安倍首相が中南米歴訪の最後に語った将来への約束

2014年 08月 7日

安倍首相 em ブラジリア

8月2日、安倍首相は中南米歴訪の最後の訪問地であるサンパウロを後にして帰国の途についた。

非常に駆け足ではあったが、日本の首相として初訪問の国もあり、ブラジルも小泉元首相以来10年ぶりの訪問ということで、意義深い外遊だったといえそうだ。

実際に大きな国家間のプロジェクトなどの具体的で華々しい成果はなく、今回の訪問はアフリカとの関係で中国に差をつけられた日本が中南米で巻き返すための外遊とブラジルのメディアでも論じられているが、日本が民主党政権の時は、まったく中南米は眼中になく、政治家同士の交流も希薄で、忘れられたような感じであったことを鑑みると、首相が来ただけでも意味があったのではないだろうか。

日本―ブラジルは長く自民党が関係を築いてきていたこともあり、政権が戻って一度遠ざかっていた両国関係の距離が、徐々に縮まってきているように思う。

帰国当日の最終日に、JETRO(日本貿易振興会)、日本経済新聞、ブラジルの経済紙バロールの共催で行われた「日本・ブラジル・ビジネス・フォーラム」で約30分近い講演を行った安倍首相は、その中で、「よい機会ですから、皆様にお約束します。日本の総理大臣や閣僚は、ブラジル、中南米の国々に、もっと頻繁にやってきます」と話されたが、これは進出企業にとっては心強い言葉であった。

やはり、政治と経済は切り離せない。特にブラジルのように政策がビジネスに大きな影響を与える国においては、政治家によるトップセールスや制度改正要求、恩典などの獲得は、進出企業の成功に大きく関わってくる要素である。

実際に、韓国が李明博前大統領の時代は頻繁にブラジルを訪問し、その時期に現代自動車、サムスン、LGなどはブラジルにおいて、様々な恩典を獲得し、大きくシェアを伸ばした。

ブラジルも、ルラ前大統領時代は、在任期間である2期8年で267回という歴代大統領でダントツの外遊回数であった。それによって、ブラジルの国際社会におけるプレゼンスは確実に高まり、サッカーのワールドカップ、オリンピックの開催権を獲得できた。

ブラジル経済もその間に高度経済成長を遂げ、GDP(国内総生産)も倍に膨らみ、自動車販売台数も世界第4位に輝いた。その後、韓国、ブラジルは女性大統領になり、外遊回数が極端に減り、執務室に閉じこもった内向きの政権となって経済も失速していることをみると、首相の外遊はその国の経済にとって、重要なファクターであると思われる。特に一度会うとアミーゴになるラテンアメリカの人々にとって、遠路はるばる会いに来てくれた事実は極めて重要である。

安倍首相の外遊が、12年の就任以来、今年9月で49カ国となり、歴代トップになるようだが、ぜひルラ前大統領の記録に迫ってほしいところだ。そのためには、辞任時で80%を保っていた支持率と、2期8年という在任期間が重要である。外遊回数だけではなく、近年コロコロと代わって海外でひんしゅくを買っている首相の在任期間も佐藤栄作元首相の7年半を抜いて日本記録を更新し、前述の約束を実現してほしい。

ブラジルは逆に、まもなく大統領選挙を迎える。ブラジルの経済界の大勢は内向きのジルマ・ルセフ大統領が5年目に突入せずに、政権が代わることを望んでいるが、果たして結果はどうなるであろうか?

(記事提供/モーニングスター、文/輿石信男/クォンタム、写真/Antônio Cruz/Agência Brasil)
8月1日、ブラジリア。ラテンアメリカ・カリブ諸国歴訪の最後にブラジルを訪問した安倍首相