20年近く都市内不動産保有税(IPTU)も払われていないという。所有者の所在は不明だという。Fernando Haddad フェルナンド・アダッジ・サンパウロ市長は5日(月)、税金の状況を計算して答えを出すと語ったという。

占拠地はすでに飽和状態で、新たに土地に辿りついた人たちは、バラックを建てるための木など材料も手に入れるのが難しくなっている模様。バラックを建てても留守にすると、別の家族によって、彼らのバラックをつくる材料のために家を壊されてしまう状況だという。

炊き出しでは、1日に60kgの米と40kgのフェイジョン(豆)、35kgのリングイッサ(ブラジル流ソーセージ)が用意されたが、まったく足りない状況だという。

また、こうした持ち主が不明な土地を占拠する運動は、現在サンパウロ市内の複数の場所で行われている。4日(日)には、屋根なし労働者運動(MTST)が17台のバスをつかって、市の南部にある他の占拠地へも人々を誘導した。

先週は、市の南部にある、ノヴァ・パレスチナと名付けられた占拠地を社会利益特区(Zeis)にするための申し立てが行われた。投票によって決まるマスタープランに票を投じるよう市議会前の抗議運動で訴えたところこの運動は功を奏して、4月30日(水)に行われた最初の投票でプロジェクトは承認されたという。

6日(火)に屋根なし労働者運動(MTST)の Guilherme Boulos ギリェルミ・ボウロス代表は、占拠運動の解決に向けて議論するために地域の評議員があつまるべきだと語った。5月20日~25日に行われる2回目の投票での承認を狙う。

屋根なし労働者運動(MTST)のリーダーたちは、これらの運動の目的は、ワールドカップの開催期間に、国の中でこんなにも問題が山積みになっていることを広く知らしめることだという。

「私たちはワールドカップに反対しているわけではありません。ブラジルはサッカーの国です。皆もそれをわかっています。そして私たちは、ブラジルはパーフェクトな国なんだということを見せたいのですが、残念ながらこの国はパーフェクトではありません」と、屋根なし労働者運動(MTST)のリーダーのひとりMaria das Dores マリア・ダス・ドーリスさんはいう。

「私たちの教育、健康、住居に使ってもいいはずだった3000万ヘアイスが使われていません。ブラジルの人口の85%が貧困状態です。人生を送るのが困難な人がいる一方で、こうした空き地があります」(マリア・ダス・ドーリスさん)

(文/麻生雅人、写真/Mtst Trabalhadores Sem Teto)
写真は5月5日、“市民のカップ”の土地占拠区